第102話 先鋒対決

〜〜魔王視点〜〜


 ブラァアアアアアアア!!


 ククク。

 獅子が竜に勝てるわけはない。


 竜人族は獅子人族の上位魔族なのだ。


 それに、ガオンガーが裏切る前のレベルは把握している。

 やつのレベルはたったの400だった。

 イケメンダール様の悪魔覚醒を受けたとしてもたったの400。


 ククク。たかだかレベル400でわれの戦士に勝てるわけがない。

 ヌフフ。圧倒的な差が出ることだろうよ。

 

 勝った!


 この戦いは間違いなくわれのチームが勝つ。

 ククク。

 ザウスよ。

 涼しい顔をしているのも今のうちだぞ。

 

 圧倒的な勝利で、貴様の顔を歪ませてやるわ。


 クククク……ハハハハ、


「グワーーーーハッハッハッ!! ブラァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



 ☆



〜〜獅子人族のガオンガー視点〜〜


 俺様は竜人族のドラゴニアスと対峙していた。


 十分な修行はしてきたつもりガオ。

 超キングメタルヒトデンを狩りまくって、レベルを上げまくった。

 とはいえ、相手は竜人族。

 確実に格上の種族ガオ。


 絶対に油断はしちゃならねぇガオ。


 ザウスの旦那も、普段から慎重なお方だったガオ。

 俺様も旦那を見習って慎重に行くガオ。


 さっきやった腹部への攻撃は随分と弱かったな。

 手を抜いているのだろうか?

 以前の俺様なら相手を侮って大笑いしているところだったガオ。

 でも、そんなことはせん。

 もしも、これが相手の作戦だったなら目も当てられんガオ。


 慎重に相手を観察するガオ。


 ドラゴニアスの武器は剣のようだな。

 俺様の武器は大斧なので、受け太刀をさせれば有利を取れるだろう。

 まぁ、剣で斧の攻撃なんか受け太刀せんだろうがな。


 やつは剣を構え、その刀身に炎を纏わせた。


 竜人族が使う、竜火剣だガオ。

 俺様だって負けてられない。


「ガォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 咆哮とともに、斧に魔力を注入した。

 

 さぁ、戦いだ。


 血湧き肉躍る!

 獅子人族は戦いこそが命。

 このバトルの瞬間がなにより楽しい。

 楽しいは正義ガオ!


「ふん! 泥棒猫の分際でよく吠える! 竜火剣で斬り刻んでやるドラ!!」

 

「ガォオオオ!! 喰らえ!! 獅子、重炉苦斬じゅうろくざん!!」


 まぁ、どうせ避けるだろうがな。

 挨拶程度の攻撃──。


 なに!?


 避けないだと!?


 剣で受け太刀するだとぉおおおおおおおお!?


 それほどまで、自分の剣に自信があるのかぁああああ!?


 俺様の獅子、重炉苦斬はオリハルコンでさえプリンのように簡単に斬ってしまう斬撃なのだぞ!?


 こ、このままでは剣と斧が接触する!!


 いかん。

 こいつ、何か秘策があったのか!?

 俺様の斧を剣で受けるのかぁあああああああああ!?




ボキン……………………!!




 ドラゴニアスの剣は折れた。


 ほらぁああああああああああああああ!

 やっぱり折れるぅううううううう!!


「おまえ、アホなのかガオ? 剣で受け太刀なんかしたら折れるのは当然だろう」


「ぬぐぅうううううううう!!」


 ……こいつ弱いのか?

 いや、侮ってはいかん。

 慎重に進めるガオ。


 それにしても、俺様の斧攻撃では殺してしまう可能性があるガオ。

 ザウス様が魔王軍に勝てば、こいつは貴重な部下モンスターになるからな。貴重な労力は保護する必要があるガオ。

 殺すのは最終手段だ。


 俺様は斧を投げ捨てた。


「ええい! 素手でやってやるガオ! かかってこい!!」


「は、ははは! バ、バカなやつめ!! 千載一遇のチャンスを逃すとはな!! 後悔することになるドラ!!」


「いいからかかってこい! 俺様は戦いたくてウズウズしているんだガオ!!」


「竜人族は拳術でも優れているドラ! 竜火拳技ドラゴアーツ 怒羅喰破神激打ドラクエハカミゲダ!!」


「よし! こい!!」


バババババババババババババ!!


 拳の連撃。

 うむ。まずは全部、受け切ってやろうか。


バババババババババババババ!!


「…………」


「ははは! 私の連撃に手も足も出ないドラ!!」

 

バババババババババババババ!!


 こ、こいつ……まだ、手を抜いているのか?


「準備運動はもういいだろう。本気でやるガオ。もうガードもせんから、本気で打ってこいガオ」


「こ、こ、後悔するがいい!! 喰らえ渾身の一撃ぃいいいッ!!」


ボキッ!!


『おおっとぉおおお! ドラゴニアス選手、再びボキッというたでぇえええええ!! これは拳の骨が折れたんとちゃうんかぁあああああ!!』


「ぐぉおおおおお!! 私の拳がぁああああ!!」


 なんだこいつ……。


「おまえ弱いだろ?」


「ふ、ふざけるな! ハ、 上級ハイ 回復ヒール!! わ、私は竜人族なのだぞ! 下位種族の獅子人族より劣るわけがないのだドラ!! 私はおまえより確実に強い上位種なのだぁああああッ!!」


「ああ、そうですかい。んじゃああ、俺様の番だなぁああ……」


 すぅうーーーーーー。


 っと、息を吸い込んで、吐く。


「ガォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 俺様の咆哮で、ドラゴニアスは固まった。

 汗をダラダラと垂らし、動かなくなる。


「ザウス様に感謝するんだな。殺さないように言われているガオ」


 よいしょっと。


 俺様の拳はドラゴニアスの顔面を捉えた。


ボコォオオオオ……!!


「はぎゃぁああああああッ!!」


 そのまま舞台の外に落下した。


『ドラゴニアス選手場外ぃいいいいいいいい!! 第一試合はガオンガー選手の勝利やでぇえええええええええええええええええ!!』


 ナンバの解説に場内は沸いた。


 うぉおおおおおお!!


 なんか物足りんんんんんん!!


「ガオ! ガオ! ガォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


『このチーム戦は勝ち抜きとなっております! よって、ガオンガー選手は、魔王チームの次鋒、ヴァンパイア族のブラディアン選手と戦ってもらいますわ!』


 むぅう!

 次は初手から全力でやってやるガオ。

 



〜〜魔王視点〜〜


 ブラァアアアアアアアアアアアアアアア!?


 ドラゴニアスが負けただとぉおおおおおお!?


 あの獅子人は竜人族より強いというのか??


 どうなっているブラァアア!?


 なぜだ!?


「なぜ負けるのだぁああああああああああああああああああああああああああ!?」


 ドラゴニアスの力はイケメンダール様の悪魔覚醒によって数倍に膨れ上がっている。

 そのレベルは4万!!

 親衛隊長だったカクガリィダンよりもはるかに強い魔族なのだ。

 それなのに負けただと!?


 つ、つまり、あの獅子人はレベル4万以上の実力があるということか??

 いや、そんなはずはない! やつは獅子人族だ。悪魔覚醒を受けた状態でも、やつのレベルは400だった。

 たったレベル400のモンスターがレベル4万のドラゴニアスに勝てるわけはないのだ。

 そうなると、ドラゴニアスが手を抜きすぎて油断したということか?


 その可能性は多いにある!

 竜人族は獅子人族の上位種なのだからな!


「ブラディアン!! 全力で行くのだ!!」


「は。お任せあれ。ヴァンパイア族が下等な獅子人になど負けるはずはありません」


 ブラディアンのレベルなら勝てる。

 こいつはドラゴニアスよりも遥かに強いのだ。

 次は必ず勝つ。

 ザウスに一泡吹かせるのだ!!

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