第92話 メタル狩り

 俺はカタイ鉱山に来ていた。


 理由は簡単。

 超キングメタルヒトデンの捕獲だ。


 カタイ鉱山の洞穴。その奥にある時空の穴。

 そこから 湧き出る怪物ワイテデールがウジャウジャと出てくる。

  湧き出る怪物ワイテデールとは意思を持たないモンスターの総称。魔王の加護で生まれ、死ねば消滅する。

 その際にアイテムや金貨に変わったりするんだ。


 俺はその穴の前に立ち、亜空間収納箱アイテムボックスからアダマンタイトの檻を取り出した。

 

 それは30メートルを超えるであろう巨大な檻。

 扉は無くて、蓋を閉めるタイプの物。

 簡易的な檻だが、アダマンタイト製の強固な仕様だ。キコリ村のドワーフたちに作ってもらった特注品だな。


 よし。

 あとは超キングメタルヒトデンと遭遇するだけだな。

 俺は亜空間収納箱アイテムボックスから魔寄せの笛を取り出して、それを吹いて 湧き出る怪物ワイテデールを呼んだ。


 笛を吹くと時空の穴からモンスターが出現する。

 超キングメタルヒトデンは遭遇率が低いので中々出てこない。

 よって、しばらくは雑魚モンスターだけを狩り続けることになる。


 そうして、10分後。


『ヒトォオオオオオ!』


 ようやく遭遇。

 今回は早かった方かもしれん。

 出ない時は1時間くらいかかるからな。


 超キングメタルヒトデンは氷の息を吐いてきた。

 近づくと攻撃してくる仕組みらしい。

 俺にとってはそんな攻撃はノーダメージだ。


 今回は倒さないからな。持ち上げてぇ。


「よいしょっと」


ぽいっ!


 と、檻の中に投げ入れる。


『ヒトォオオオオオッ!!』


 檻に入ったら蓋をしめてっと。


「捕獲完了だな」


 うん。

 檻の中で暴れてもアダマンタイトの檻だからびくともせんな。


 よし。この檻を亜空間収納箱アイテムボックスに入れて城に帰ろうか。


 あ、そうそう。

 せっかくだからキコリ村に寄ってくか。


 村につくと、村中のドワーフたちが俺の周囲に集まった。


「別に用事ってわけじゃないんだけどさ。みんなが作ってくれた檻がどんな風に使われてるか知りたいだろ? 見せてやろうと思って持って来たんだ」


 俺は村の前にある草原にみんなを誘導した。


「10メートルは離れといてくれ。近づくと檻の隙間から攻撃してくるからな」


 んで、亜空間収納箱アイテムボックスからぁ。


「よいしょっと」


 アダマンタイト製の巨大な檻を出す。


「こいつが超キングメタルヒトデンだ」


 ドワーフたちは大騒ぎ。


「す、すげぇえええええ……」

「まさか、本当に生捕りするなんて……」

「伝説の魔獣だぁ……」

「ほ、本当にいたんだ……」

「は、はじめて見た……」

「超レアモンスターの生捕りか……。歴史的偉業だな」

「ありがたや。ありがたやぁ。流石はザウス様じゃぁあ」

「ママァ! すごいよ! 見て見てぇ!!」


 ふふふ。

 自分たちの作った檻がこんな風に使われているのを知ると感無量だろう。


「んじゃ、俺は城に帰るな」


「あ、ザ、ザウス様! お待ちを」


 と、俺を止めたのは村長のウッドキリングだ。


「村人たちが、あなた様に会いたがっております。次はいつ会えるのでしょうか?」


 今は魔王軍との戦いだからな……。


「外務大臣のスターサに頼んでくれ。魔公爵城の見学やザウスタウンの観光なんかも手配してくれるはずだ。そん時にでも会えたらいいんじゃないかな」


「おおおお。それは豪華ですな。必ず参ります」


「アダマンタイトの檻はありがとう。助かった。じゃあな」


 村人たちは口々に大きな声を張り上げた。


「ザウス様! いつでもお待ちしておりますぅうう!」

「ザウス様のためならどんな仕事でもします!」

「ザウス様、お元気で!!」

「ザウス様、また来てください!」

「ザウス様、バイバーーイ!!」


 よし。

 魔公爵城に帰ろう。


戻るリターン


 俺は帰還魔法で帰路についた。


 次は大賢者だな。


 俺はカフロディーテの前に超キングメタルヒトデンを出した。


「ふぉおおおおおおおおおお!! すごいのじゃぁあああ!! アダマンタイトの檻で生捕りとは前代未聞じゃのーー!! 1100年生きてきて初めて見たのじゃああ!!」


 他の部下たちも驚いていた。


 あとは、これだな。


「魔寄せの笛。この音色を研究して、超キングメタルヒトデンだけを呼び出せるようにしてくれ」


「任せておくのじゃ! 歴史的大魔研究の開始なのじゃ!!」


 1週間後。

 俺はカフロディーテから修行場に呼ばれた。


 眼前の空間には、どこかで見たことのある真っ黒いブラックホールのような穴が……。


「もしかして、これ……時空の穴か?」


「ふふふ。わざわざ、カタイ鉱山に行くのも手間じゃろうと思うてな。穴の性質を解析して、この場所と次元を繋げてやったんじゃよ」


「おお!」


 できる!

 大賢者は仕事ができる子だ!!


「そして、これが魔寄せの笛【改】なのじゃ」


「普通に吹けばいいのか? ピューー!!」


「わああああ! つ、強く吹きすぎなのじゃぁああ!! 音量によって出てくる数が違うのじゃよぉおおお!!」


「へぇ……」


 すると、時空の穴からは、10匹の超キングメタルヒトデンが出現した。


「あわわわわわわわ! 出し過ぎじゃああああ!!」


「いや。これくらいのがいいかもな」


「え?」


七段階強化チャクラ イヴォーク  レベル10倍強化ファーストバースト


 レベルを10倍にして。

 久しぶりに使おうか。


「デーモンソード」


 俺の愛剣だ。


 そこからの、


「ダークスラッシュ!」




ズバァアアアアアアアアアアアアッ!




 漆黒の剣撃。


 10匹の超キングメタルヒトデンは消滅した。


「い、一撃……。ふほぉ……。1匹でもレベル1万はあるのに……。もはや敵なしじゃのぅ」


 ふむ。

 まだアイテムを落とさないな。

 メタルパイナプールは見たことがないが、きっと果実の外観なんだろうな。


 よし。


「ドンドン出すぞ」


「うむ! 超キングメタルヒトデンの大量狩りじゃぁああああああ!!」



〜〜魔神狩りのアルジェナ視点〜〜


「へぇ〜〜。超キングメタルヒトデンの大量狩りねぇ」


「ザウスはすごいのじゃぞ! 今や30匹単位で出現させての! それをダークスラッシュで一掃するのじゃ!!」


 あたしたちは大賢者の言葉に耳を傾ける。

 魔公爵城に住む女の子たちは、昼食をみんなで集まって食べるのだ。


 レアアイテムを求めているとはいえ、メタル系を大量に狩れるならレベルがガン上りするわよね。


 待てよ……。


「ねぇ。カフロディーテ。その魔寄せの笛【改】ってもっとランクの低い 湧き出る怪物ワイテデールも出せるわけ?」


「もちろんじゃな。わしにできんことはない」


 ふは! いいアイデアを思いついちゃった!


「ねぇみんな! あたしたちも、ザウスの仲間として強くなりたいと思わない?」

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