第108話 隠した実力


「ブラァアアアア!! なぜだぁあああああ!? なぜ、われにダメージが通るぅうううううう!? 雑魚魔族の貴様がぁあああああ!? われには 魔王壁デヴォルウォールがあるのにぃいいいいいい!?」


 ああ、そういうことか。


 俺は右手の甲を見せた。


「多分、これの影響だろうな」


「げぇえええええええええ!? そ、それは勇者の証ぃいいいい!?」


「勇者セアを倒した時にな。奴隷紋を植え付けるのに邪魔だったからついでに奪っておいたんだ」


 勇者セアは村長の奴隷として、周囲に感謝しながら生きているらしい。


「ゆ、ゆ、勇者の証ぃ……」


 やれやれ。

 勇者の証といっても魔王に攻撃が通ることくらいの効果で、さして強化要素ではないんだ。

 ブレクエの世界観では魔王ヘブラァのレベルは666だったからな。それに比べれば、今は相当にレベルが上がっているだろう。

 警戒するのはそこなんだ。


「まぁ、そんなことより、片手でやってくれるんだよな?」


 なにか罠でも仕込んでいるのかとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。

 ならば、油断している隙に一気に方をつけてしまうのがいいだろう。

 こいつは超自己再生能力スキルがあるから、多少のダメージは瞬時に回復してしまう。

 それは脳であろうと心臓であろうと同じことだ。3秒ルールが適用されていて、身体の部位を消失しても3秒以内なら簡単に復元してしまうんだ。

 だったら、全てを一気に消滅させることが優先されるよな。

 デーモンソードと 七段階強化チャクラ イヴォークで……。


「サ、サービス期間は終わりだブラァアアアアアアアアアッ!!」


「ええ……。早くないか?」


「う、うるさい!!」


 やれやれ。

 こうなると全力で来ることになるな。

 警戒は必要か。


 現在、俺の通常レベルは99万だ。そこに設置スキル『ステータス2倍強化』の効果が加算される。これにより通常レベルより2倍のステータスになるんだ。

 よって、実質レベルは198万といっていい。

 そこから 七段階強化チャクラ イヴォーク  レベル20倍強化セカンドバーストを発動すれば実質レベルを3960万にすることが可能だ。

 

 しかし、それだと魔力の消費量が大きすぎる。

 全力より1段階落とした、 レベル10倍強化ファーストバーストの発動ならばレベルを1980万まで下げることができるんだがな。果たしてそんな小細工が通用するのか……。

 やれやれ。まいったな。 レベル30倍強化サードバーストの未開放がここにきて妙に引っかかる。この弱点だけは絶対に知られてはならないぞ。



〜〜魔王視点〜〜


 ブラァアアアア!

 な、なんだこいつの強さは!?

 魔族のくせに勇者の証なんか所持しおってぇええええ!!

 

 しかも、妙に攻撃力が高かったぞ??

 われの防御を貫いて頭部まで粉砕するとは……。


 おそらく全力で攻撃してきたのだろうが、どうやら相当なレベルに到達しているようだな。

 事前情報ではレベル24万がやつの上限値だったが、おそらくそれ以上だろう。


 われの見立てではレベル30万……。いや、40万は到達しているか?

 ふん。魔公爵レベルの下級魔族にしては、まぁまぁな強さだがな。

 残念ながら、われの強さはそれは遥かに上回っておるのだよ!!


筋肉覚醒マッスルウェイクぅううううううう!!」


 ククク。

 これでわれのレベルは66万に到達した。

 隠蔽の魔法によってステータスを見せることができないのが悔やまれる。

 まぁ、隠蔽を解除してもよいのだがな。

 圧倒的なレベル差に戦意を消失されるのは面白くないのだ。


 ククク。ザウスめ。澄ました顔をしているが内心ビビりまくっているな?

 ククク。雑魚魔族が魔王を怒らせるとどうなるか、その身で知るがよい。


 そうだ。


「ククク。チャンスをやろうか?」


「は? なんのチャンスだ?」


「おまえが生き残るチャンスだよ」


「ほぉ」


「ククク。降伏しろ。今なら、われの温情で命だけは助けてやるさ」


「優しいんだな」


「グハハハ! そこまで強くなった貴様を評価してやっているのだ。感謝するがいい。貴様の仲間も、発展した領土も、全てわれが使ってやる! ありがたく降伏しろ!!」


「断る。考えるまでもない。くだらん提案だ」


「ふん。後悔することになるぞ。ククク。その回答は撤回できんのだ」


「では、俺の方からも温情だ」


「なに?」


「俺の配下になれ。そうすれば地獄に送るのだけは勘弁してやるよ」


「くはぁああ! ほざけぇええええ!! 雑魚魔族がぁああああああ!!」 


「断るか。後悔することになるぞ?」


「それはこちらのセリフだぁああああ! 死ねぇええええええええええ!!」


 われは手の平に魔力を集中した。

 そのまま天に掲げる。


連続する地中からの牙シリアル ヘルファング!!」


 すると、われの眼前の地中が盛り上がり、鋭く巨大な角が生えた。

 それは巨大な竹の子のように、何本も生えてザウスを襲う。


「グハハハハ! 串刺しにしてくれるわぁああああああ!!」


 クハハハ!

 この超スピードと威力。レベル40万程度では避けることは不可能だ。

 いや、仮に避けれたとしても、やつの後ろには自軍のオークたちが控えている。

 クハハハ!

 避けなければ串刺し。避ければオークたちが死ぬのよ!

 グハハハ!


われに楯突いたことを後悔するがいい!!」


 ザウスは動かなかった。


 プハァ!

 串刺しだぁあああああああああ!!


 と、思った瞬間。


バシュンッ!!


 ザウスは片手で空を切り、その衝撃波で 連続する地中からの牙シリアル ヘルファングを消滅させた。


「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


 われの技を消滅させただとぉおおおお!?

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