第122話 メタルパイナプールの使い道

 俺はレベル100億を超える方法を模索した。


 制限時間は4分を切る。


七段階強化チャクラ イヴォークを強化するのはどうだろうか?」


 今なら二段階まで強化が可能だ。その上を行くことができれば……。


大賢者の輝く部屋ワイズマンルーム 七段階強化チャクラ イヴォークの解放はできないのか?」


『そこまでは無理じゃ。できることといえば、必要なアイテムを探し出すことくらいじゃな』


「そういえば、 レベル30倍強化サードバーストを解放さえるのに必要だったメタルパイナプールは見つからなかったな。超キングメタルヒトデンを倒せば手に入るはずなんだが、確率が低過ぎて落ちなかったんだ」


『それくらいならば簡単じゃな。アイテムドロップの発生率を100%にしてやればいい』


「そんなことができるのか!?」


 カフロディーテはブツブツと独り言を言い始める。


『ふぅむ──。なるほど──。では、頼む』


 その時だ。


『ほれ』


 と、俺の手には鉄肌のパイナップルが乗っかった。


「なに!? こ、これは!?」


 鑑定スキルで見てみよう。


【メタルパイナプール】

伝説の回復アイテム。

使用限度1回。あらゆるダメージを全て回復することができる。

呪いやスキルの制限は一切受けない。死者も復活できる。何人でも適応可能。効果範囲は無限。


 おお……。

 

「本物だ」


 ってか、回復アイテムだったのか。

 しかも、条件がチートすぎるな。


『ふふふ。まぁ、わしは確率を操作しただけじゃ。従来ならば10万年に1回の出現率。その確率を変えてやったのじゃよ。それにの、そのアイテムを見つけたのはメエエルじゃわい』


 侍女のメエエルが?


「そういえば、彼女は魔公爵城に残っていたな」


『メエエルは陰ながらメタルパイナプールを探しておったんじゃよ。ザウス軍が魔王軍と戦っている時にな。城内の地下訓練施設で超キングメタルヒトデンを狩まくっておったのじゃ。もちろん、おまえさんのためにな』


「そんな努力をしてくれていたのか」


わしは彼女の意識と 同期シンクロしてな。確率を100%にした超キングメタルヒトデンを倒してもらったというわけじゃ』


同期シンクロ……。距離があっても意思疎通ができるのか?」


『そんなことは容易い。この世界の情報と全て繋がっているのが 大賢者の輝く部屋ワイズマンルームじゃからな。それに、物体の瞬間移動も容易なのじゃよ。ふふふ』


 流石は大賢者の究極魔法ラストスペリオンだ。かなり万能だな。ちょっとしたチート技か。


『ザウスよ。アイテムの確率操作は1回しかできん。しかし、それでもこの伝説のアイテムがゲットできたのは大収穫じゃろう。これで念願だった レベル30倍強化サードバーストの解放じゃな。お主の力が更にパワーアップじゃわい』


「うん。却下だ」


『え!?』


「メタルパイナプールを回復アイテムとして消費する」


『えええええええええええええええ!?』


 彼女の驚きをよそに、俺はメタルパイナプールを天に向かって掲げた。

 それは強烈な光を発して消滅した。


「ちょちょ! 使用は1回こっきりなのじゃぞぉおおおおおおッ!!」


 と、驚く彼女は光っていない。

 いつもの彼女がそこにいた。

 生を実感した彼女は、プルプルと震えて目を潤ませた。


「わ、わ、わし……。い、生き返ったのかえ!?」


 アイテムの説明では『死者も復活できる。効果範囲は無限』と書かれていたからな。

 つまり、メタルパイナプールの効果で俺の部下たちは全て蘇ったというわけだ。


「ザウスーーーーーーーーーー!!」


 彼女は俺に抱きついた。感極まって号泣する。

 その泣き顔を隠すように、俺の胸に顔を埋めた。


「バカバカバカァアアアア! どうしてぇえええええええ!?」


「お帰り」


「わぁああああああああああああああああああああああ!! ザウスゥウウウウウウウウ!!」


「助けるって言ったろ?」


「ザウスゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」


 よしよし。

 俺は彼女の頭を優しくなでた。


「ううう……。で、でも、どうしてなのじゃ? せっかくの逆転のチャンスじゃったのに。勝てるチャンスを不意にしてしまったのじゃぞ!?」


「いや。 レベル30倍強化サードバーストじゃ勝てないさ」


「なんじゃと!?」


「俺は、強化なしの状態がレベル198万だ。その30倍だからな。レベル5940万にしかならない。とてもレベル100億のヘブラァには勝てないんだ」


「しかし、デーモンソードを使ったダークスラッシュ、スーパー流星メテオがあるじゃろう。その技を当てることができれば勝機はあったはずじゃ」


「いや。小手先の技だ」


「なんじゃと!? あの最強の技が小手先じゃと!?」


「そもそも、奴は本気を出していなかった。レベル100億の半分の力も出していないだろう」


「なぬぅううう!? ヘ、ヘブラァはもっと強いというのかえ?」


「そうだ。奴が本気を出せば、俺が技を撃つ前に殺すことができるだろう。それをしなかったのは、奴がまだ力に慣れていなかったからだ。それに、自分の力を試したかったのもあるだろうな。どちらにせよ、俺との戦闘は遊びにすぎないのさ。レベル100億の余裕。本気で戦っていたわけではないんだ」


「ふぅむ……。恐ろしいのぉ。では、どうするのじゃ?」


 そこなんだよな。


「そうか! わかったぞ!  大賢者の輝く部屋ワイズマンルームはまだ発動中じゃ! この力を使って2人で別世界に逃げればいいのじゃよ! そして、新天地で創造主になればいい。たくさん子供を産んでじゃな。グフフ」


「あのなぁ。みんなを置いて逃げるわけないだろ」


「ああ、そうじゃった。残された仲間がおったのぉ」


 メタルパイナプールの効果で、俺の領土は回復した。

 皆殺しにされたザウス重騎士団である、オークたちは蘇っているだろう。

 このまま無傷でことを終えるには2つの選択肢がある。


 1つ。

 俺が降伏すること。


 2つ。

 魔王を倒すこと。


 まぁ、決断は簡単だな。


 魔王を倒す。

 この1択しかないのさ。


大賢者の輝く部屋ワイズマンルームが発動しているのはあとどれくらいだ?」


「2分じゃな。時間が過ぎれば、わしらは元いた場所、セキガーハラ平原に飛ばされるじゃろう」


 ……2分か。

 

 たった2分。


 ──いや。


 2分ある。


 逆転のチャンスが2分もあるんだ。


「降伏しかないのかのぉ……」


「いや。そんな選択はナンセンスだ」


「し、しかしぃ。別世界の転移はこの部屋にいる2人が限度じゃしな。無用なダメージを負うくらいならば全面降伏しか道はなかろう」


「魔王を倒せばいいのさ」


「どうやってやるんじゃ!?  レベル20倍強化セカンドバーストを使ってもレベル3960万じゃろう? とてもレベル100億には勝てんぞ!」


 ……レベル100億の相手に勝つにはレベルを上回る必要がある。

 奴より強いレベル……。奴よりステータスを上げる方法……。

  大賢者の輝く部屋ワイズマンルームのチート能力……。


大賢者の輝く部屋ワイズマンルームを使って、攻撃力増加魔法、 攻撃力2倍バイカールを重ねがけできないかな?」


「おおお! その手があったか!!」


「できそうか?」


「少し待つのじゃ。今調べるからの……。ふん……。ふんふん。なるほどの……。しかし、流石はザウスじゃ。とんでもない発想をしよるのぉ」


 ふふ。ぶっ壊れチートといえば、色々思いついてしまうのがゲーマーなんだよな。


「ぬふふ。ザウスよ。名案じゃった!」


「おお! できるか?」


「1人、1回だけじゃがな。 攻撃力2倍バイカールの重ねがけができるようじゃよ」


「十分だ!!」


  攻撃力2倍バイカールで2倍になった攻撃力が更に倍になる。

 つまり、1人で2倍。2人で4倍。3人なら8倍だ。


「多ければ多いほどいいな」


「ザウス領の者たち全員に周知してやったぞ。みんなには 同期シンクロで情報伝達をしたからな。もうすでに状況は把握済みじゃ。しかも、特別にな。魔法が使えない者すらも1度だけは使えるようにしておいた」


 おおおおおお!

 領民と部下モンスターを合わせれば100万人以上はいる。

 とんでもない数の 攻撃力2倍バイカールが重複付与されるんだ。


「しかもそれだけではないぞ。ぬふふ。通常の 攻撃力2倍バイカールは攻撃力だけじゃがな。わしのは、ザウスのレベルが倍増する レベル2倍バイカールになっておる。 大賢者の輝く部屋ワイズマンルームの能力を最大限生かした特別仕様じゃよ」


「最高だな」


 よし。

 希望が見えてきたぞ。

  大賢者の輝く部屋ワイズマンルームの発動時間。残り2分だ。

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