第73話 外務3人娘
俺は会議を開いた。
魔王領侵略に対する意見交換の会議だ。
僧侶のミシリィはボサボサの髪で報告書を読み上げる。
やれやれ。
彼女がスターサの協力をしてくれるから、少しはマシになったかと思ったが案の定だ。
スターサもボサボサ頭だしな。2人は髪を整える時間もないのかよ。
彼女たちの仕事量が多すぎるんだな。文句一つ言わないんだからいじらしいよ。
さて、今日はそんな彼女たちを残業地獄から救ってやらんといかんな。
「よし。今日は新しい仲間を紹介しよう。入ってくれ」
それは褐色肌の爆乳美少女。
「どうもですぅ。
彼女が頭を下げるとチューブトップから見える大きな谷間が強調された。
「なんじゃこやつはぁあああああ!?」
なぜ、大賢者カフロディーテが怒るんだ?
「おいザウスゥウウ!!」
「なんだ?」
「
「はい?」
「当てつけかぁああ!!」
「あのなぁ」
「
落ち着けよ。
彼女はメエエルに抱きついた。
「弄ばれたのじゃぁああああ。うええええええん!!」
「よしよし」
「ザウスは
「そんなことはないと思いますよ」
「でも、パンツを見られたのじゃぁあ!」
「そうですね。可愛いクマさんパンツを見られてしまいましたね」
「遊ばれたのじゃぁあああ!」
「よしよし」
「ううう!
「大丈夫です。胸の膨らみはありますよ」
「ううう! ザウスの
いや、そんな関係ではないだろうが。
誤解されるようなことをいうな。
「彼女には外務チームに入ってもらう」
俺の言葉に僧侶のミシリィが反応する。
「え!? じゃ、じゃあ、私はクビですか!?」
「いや。そうじゃないさ。外交の仕事は量が多すぎるんだ。ナンバにも入ってもらって効率を上げるのが目的だよ」
「うう……」
「おいおい。そう落ち込むなって」
「で、でもぉ……。私が……。スターサちゃんの仕事を減らさないといけなかったのに……」
「いやいや。誤解するな。おまえたちは本当によくやってくれているよ。スターサをクビにするつもりもない。ただな……。髪の毛を梳かす時間もないのかと思うと
「あ……。これは……その……。ごめんなさい」
「いや。仕事の采配は支配者の勤めだ。人員補充は当然の成り行きだよ。気にするな」
「うう……」
やれやれ。
会議終了後。
早速、ナンバは外務チームの仕事に参加した。
初日だしな。
彼女の仕事振りが気になるから同行することにする。
ナンバはブレクエの進行では頼りになる存在だった。
でもそれは勇者パーティーでのことだ。
今は敵側の中ボス、魔公爵領にいる。
さぁ、どんな手腕を見せてくれるんだ?
外務チームには城内に専用の事務所があって、彼女たちの仕事はそこで処理されるんだ。
「ほんならスターサはん。詰めなあかん外務の事務はどれほどありますんや?」
「えーーと、これです」
それは書類の山だった。
マジか……。
3メートル以上あるじゃないか。
こいつら、この仕事量を文句もいわずにやっていたのか……。
「ほえええ……。ようさんありまんなぁ」
「これでもミシリィが入ってくれて少なくなったんです。彼女のおかげで書類の優先度と曜日別で分けることができました」
それは書類の山だった。
その山がいくつも聳え立つ。ひええ……。
「こっちの山が今日やる分。こっちが明日……。こっちは月曜日の分で、こっちから火曜日、水曜日……」
いかん。
もう頭が痛くなって来たぞ。
それになにより、これだけの量がありながら、文句をいわない彼女たちがいじらしすぎる。自分たちだけで抱え込みすぎだよ。
「なるほどなぁ。物資の運搬、ランドソルジャーの改善工事……。監視クリスタルの設置にザウス重騎士団の護衛配置の手配書……。やることはてんこ盛りでんなぁ」
「まずは、今日やる分の山から順番にやっていただけたらと思います」
「うん、そやな。それも大事やけど、事務所から書類の山を無くすんが大事やな」
「ええ。ですから、今日やる分の山から……」
「限界があるわなぁ。この事務所には女が3人。
「ええ、なので、今日は捗るんです。私がいますし3人でなら少しは減ると思います」
「ははは。少し減っても変わらへんよ。それに明日、侵略が進めば、また仕事が増えるやろ?」
「ええ……そうなんですが……」
「ふふふ。
そう言って、書類の山を運び始めた。
「え!? ナンバさん、それ、どこに持って行くんですか!?」
「まずは馬車に乗せる。スターサはんもミシリィはんも手伝ってや」
ふむ。
これは俺も手伝わざるを得ないな。
「ちょい待ちぃ。ザウスはんは見てるだけやで」
「なぜだ?」
「これは外務の仕事ですさかいな。いわば
なるほど。
たしかにその通りだな。
彼女たちには悪いが、支配者にはそれなりの仕事があるんだ。
ということで、俺は見ることに徹することにした。
彼女たちは書類の山を馬車に乗せた。
そして、その馬車はザウスタウンに向かった。
「着いたで。ここが第2の外務事務所や」
そこは、以前、俺がナンバに金を貸して購入した建物だった。
1階は改装中。その内、酒場や仕事の商談ができるスペースになるらしい。
入り口には看板があって『魔公爵商業ギルド』と書かれていた。
ここは彼女の会社なので、ナンバの名前を入れれば良いと思うのだが、彼女は義理堅く、自分のギルドであっても俺の肩書きをギルド名としたようだ。
また、彼女がいうには、ザウスタウンで仕事をする場合、魔公爵直属であることの方が有利に商談が進む、ということらしい。カセギ国の商人らしい抜け目のない計算だよな。
「1階の奥が事務所スペースなんや。書庫も1階に用意しとるさかいな。書類関係は書庫に保存してそこから使ったらええからな」
ふむ。
建物は3階建てだ。地下もあるからスペースは広い。
そんな中で、書類関係を1階に置いてるのは事務処理の手間が省けるからだろうな。階段の昇降回数を減らすことは仕事の簡略化に繋がる。
なかなか、無駄のない運用方法だよ。
ギルド内には100名を超える人間が待機していた。
その格好から全員が商人だとわかる。
「ふふふ。紹介するで。こいつらは
なるほど。
大量の仕事は人海戦術で処理しようというのか。
「あのザウスさん……。魔公爵城の内情を外部に漏らしても大丈夫なのでしょうか?」
「その点は心配ないさ。ナンバを信用してくれていい。彼女は俺が見込んだ商人だからな」
「そ、そうですか……」
ブレクエにおいて、常に義理堅く、人情味のあるキャラがナンバなんだよ。
絶対に仲間を裏切ったりしないし、嘘をつくのも嫌いな子だ。
「ははは! ミシリィはん。
ナンバはフランクで明るい性格だ。
やや、内向的なミシリィとはきっと気が合うだろう。
「でも、ザウスはんがいてくれて助かったわ。なにせ、
俺は本当に見ているだけだったのだがな。
俺にまで気を遣えるの流石だな。
彼女なら2人ともすぐに仲良くなるだろう。
仕事は滞りなく進む。
夕方には終わることになった。
スターサは目を見張る。
「すごい……。たった1日で半分が終わっちゃった……」
「そりゃそうや。あんたら2人でやってたことを103人でやっとるんやからなぁ」
「あ、ありがとうナンバさん」
「ははは。これからもよろしくやで」
「うん!」
ふむ。良い感じだな。
これなら俺が見ておく必要もないだろう。
「そや。ザウスはん。これからここで懇親会を開くんや。あんさんもどうおます?」
「うむ。じゃあ、少しだけ参加しよう」
スターサは眉を下げた。
「ご、ごめんなさい。気が利かなくて……。ナンバさんの歓迎会を私とミシリィとでやらないといけなかったのに」
「ははは。そんなん気にせんでええよ。
「ううう……」
「ははは。それにこんなに仕事があったらそれどころでもないやろ? あんたら、髪の毛を梳かす時間もないみたいやしな。歓迎会どころやないやんか」
「ご、ごめんなさい……」
「ははは! だから、あやまらんでええよ。スターサはん。そこは『ありがとう』って言うてくれたらそれでええんよ」
「うん。ありがとう」
「ふふふ。
「うん。よろしくね!」
うんうん。
良い感じだ。ナンバは、ちょっとお姉さんな感じもあるな。
こりゃいいトリオになってくれそうだぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます