第126話 レベル100億の攻撃
俺はヘブラァを超える速度でその攻撃を避けた。
「なにぃいいいいいいい! 消えただとぉおおおおお!?」
レベル100億の拳を空を切る。
それは凄まじい強風を生んだ。
本来ならば、それだけで嵐になって、周囲は大変なことになってしまうだろう。
でも、安心だ。
ブラックホールラビットの耳がその風を吸い取ってしまったからだ。
色々と使えるウサギだよな。便利便利。
さて、キョロキョロと俺を探してる奴に、俺の居場所を教えてやろうか。
「こっちだ」
「な!? いつの間に背後に回ったんだ!?」
「俺もどこまで早く動けるのか試したくなってな」
「く! き、貴様も
奴は凄まじい速度で連続技を放つ。
拳、肘、蹴り。その全ては流れるような連撃で、俺の急所を狙い撃ちする。
しかし、俺はその全ての攻撃を紙一重で躱した。
「このぉおおお! ちょこまかと動きよってぇえええええええ!!」
俺の移動魔法は
「なぜだ!? どうして当たらない!? 回避ができる特殊な魔法を使っているのか!?」
「いや。回避の魔法なんて使っていないさ。おまえと同じ。移動魔法だけだ」
「な、ならどうして!?
「単純じゃないか……。おまえより速いということさ」
「わ、
ああ、それがあるんだよな。
昔、ネットサーフィンで読んでことある。
それはある数学者の記事だった。
「宇宙が膨張してるって話。知っているか?」
「なんのことだ!?」
「ある数学者が解いた仮説だ」
「?」
「俺たちがいるこの世界。宇宙は膨張を続けているらしい」
「それがどうした? そんなことになんの意味があるのだ?」
「まぁ聞けよ。その膨張速度が重要なんだ」
「…………」
「それは光より速いといわれている」
「うぐッ!? そ、そ、それがどうした!?」
「俺に付与されている移動魔法がその速度なんだよ」
「なにぃ!?」
「
「ふざけるなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! そんな移動魔法があるものかぁああああああああああ!!」
しかし、ヘブラァの攻撃は当たらない。
「クソがぁあああああああ!!
奴の攻撃は空を切る。
そんな時、俺は少し離れた場所で優雅に本を読んでいた。
それは大きな事典。宇宙の理が書き記された究極の事典である。
大きなページをめくるとペラリと音がする。
「ふむ。紙の媒体は悪くないな。この事典は文字が大きくて読みやすいよ」
「いつの間に!? も、もしかして……。わ、
「ああ。ちょっと借りたんだ。どれだけの知識量か知りたかったからな」
「なにぃいいいい!?」
「
「ふ、ふ、ふざけるな……!!」
「顔が赤いぞ。あんまり怒ると血管が切れる」
「ふざけるなぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
再び
瞬時にして俺の眼前に到達。
「
ふむ。
「だったら、当ててみろよ」
「なに!?」
「もう逃げないからさ」
「なんだと!?」
「防御もしないよ」
「…………ほ、本気か!?」
「嘘をついてどうする」
奴の拳は俺の顔面に向かう。
「フハハハハハ! 後悔しろ!! レベル100億の攻撃力!! 魂さえも消し去ってくれるわぁあああああああああ!!」
その拳は俺の頬を捉えた。
そのまま押し切ると、わずかに頬にめり込んだ。
「ハハハハハ! このまま粉砕してくれる!!」
ヘブラァの拳が頬の肉を動かす。
頬骨に触れた途端にその勢いを止めた。
「なにぃ!?」
しかし、奴の力が弱まることはない。
宣言どおり、レベル100億。フルパワーのパンチだ。
「砕くのだぁあああ!! 肉を裂き、骨を砕き、顔面を破壊し、魂をも消滅させてやるぅうううううう──!?」
ベキボコバキバキッ!!
骨の砕ける音が鳴り響く。
それは宣言どおりに、肉を裂き、骨を砕く音。
だが、俺の顔ではない。
奴の腕が破壊されていく音である。
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!?
ベキベキベキベキベキベキッ!!
それはレベル100億のしっぺ返し。
俺の頬に押し付けた分。その力が跳ね返り、ヘブラァの腕が破壊されているのである。
肉は裂け、骨は飛び出し、紫色の血が噴き出る。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
ヘブラァは距離を取った。
その右腕は完全に無くなっており、紫色の血液がドボドボと流れ出る。
ああ、もちろん、俺の頬は無傷だ。
どうやら、防御すらいらなかったらしい。
「
奴は回復魔法で腕を治した。
「ハァ……ハァ……。どういうことだ!? 攻撃した
まぁ、小細工は特にしていないんだがな。
いいだろう。
「隠蔽の魔法を解いて、ステータス画面を表示させてやろう」
さぁ、俺のレベルを目視で確認するがいいさ。
「俺はレベルを上げて帰ってきたんだ。おまえを倒すためにな」
「な、なんだ……。そ、そのレベルは!?」
ヘブラァは俺のステータス画面を見た。
名前表示の下の項目がレベルになっている。
まるで蛇に睨まれたカエルのように、ダラダラと汗を飛散させた。
「なんだ、そのレベルはぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!? ブラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
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