第112話 ザウスの実力

 魔王の首は震えていた。

 汗をダラダラとかいて歯をガチガチと鳴らす。


「ザ、ザウスのレベルだと……?」


「ああ、隠蔽の魔法で隠している俺のレベルさ」


 これには魔王軍が騒ついた。

 魔王をはじめ、1万匹以上が集まったドラゴン族のモンスターたちが固唾を呑む。

 それもそのはず。魔王の本体は首だけとなり、俺の 封印の箱シールボックスの中に入れられている。分体の方は大賢者カフロディーテにこてんぱんにやられてしまったのだ。

 

 まずは隠蔽の魔法を解除しようか。


「ステータスを見た方が早いだろう」


 魔王の首は目を見張る。


「げぇええええええええええええええ!? レ、レベル、きゅ、99万だとぉおおおおおおおおお!?」


「まだこれだけじゃないさ。俺の設置スキル『ステータス2倍強化』の効果によって、実質レベルは198万になっている」


 場内が騒つく。

 

 うむ。

 目的は魔王軍の全面降伏。

 ならば支配者の実力を把握するのは当然の成り行きだろう。


「ガチガチガチ……。ひゃ、198万だと……。か、勝てるわけがない……。つ、強すぎる……」


 ……どうやら、こいつのレベルはそれ以下ということのようだな。

 おそらく、こいつのレベルは99万以下。

 まぁ、いいさ。そんなことより続けよう。


「俺は、 七段階強化チャクラ イヴォークというスキルを習得していてな。段階を上げるごとに10倍のレベル強化が可能なんだ」


「な、なにぃいい!? じゅ、10倍だとぉおおおおおおおおお!?」


七段階強化チャクラ イヴォークの1段階目、 レベル10倍強化ファーストバーストは俺の部下ならほとんどが使えるんだ」


「ああ……ああああ………。そ、そういうことか……」


 魔王の首は、大賢者カフロディーテの発生させた 究極存在破壊超巨大鉄槌オールバストハンマーを見つめた。

 その下敷きになっているのは、自分の分体である。

 どうやら、彼女のレベルが666万であることを身に染みて自覚したようだ。


「ちなみに、俺が レベル10倍強化ファーストバーストを使った場合は、レベル1980万まで上昇が可能なんだ」


「せ、せ、せん……1980万……」


「さっき戦った時に 時空修復タイムリペア 全属性世界破壊魔法ワールド・エンドという魔法を使っただろう? それら全ての魔法は、レベル1000万を超えると使えるようになるんだよ」


「あぐぬぅう……………………」


 魔王は絶望をしながらもなにかを考えるような空気を出していた。

 汗をダラダラとかきながらも、ドラゴンの軍勢に視線を向けている。

 おそらく、魔王領の全軍を使う作戦を考えているのだろう。

 魔王単体で通じない強さでも数で戦えば勝機があると思っているんだ。

 そうはいかない。


「俺のレベルを公表しているのは理由がある」


「…………」


「魔王軍の全面降伏。おまえの軍勢を俺の支配下にするためだ」


「……ちょ、調子に乗るなよ。雑魚魔族があぁああああああああああ!」


「首だけになっているのに、活気がいいな」


「ククク! 封印を受けているのは我の首だけということさ」


「どういう意味だ?」


「ククク。われの分体は動けるということさ」


「分体が俺に勝てるとは思えんがな」


「クハハハ! われには1億の魔族がいるのよ! その全てに集結の指令を出した!」


「…………」


  封印の箱シールボックスには魔力を封印する能力がある。

 テレパシーを使って部下と会話したりはできないはずだ。

 そうなると、アイコンタクトかなにかで、分体と会話をした。

 つまり、分体に1億の魔族を動かす指令を出させたということか。


「グハハハ! ブラァアアアアアアアアアアアアアアアアア!! たかだが1980万レベルでいいきになるなよぉおおおお!! 1億の軍勢がここに集中攻撃を加えれば、さすがのおまえでもただでは済まんさぁああああ!!」


「なるほどな。質より量か」


「ブラァアアアアアアアアアアアアアアアア!! 貴様を倒すことが我の目的だぁああああああああああああああああ!! 手段は選ばぬわぁああああああああああああああ!!」


 ふむ。


「俺のレベルには続きがあってな」


「なにぃいい? ブラハハハハ!! 今更、強がりを言っても遅いのさ!! もう1億の魔族は動き始めているぞ!! グハハハハ!!」


「強がりではない。事実の提示だ」


「ふん……。ククク、澄ました顔をしおって。焦っているのがバレバレだぞ。ザウス」


「さっき伝えた 七段階強化チャクラ イヴォークな。領内でも俺だけは2段階まで上げることが可能なんだ」


「な、なにぃいい!?」


「つまり、 レベル20倍強化セカンドバースト。198万の20倍だからな。3960万レベルというわけさ」


「うぐぬぅうううううううう! だ、だ、だからなんだというのだぁああああ!! われの軍勢は1億もいる!! 数で凌駕してくれるわぁああああ!!」


「まぁ、聞けよ。これは武器の効果が含まれていない」

 

「…………ぶ、武器だとぉ?」


 俺は亜空間から漆黒の剣を取り出した。


「デーモンソード。この武器の効果『レベル2倍の攻撃力』で更に俺の攻撃力はレベルに対して2倍になる」


「なにぃいいいいいいいいい!?」


「そして、デーモンソードを使ったダークスラッシュ。こちらで更に10倍の攻撃力。つまり、この剣を使えばレベルに対して20倍の攻撃力が出せるわけだ」


「あぐぅううううううううう………………!!」


「つまりな。レベル3960万の20倍の攻撃力。まぁ、簡単にいえば7億9千レベルに匹敵する攻撃ということさ」


「な、な、な、7億……」


「おまえが1億の軍勢を使って全力で来るというのならな。俺だって全力でやるつもりさ。1ミリ足りとも手を抜かない。全身全霊をかけて戦う。7億9千万レベルの全力でな」


「あ、あ、ああああああああ……」


 俺は魔王の首めがけてハッキリと宣言した。





「俺に歯向かうというのならば、皆殺しにしてやる。全力でやれば、1億の軍勢を消滅させるのに3日もかからないさ」




 魔王の首は固まっていた。

 返事がない。どうやら白目を剥いているようだ。

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