第86話 レアモンスターの捕獲

 俺とサイ蔵はカタイ鉱山に来ていた。

 ここの洞穴に住む超キングメタルヒトデンを捕獲するためだ。


 俺は 湧き出る怪物ワイテデールが出現する時空の穴の前で、ひたすら魔寄せの笛を吹きまくった。

 そうして1時間後。ようやく。


『ヒトォオオ!!』


 超キングメタルヒトデンの登場だ。

 全高20メートルを超える巨大なヒトデ型モンスター。

 鉄肌で、めちゃくちゃ経験値が高い。

 レベルが1万なので、なかなかの強さを持っている。

 ここにいるサイ蔵だって手を焼くほどだ。


 それにしても出現率が悪すぎるな。

 遭遇するだけでも1時間はかかりすぎだよ。

 なんとかして、こいつだけを指定して呼び寄せるようにしたいな。


 そのためには捕獲して、呼び寄せる魔研究をする必要があるんだよな。


『ヒトォオオオ!!』


 おっと、ブリザードブレスか。


魔法マジック 防御ディフェンス


 防御はなんとでもなるんだ。

 さて、捕獲はこれを使おうかな。


 俺は亜空間収納箱アイテムボックスから鎖を取り出した。


「おお! ザウス様。その鎖で捕獲するわけでござるな!」


「これは『封印の鎖』といってな。相手の能力を無力化して封印してしまうアイテムなんだ」


 これをヒトデンの体に巻いてっと。


「よし。これで大人しくなっただろう」


 と、思うや否や。


バリィイイイイイイイイイン!!


 鎖は散開。

 超キングメタルヒトデンはガッツポーズをとった。


『ヒトォオオオ!!』


「げぇええええ!! 封印の鎖が効かないでござるぅうう!!」


 やれやれ。

 じゃあ、眠らすか。

 睡眠誘導魔法を使ってやる。


熟睡魔法グッスーリ


『ヒトォオオオ!!』


 んぐ。弾かれたか。


「ザウス様! ヒトデン系のモンスターは魔法耐性があるので弱体化の補助魔法は通じないでござるよ!」


 そうだった。

 このモンスターは高スペックなんだ。

 

 高防御。

 完全魔法耐性。

 打撃半減。

 自動体力回復。

 全属性攻撃耐性。

 特殊異常効果無効化。

 超移動速度。


 うーーむ。

 これだけ能力を所持したモンスターだからな。

 捕獲となると難しいぞ。


 麻痺系や睡眠系の魔法はダメ。

 

 じゃあ、体力を減らして弱らせるか。

 と、いきたいところだが、体力の自動回復があるんだったな。

 これは数秒ごとに5%の体力を自動で回復するという設置スキルだ。

 だから、瀕死にして動けなくしたとしても、ある程度の時間が経てば全快してしまう。

 死体を持ち帰るというのはそもそも論外なんがな。それだってできないんだ。

 超キングメタルヒトデンは 湧き出る怪物ワイテデールだ。このタイプは魔王の加護で生まれる自動生成モンスターだからな。

 そこに自我はないし、死ねば消滅する。だから、死体を研究することは不可能なんだよな。


 うーーむ。

 強引に生きたまま魔公爵城に持って行くか?

 俺なら別に攻撃を受けても平気だしな。


 しかし、レベル1万だからな。

 俺がよくても部下モンスターたちがこいつの攻撃で殺されてしまうよ。


「ザウス様ぁあ!! 危ないサイーーーー!!」


 え?

 ああ、ヒトデンの打撃攻撃か。


ガン!!


「いいッ!? ガ、ガードせずに受けたでござるか!?」


『ヒトォオッ! ヒトォオオッ!! ヒトォオオッ!!』


ガン!! ガン!! ガン!!


 うん。

 別に攻撃はどうでもいいんだ。

 こんなやつの攻撃ではダメージを受けない。

 念のため、 七輪強化チャクラ イヴォーク レベル10倍強化ファーストバーストを発動させているんだ。

 俺のレベルは120万に上昇している。レベル1万の攻撃なんて屁でもないよ。


「くはぁ〜〜。すごい光景サイ。超キングメタルヒトデンの打撃をノーガードで受けているでござるよ」


ガン!! ガン!! ガン!!


 レベル1万だしなぁ……。

 檻を作ってその中に閉じ込めても蹴破るのがオチだ。


 難ぅううう。

 超キングメタルヒトデンの捕獲がここまで難しかったとは!


ガン!! ガン!! ガン!!


「なぁ、サイ蔵。こいつを生きたまま城に持って行くのはどうしたらいいと思う?」


「そ、そうでござるなぁ……。やはり、強固な檻に入れてしまうのが簡単やもしれません」


「強固な檻ねぇ……」


ガン!! ガン!! ガン!!


 そういえば、ここは鉱山だったな。

 

「ここってなんの金属が採掘できるんだろうな?」


「う、噂ではアダマンタイトが採れたと聞いているでござる」


 うむ。

 アダマンタイトなら相当に硬い金属だからな。

 アダマンタイトで作った檻なら超キングメタルヒトデンも閉じ込めることができるだろう。

 しかし、


「そうなると、精巧な檻を作る施工技術が必要になってくるな……」


「それならば、ドワーフ族が得意だと聞いておりますサイ。あの一族ならば製鉄も大工の仕事もお手のものでござろう」


「どこにいるんだっけ?」


「ふふふ。ザウス様が救ってくれたキコリ村の住民でござるよ」


「ああ」


 そういえば、サイ蔵と初めて戦った時に、そんな村があったな。

 ブレクエの作中でも存在していた村なんだがな。特に大きなイベントがなかったから記憶に乏しいや。

 あの辺りは侵攻がまだだったな。


ガン!! ガン!! ガン!!


「しかし、面倒でござるよ。ドワーフ族は気難しい職人気質の魔族ばかりでござる。頼み事を素直に聞いてくれるか……」


「よし! じゃあ、キコリ村を制圧しよう!」


「え!? せ、制圧でござるか!?」


「ああ。俺の領土になれば、支配者の命令は絶対になるさ」


ガン!! ガン!! ガン!!


「うるさいな」


ドバァアッ!!


「よし。そうと決まれば城に戻ろう」


「い、一瞬で……」


 ザウス軍の侵攻は外務大臣に一任しているからな。

 

 俺とサイ蔵は魔公爵城に戻った。


「おーーい。スターサ。いるかぁ?」


 俺は外務チームの事務室を訪ねた。

 スターサは外務大臣をしている。このチームのリーダーだ。


 事務室には30人くらいの従業人がいた。おそらくナンバが連れて来た商人ギルドの人間だろう。

 その者らは、俺を見るなり立ち上がった。


「「「 ザウス様。ようこそお越しくださいました! 」」」


 流石はナンバだ。

 それなりに教育はしてくれているようだな。


「いや。気遣いはいい。気にせず仕事を続けてくれ。それよりスターサに話がある。彼女はどこだ?」


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