第80話 サイ忍者 VS 魔公爵
魔公爵ザウス。
こいつの力が未知数すぎるサイ。
拙者が100年をかけて習得した残像分身を一瞬で真似してしまうだと!?
し、しかも、拙者が3体が限界なのに対して、ろ、6体も残像を出しているじゃないか!
しょ、正直どれが本体かわからないサイ……。
うう……。
こ、こうなったら、
「本気を出すしかないでござる」
「あれ? 分身は終わりか?」
「う、うるさいサイ!」
「まぁ、おまえの本気は興味があるからさ。もう少し付き合うよ。部下になるモンスターの実力は把握しておきたいんだ」
「んぐ! い、いい気になるなサイ!! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・サイ・前!!」
と、印を結びながら詠唱を始める。
これは九字切り。忍者が使う精神統一法の一つサイ。
この忍法はサイ人族しかできない秘技でござる。
「サイ忍法。巨人化!」
すると、拙者の体は巨大化した。その高さは優に10メートルを超える。
「フハハハ! この忍法ならば真似できまい!」
「おお……。流石に巨人化は無理だ……」
「ククク。この忍法は100年間修行をして、サイ人族の特性を活かすことに成功した技なんだサイ」
「へぇ……。本編ではなかったな。没設定かな?」
な、なんのことサイ??
そ、それにしてはこ奴……。
「すげぇ……」
「な、なにをキラキラした目で見ておるのだ!?」
「ふはぁ……。新技だぁ」
恐怖するより、明らかに喜んでいるでござるよ!
「それにしても、ステータスがずいぶんと上昇してるな。レベル3万か……。カクガリィダンより明らかに強いじゃないか」
「ふふふ。拙者は影のリーダーでござる。拙者の実力はやつを遥かに超えているサイ」
「へぇ。陰でサイ戦士の軍団を操っていたのか?」
「そういうことサイ。しかし、この謎を知ったということは、どういうことかわかるでござるかな?」
「生きて帰さない、的なやつだな」
「うぐ……。そ、そういうことだサイ」
なんだか調子が狂うなぁ。
「じゃあ、そこから超悪魔覚醒を使うのか?」
ふむ。
その技はカクガリィダンがイケメンダールより授かった秘技でござるな。
寿命を減らして基本レベルを5倍にするという技だサイ。
しかし、
「ふん! あんな技は邪道でござる。強さは修練があってこそだ。拙者は悪魔覚醒とレベルの限界突破によって基本スペックは上げていただいたでござるがな。強さ、とは元来、修練で身につけるものなり」
「へぇ。ますます気に入った」
「んぐ! き、貴様に気に入られる筋合いはないサイ!! この巨人化だけでも、貴様をあの世に葬ってくれる!! 一撃粉砕!!」
巨人化した拙者の拳を喰らえ!!
ガンッ!!
むぅッ!?
こ、この感覚は!?
「なにぃいいいいいい!? 片手で受け止めるだとぉおお!?」
「体内で力を増幅させて攻撃してるのか。攻撃する瞬間だけ、攻撃力が倍化している」
んぐぅ!
冷静に分析なんぞしおって!!
ええい、拳の連打だぁあああ!!
「一撃粉砕!! 一撃粉砕!! 一撃粉砕!!」
拙者の方が強いのでござるぅううう!!
うぉおおおおおおおおおおおおお!!
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ダ、ダメだ……。
全て片手でガードされてるでござる。
素手の攻撃は通じない。
ならば!
拙者は距離を取った。
「あれ? もう、降参か?」
「ふぉおおおおお!!」
精神集中でござるよぉおお……。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・サイ・前!! ふぉおおおおおおお──」
拙者は手の平を天にかかげた。
すると、周辺の塵や砂が手の平の上に集まった。
「ほぉ……。土属性魔法のグランドメテオか?」
「ふふふ……。拙者の技はそんなチンケなものではござらん。100年修行をして習得した珠玉の秘技なり」
「また100年か。好きだな」
「う、うるさい」
「いや、まぁ、努力は認める」
「ふん! 余裕振っているのも今のうちだぞ。ククク」
塵や砂は大きな手裏剣の形になった。
直径15メートルを超える巨大手裏剣なりぃ!
「完成だ! これぞ、忍法サイ大手裏剣!!」
「おおおお! 俺が知らない技だ!!」
「と、当然だろうがぁああ!! これは秘技なのだぁああああ!! 部外者が知っているわけがなかろう!!」
「うむ。グランドメテオの変化版だな。手裏剣のデザインはカッコいいな」
んぐぅうう!
なんかキラキラした目でわくわくしおってぇええええ!!
巨大手裏剣はギュルンギュルンと音を出しながら回転を始めた。
周囲の風はうねりを発し、気流は荒れる。
「あれ? 体が……」
「はははーーーー! これぞサイ大手裏剣の真の脅威!! 回転による気流が相手の体を縛って動けなくするのだぁああああああ!!」
「へぇ……。すごいな。たしかに、体に気流が纏わりついて動けなくなってる」
「ははははははは!! 油断大敵なりぃいいいいいい!!」
加えて、飛来速度は目に見えぬほど速いのだ。
巨大手裏剣の回転攻撃。少しでも触れれば骨さえも粉微塵に粉砕してくれよう。
「喰らえ! 忍法、サイ大手裏剣!!」
手裏剣はギュルンギュルンと回転して、ザウスに向かって飛んで行った。
命中だ!!
プハッ!!
油断するからこうなるのだ!!
あえて助言をするならば、拙者が力を溜めている隙に攻撃するべきだったサイ。
それしか逃れる方法はないでござる!
風による体の捕縛。
超スピードによる飛来。
この2つの要素によって、絶対に避けることができない技になっているでござる!
勝った!!
命中だぁあああああああああ!!
ひょい……!
え?
「よいしょっと」
「避けたぁああああああああああああああああ!?」
なぜだぁああああああああああああ!?
「なぜ動けるサイィイイイイイイイイ!?」
「え? なんか……。ちょっと力を込めたら……動けたかも」
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
あああああ……。
せ、拙者の秘技がぁ……。
「なぁサイ蔵……。飛んでった手裏剣はどうなるんだ?」
「そんなのはどかに当たって消滅するサイ……」
「何メートル飛ぶんだ?」
「さ、さぁな。100キロは飛ぶんじゃないか?」
クゥウウ!!
そんなことより、避けられた屈辱がぁああああ……。
ハッ!
ま、待てよ!?
この方向!?
「しまったぁあああああああああ!! サイ忍法千里眼!!」
この忍法は100キロ先まで見ることができる忍術だサイ。
拙者の視界には手裏剣を通り越して、その先の場所が見えた。
「ぬぐぅうう!! 60キロ先にドワーフ族の住むキコリ村があるサイィイイイイイ!!」
「うむ。俺が占領していない場所だな」
「しまったぁああああああああああ!! このままでは仲間を殺してしまうでござるぅううううううう!!」
「
「ぬぐぅうううううう……。ゆ、許してくれぇえええ、同胞よぉおお。拙者のミスだぁああああああ!!」
すまぬ、すまぬぅううう!!
ぐぬぅうううううううううううううう!!
って、あれ?
「ザウス……。どこ行ったでござるか?」
逃げたのか?
ま、まぁいい。
そんなことよりキコリ村だ。
拙者のミスで、なんの罪もない同胞が殺される。
うう。同じ魔王軍の同胞を拙者のミスで……。
「すまぬ……。すまぬでござるぅううううううう!!」
ん?
手裏剣に黒い影が……。
なんだあの物体は……?
く、黒マント!?
ま、まさか!?
「ザウスだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます