第66話 更なる高みへ
〜〜カクガリィダン視点〜〜
私は凄まじい光景を目の当たりにしていた。
規律正しく……すごい。
そこは大広間で、床には巨大な魔法陣が描かれている。
その中心に千体を超えるモンスターが集められていた。
「じゃあ、一瞬で終わるからね。いくよ」
と、両手を挙げたのはイケメンダール様。
魔王様と同じ魔王種で、魔王様のご友人扱いになっている存在だ。
金髪の美しい青年で、見た目は10代くらいだろうか。まるで、人間のようだが、魔王種なので年齢不詳である。
ザウスと同じく、この方も隠蔽の魔法で自らのステータスを隠されているようだ。
その真の実力は不明。
しかし、そんな方が、我々を強くしてくれているのだ。
「さぁ。レベルの限界突破だよ」
あの魔法陣に入ったモンスターはレベルの上限値がグーーンと上がる。
かくゆう、私もレベルの上限値を上げていただいた。
上限レベル999からレベル9999まで。規律正しく、グーーンと上げていただいたのだ。
しかし、レベルの上限値が上がったところで元のレベル210には変わりがなく……。結局、レベルを上げるのは自己の努力になっている。
規律正しく考えるならば、このレベル限界突破は私たちにとってあまり意味をなさないような気がしている。
そんな時。
イケメンダール様は新しい魔法陣を用意された。
「さぁ。悪魔覚醒だよ」
なにやら、その魔族のもつ才能を限界まで引き出す儀式らしい。
レベル120だった獅子人はレベルが300まで上昇した。
なにぃ!
そんなことができるのか!?
規律正しく……恐ろしい。
ここまで簡単にパワーアップが可能とは。
そうして、私も悪魔覚醒を受けることにした。
ギュィイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!
フォオオオッ!!
な、なんだこの湧き上がるパワーはぁああああ!?
なにッ!?
な、なんだ、このステータスは!?
「レ、レベル1200だとぉおおおおおおおお!?」
「ああ。君には才能があったようだね。そういう魔族はグーーンとレベルが上がるからね」
あ、上がりすぎだろう。
やはり私はエリートなのか!
しかし、ザウスのレベルは6000だ。
スキルや装備の影響を受ければ実質レベル24万も上昇するのだ。
レベル1200の私では規律正しく考えても、到底勝てはせんだろう。
しかーーし。
ククク。
私を半殺しにした、あのゴブ太郎とかいうクソッたれゴブリン。
あいつならぶっ殺すことができるぞ。
やつのレベルは280だ。
レベル560まで跳ね上がる。しかし、たったの560!
それでも、私の方が遥かに上!
か、勝てる!!
今こそ復讐の時だ。
そんな時。
イケメンダール様はとんでもない追加発表をされた。
「さぁ、とっておきの技を教えてあげようか」
モンスターたちは興味津々。
当然、私だって早く知りたい。
この方は絶対だ。この方についていけば強い力が手に入る。
「筋肉を覚醒させる技なんだけどさ。少し修行が必要なんだ」
き、筋肉だと?
ゴブ太郎を思い出して腹が立つがどういうことだろうか?
「今から君たちに覚えてもらうのは
こうして、私たちは修行の末、
「フハハハ! 待っていろゴブ太郎!! 貴様に受けた仕打ちは100倍にして返してやる!! レベル2400のこの私の力でなぁああああああああ!! ガァアアハッハッハッハッ!!」
☆
〜〜ザウス視点〜〜
俺は激しい修行の末、レベル9999に到達していた。
強くはなれたが頭打ちだ。カンストレベルに到達すればこれ以上伸びることはないだろう。
今の強さを実質レベルに変換するとこんな感じだ。
まず、俺の設置スキル『ステータス2倍強化』によってレベル19998になる。
加えて、デーモンソードの装備効果『レベル2倍の攻撃力』によって更に倍、レベル39996。
更に、そのデーモンソードで放つダークスラッシュの威力は『通常の斬撃の10倍』ということで。
実質の攻撃力レベルは39万9960ということになる。
随分と強くはなったが、魔王軍の内情が不明瞭ではどうにも嫌な予感がするな。
まだまだ強くなる必要がありそうだぞ。
まずは、敵の状況をもっと詳しく知る必要があるよな。
俺はボス獅子人のガオンガーに魔王軍の状況を聞くことにした。
獅子村の発展が影響しているのだろう。以前に比べて、信頼度が増しているようだ。
彼はストレスなく安心してスラスラと喋ってくれたのだった。
「──それで、イケメンダールは悪魔覚醒で俺様のレベルをグーンと上げてくれたんでさぁ。そのあとは
ふぅむ。
ゴブ太郎がカクガリィダンの尖兵を蹴散らしたことで、ここまでシナリオが変わって来ているのか。
まず、イケメンダールはこの世界の魔王ではない。やつの正体は続編であるブレイブソードクエスト3の魔王だ。
正当な続編である2を飛び越えて3のボスが出てくるとはな。やれやれ。とんでもない改変だよ。
ちなみに、俺が大賢者カフロディーテに頼んで実施してもらったレベルの限界突破。このシステムはブレクエ2の仕様なんだ。
特殊な魔法陣で次元を繋げることで、この世界でも可能になった裏技だよ。
カフロディーテの話だと、この世界に隣接した次元はいくつか存在するという。俺の予想では、その次元がゲームの続編を意味しているのだと思う。事実、もっとも近い次元と繋げることでレベルの限界突破が可能になった。それなら、もう一つ離れた次元ならば、ブレクエ3の次元とも繋げられるかもしれない。イケメンダールが魔王として君臨する世界線だ。
「ふぅむ。次元を1つ飛び越えてかえ。難しいことを言うのぉ」
彼女曰く、次元を繋げる魔術は非常に難解なのだという。なんでも距離が重要なようで、ブレクエ2の世界は近いが、3となると距離があるので、難度が上がるというのだ。
「まぁ、他ならぬザウスの頼みじゃからな。挑戦してみるのも悪くないがぁ……」
と、こちらの方をチラリと見る。
俺はなでなでの仕草をしてから親指を立てた。
任せておけ!
報酬のなでなではたっぷりしてやるから。
「頑張るのじゃ!」
若干、罪悪感が湧くな……。
本当に、こんな報酬だけで人を動かして良いのだろうか?
数日後、彼女は満面の笑みを見せた。
「ジャーン! 成功したのじゃーー!!」
そこには2つの魔法陣が描かれていた。
「ほぉ。2つもあるのか」
「強くなるのに1つでは物足りんじゃろうて」
これはありがたい。
「ちなみに、悪魔覚醒はできんかったのじゃ。あれは魔王の加護によるものじゃからの」
「ふむ。では、それとは違う強化なのだな?」
「ふふふ。自信作じゃよ! これで強化しまくりなのじゃ!」
「じゃあ、なでなでも強化してやろうか」
「待ってたのじゃぁああああああああああああああああ!!」
俺はカフロディーテの頭をひとしきりなでまくった。
「はふぅ〜〜。ザウスゥ〜〜」
まるで、またたびを与えた猫のようだな。
「ふひょお……。至福なのじゃああ〜〜」
ふふふ。名付けて超なでなでだ。
……まぁ、優しく丁寧に撫でているだけだがな。
「はふぅ……。ザウスはテクニシャンなのじゃあ」
さて、そろそろ、いいだろう。
「さぁ。更なる高みへ」
俺は魔法陣の中に足を踏み入れた。
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