第81話 サイ忍者は仲間になる?
〜〜ザウス視点〜〜
俺はサイ忍者のサイ蔵が放ったサイ大手裏剣を追っていた。
これは直径15メートルを超える巨大な手裏剣だ。
そんな大きな手裏剣がすさまじい速度で飛んでいる。
この速度を加速させる魔法を使えば簡単に追いつくことができた。
「さてと。どうやって止めるか?」
俺の体は硬いからな。
そのまま触ってもなんとかなりそうだしな。
っと、触ろうとした瞬間である。
ピシッ!
おっと……。
手の側面がスパッと斬れたか。
うっかり触れば腕が切断されていたかもな。
どうやら、今のレベルでは触るのことは難しいようだな。
やれやれ。ずいぶんと威力の高い技だぞ。
だったら、
「
ギュゥウウウウンッ!!
レベルを10倍にして防御力をガン上げする。
ちょっと触ってみよう。
キキキキン……!!
「ふむ。火花が出るだけで体が切られることはないようだな」
だったら、思いっきり突っ込んでぇええええええ!
キキキキキキキキキキン……!!
手裏剣は十字だからな4つの刃のうち、どれか1つでも掴めればいいだろう。
ガシッ!!
うむ。
「掴めたぞ」
しかし、手裏剣は止まることなく、慣性の法則に則ってグググィイイイ! っと俺の体を持って行った。地面に踏ん張ってもズリリィイイイイイイ!!
おっおっおっ……! 持って行かれるか。
「やれやれ。なかなかの威力だな」
500メートルは引きずられただろうか。
ちょっとした川を掘ってしまったな。
ようやく、俺の体は止まることができた。
と、同時。
直径15メートルはあるだろう、巨大な土の手裏剣はパラパラと散開して砂になってしまった。
なかなかの威力だったが、そもそもが土埃を固めた武器だったからな。
これなら真正面から受けてもなんてことはなかったかもしれん。
真横から止めに入ったのは非効率だったか。
眼前には村の入り口が見える。
「ふむ。あれがドワーフ族が住むキコリ村だな」
まだ占領してないからな。
ふふふ。なんとか間に合ったぞ。
よし。戻ろう。
「
俺はサイ人族の忍者、サイ蔵の元に戻った。
彼は巨人化の忍法を解いて普通のサイズに戻っていた。
目を丸くして、俺のことを見つめる。
「キ、キコリ村を救ってくれたでござるか?」
「なんのことだ?」
「せ、拙者のミスで同胞を殺してしまうところだったサイ。なんの罪もないドワーフ族が、拙者のミスで命を落とすところだった……」
「勘違いするなよ」
「?」
「魔王領のモンスターや、おまえのことなんかどうでもいいからな」
「え……?」
「考えてもみろ。俺は魔族の魔公爵だぞ。他者のことなんかどうでもいいのだ」
「し、しかし……。助けてくれたのは事実」
「キコリ村が全滅しようが、おまえが自分のミスで同胞を殺めてしまってトラウマになろうが、俺の知ったことか」
「……な、なら、どうして助けたでござる?」
そんなことは決まっている、
「俺の領土になる可能性があるからだ。そうなれば、キコリ村が全滅することは俺の損失に繋がる! だから、助けたんだ」
キコリ村のドワーフは林業が盛んなんだよな。
はっきりいって絶対に欲しい。ふふふ。絶対に全滅なんてさせるもんか。
「なんという奥ゆかしさ!! 感服いたしました!!」
へ?
「自らの偉業を鼻にかけず、魔公爵という存在意義からの論点のすり替え。これはひとえに、ドワーフ族への思いやりであり、拙者がトラウマにならないように配慮した気遣い!!」
「え? いや……。あのな」
「感服いたしました!!」
と、片膝を地面について恭しく頭を下げる。
「お、おいおい。話し聞いてたか?」
「魔王領では、ある噂が流れているでござる」
「噂? なんのことだよ?」
「魔公爵ザウスは魔王軍に攻撃をしないと……。平和的に領土を制圧していると……」
「そんなことは当然だ。さっきも言ったけどさ。自軍にするときにダメージがあったら、それが俺の損失になるんだよ」
「そんなことは詭弁だサイ。支配者はそんなことを考えない。部下や資源は駒であり、自由に傷つけてもいいと思っているでござる」
詭弁というか効率重視なんだよな。
アホな支配者が自分の資源を無駄に消費して非効率にしてるだけだよ。領土内のダメージはそのまま発展速度に直結するんだからさ。村を壊滅させたら、復興するのにどれだけの時間と労力と資源が必要だと思ってんだよ。明らかに大損だよな。
サイ蔵は俺のことを見つめた。
その瞳は、キラキラと輝いて、一切の曇りがない。
「教えて欲しいでござる。今後、ザウス軍の侵略はモンスターを傷つけないのでござろうか?」
「そんなことは当然だ。俺の領土になる存在に傷なんかつけない。それは俺の損失に繋がるからだ」
「ああ……。あなたは理想の支配者だ」
「だから、勘違いするなと──」
「ザウス様!」
え?
急に様付け?
「あなた様はキコリ村のドワーフ族を助け、そして、拙者の心を救ってくれたサイ。このサイ忍者サイ蔵。受けたご恩は必ず返すでござる」
「…………」
なんか、まだ勘違いしてるみたいだがな。
でも、まぁいいか。こいつが部下になってくれるのなら活躍の幅が広がりそうだしな。
「それにしてもすごい力でござった! あの拙者のサイ大手裏剣を素手で掴むとは」
ふむ。
ちょっと説明してやるか。
「
「おお! 縦に並んだ光りの玉でござる! たしか、ゴブ太郎もそれを出していたでござるな」
「ああ、今度、おまえにも教えてやるよ」
「それはありがたいサイ!」
「パワーアップには7段階あってさ。今は2段階まで解放されている」
「ゲッ! ま、まだ強くなるでござるか!?」
「1段階上がることにレベルが10倍に上がるんだ」
「つまり、2番目の光玉は20倍……。す、すさまじいサイ……。レベル3以降は鎖りが巻かれておりますな?」
「うん。ちょっと厄介でな。レベル2までは使用頻度による熟練度で上がるんだけどさ。レベル3以降の解放条件は熟練度プラス、指定アイテムなんだよ」
「ふむ。アイテムでござるか」
「超レアなアイテムばっかりでさ。集めるにも苦労してるんだ。熟練度はとっくに解放条件に到達してるんだがな。アイテムが足りなくて解放ができない状態なんだよ」
「ふむふむ。メタルパイナプール、コウモリネクタイ、イノシシキングの牙……。どれも超絶レアなアイテムばかりでござるな」
「だろ。まいったよ。レアモンスターのドロップアイテムばっかだしさ。レアモンスターの居場所さえ、さだかじゃないしな」
「ふふふ。ザウス様。お任せくださいサイ」
「え?」
「そのレアアイテム。拙者が探してくるでござるよ!」
「……そか。んじゃ任せるな」
まぁ、期待はほどほどにしておこうか。
超レアアイテムだからな。いくらサイ蔵でも見つからないかもしれない。
たった1つ見つけるだけでも10年はかかるといわているからな。
俺たちが城に帰ると、ゴブリンのゴブ太郎がサイ戦士たちに教育をしていた。
食事を与え、体をキレイにして、城内のルールを説明しているようだ。
ゴブ太郎はずいぶんと頼りになるモンスターに成長した。モンスターの中では兄貴って呼ばれているみたいだしな。
性格が素直だし、優しいから人望があるのだろう。
「3回。なでなでしてもらったゴブ」
「おお! すごいサイ!!」
「ゴブ太郎の兄貴と呼ばせてくださいサイ!!」
「俺もなでなでされたいサイ!!」
「わくわくが止まらないサイ!!」
やれやれ。
途中からしか聞いていないから、なんの話だかさっぱりよくはわからんが、仲良くしてくれるならそれでいいよ。
──1週間後。
サイ蔵が1つのアイテムを差し出した。
「ザウス様。これを」
こ、これはコウモリネクタイ!
「た、たった1週間で見つけてきたのか?」
「もっと早くに見つけることができると思ったのですが、若干時間がかかってしまいましたサイ。お待たせして申し訳ないでござる」
「いや、あのな……」
「では、残りのアイテムも見つけてまいります。ごめん!」
シュッタ!
と、瞬時に消えてしまった。
これ……。獲得するのに10年はかかるっていわている超激レアアイテムなんだけど……。
「忍者、すご」
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