第110話 絶対に防げない攻撃

 あの雑魚魔族のザウスが、なぜこんなにも強いのだぁああああ!?


 あ、あり得ない。

 われの最大火力魔法、 地獄火炎鳥弾ヘルフレアバードを完璧に防ぎ、 究極毒魔法煉獄大蛇きゅうきょくどくまほうれんごくおろちの攻撃さえも粉砕した……。


 われの攻撃をノーダメージでいなしただとぉ!?


 そんなバカな!?


 あり得ない。


 あり得ないぃいいいいいいいいいいいいい!!


 ならば、ダメージを与えてやる。

 貴様の骨も魂さえも粉砕して、粉微塵にしてくれるわぁあああ!!


究極存在破壊超巨大鉄槌オールバストハンマー……」


 この鉄槌は、この世に存在する全ての物を破壊する巨大なハンマーだ。

 それは雲の上に出現した。

 全長100メートルを超える巨大ハンマー。


「ククク。この魔法は魔力に応じて巨大なハンマーを作ることができるのさ」


 魔力の限界まで使ってハンマーを生成してやったぞ。

 これで──。


「死ねぇええええええええええええええ!!」


 巨大ハンマーはわれの腕の動きに連動して、ザウスに向かって振り下ろされた。


「ああ、その魔法なら俺も使えるよ」


「え?」


 それは、もう一つの巨大なハンマーだった。


 わ、われのよりデカい……。


 倍以上あるぞ?


「な、なぜだ……!?」


 そしてなにより、気に障ったのはザウスの得意げな顔。

 まるで無表情に澄ましてはいるが、明らかに勝利を確信しているような、わずかに口角が上がっているような、そんな余裕を感じさせる。


 あり得ん!

 あり得んだろうがぁああああ!! 

 雑魚の分際でぇええええ!! 下級魔族の分際でぇええええええ!!

 クソがぁああああああああああああッ!!


 ザウスのハンマーはわれのハンマーを破壊して、われの体を押しつぶす。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 いかん、完全に押し潰されれば消滅してしまう!


  構成細胞蝙蝠化バットフラクション

 体を数千匹の蝙蝠に変えて逃げるのだ!

 半分以上はハンマーに押し潰されてしまったが、設置スキルの超自己再生で修復してやるわ!


 ハンマーは大地にめり込んだ。


ドガァアアアアンッ!!


 巨大な爆発が起こり、大量の土煙が舞い上がる。


 い、いいぞ!

 この土煙に隠れて避難するのだ!


パタパタパタパターーーー!!



「ハァ……ハァ……」


 こ、ここなら大丈夫だろう。

 さっきの場所から30キロは離れたか。

 な、なんとか元の体に再生できた。

 し、しかしなぜだ!?


 ザウスのハンマーはわれの倍以上の大きさがあったぞ? 


  究極存在破壊超巨大鉄槌オールバストハンマーは、魔力によってその大きさを変える……。つ、つまり、ザウスの魔力量はわれよりも倍以上あったということか!?

 いや、そんなことはあり得ない! やつのレベルは50万だ!

 われのレベルは66万だぞ? われを超える魔力量なんて考えられんのだ。


「やれやれ。こんな所に隠れていたのか」


「げぇええ!? ザ、ザウス!? どうしてここがわかったのだ!?」


「息遣いの癖を覚えていたからな。それを頼りに探したのさ」


 さ、30キロは離れているんだぞぉ!? 息遣いなんか聞こえるもんか!

 偶然見つけたに決まっている。


 われは亜空間から大鎌を取り出した。


「ククク。まさか、この鎌を使うことになるとはな」


「ああ、残酷な天使の鎌だな。呪いのアイテムだ」


「ブラァァア!? このアイテムは魔王族しか知らない特別な物だぞ!? 魔公爵のおまえがなぜ知っているぅ!?」


「メインシナリオクリア後のお楽しみコンテンツ……いや、ゴホンゴホン。ア、アイテムはコンプしたからな」


「なんだと!? この武器は1つしか存在しないのに、どういう意味だ?」


「あ、いや。……まぁ、伝説の武器には興味があるからな。調べがついてるのさ」


「フン! まぁ、いいさ。だったら、この武器の脅威も知っているだろう? ククク。空間を切り裂く無敵の斬撃。その名も『絶対地獄時空斬』だ!」


 われは大鎌を振った。

 それは空間を切り裂く。


 ザウスの胴体は斜めにスライドしてズレた。

 空間ごと切断されたのだ。

 

 ククク。鎌の斬り筋は全てを斬ってしまうのさ。

 われの視界にある全ての風景を真っ二つにする!


「ブラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! この攻撃は絶対に防ぐことができんのだぁああああああ!! 空間ごと切り裂き切断する。同時に時間をも破壊するのだ。貴様の時間は大鎌の斬撃により消滅したぁああああ!! 魔公爵ザウスの人生は今、ここで終わったのだぁああああああああああああああ!! 終わり! 終わりぃいいい! 最終回ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!! ブラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ギャハハハハハハハ!!


「余裕だったのに残念だったなぁああああ! ザァアアアウスゥウウウウウウ!! ブラァアアアアアアアアアアアアア!!」


 油断しやがってぇえええええええ!!

 バカがぁああああああ!!

 雑魚めがぁああああああああ!!

 所詮は雑魚魔族がいい気になるからこうなるんだ!!



「ギャハハハハ! この攻撃は絶対に防ぐことはできない!! 防御不可能の絶対攻撃なのだぁああああああああああああああああ!!」



  究極存在破壊超巨大鉄槌オールバストハンマーの攻撃でいい気になってんじゃねぇぞ雑魚がぁあああああ!!

 われの力は貴様を凌駕するのだぁあああああああああああああああああああ!!


 時間と空間は直せない!!

 斬った時空を修復することは不可能なのさぁああああああああああああああああああああああああ!!


 絶対に防げない攻撃であり、絶対に回復できない攻撃ぃいいいいいい!!

 最強にして最悪の斬撃ぃいいいいいいいいいい!!

 それが絶対地獄時空斬なのだぁああああああああああああああああああ!!

 

七段階強化チャクラ イヴォーク……。 レベル10倍強化ファーストバースト……」


 ん?

 なんだぁあ?

 ザウスが輝き始めたぞ?


「おいおい。ザウスよ。今更、なにかやろうったって遅いからな。ギャハハハ! われの絶対地獄時空斬は最強の技なのだぁあああ!!」


 朽ちて死ねぇえ!!

 あと数秒もすれば破壊した時間とともに貴様の存在は、この世から完璧に消滅するのだぁああああ!!


「さらばだザウスよぉおおおおおおおおお!! われに歯向かったことを激しく後悔して死ねぇええええええええ!! 今更、降参宣言をしても受け付けんからなぁあああ!! もう遅い! もう遅いのだよザァアアアウゥウウウウスウウウウウウウウ──え?」


 んん??

 ス、スライドした空間が……。反対方向に動き出したぞ!?

 も、戻っているのか!? そんな!? どうして!?


時空修復タイムリペア……」


「あ、あああ……ああああああああ」


 そ、そんなバカな!?

 修復されているのか!?

 斬った時空が……。破壊された時間と空間が……。


時空修復タイムリペアは、不自然に破壊された時間と空間を正常な状態に戻す修復魔法なのさ」


「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


 そ、そんな魔法があるだとぉおおおおお!?

 知らなぃいいいいいいいい!!

 知らないぞぉおおおおおおおおおおお!!

 レベル66万のわれが知らない魔法があるだとぉおおおおおおおおお!?

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