第67話 最強強化!

 俺は大賢者カフロディーテの協力を得て2つの魔法陣の中に入ることになった。


 この魔法陣はブレクエ3の世界と繋がっており、その体をグーンとパワーアップさせることができるらしい。


 魔法陣に足を踏み入れた瞬間、凄まじい力が体の底から湧き上がって来た。


「おおおお! これは!?」


「ふほぉおおお!! すごい数値なのじゃ!!」


 確かに……。

 このレベルはすごい。

 数値的にはレベル9999となにも変わっていない。

 だがしかし、その横の数値が問題なんだ。


 ふふふ。

 懐かしいよ。

 あまたのゲーマーを廃人にした。問題作となったレベル上限値。

 ゲーム史上最高のレベルカンスト。伝説となったその数値。


 レベル99万。


 更なる高みの登場だ。

 ユーザーからは「やりすぎwww」「キリがない」「オワタ」「どんだけ上げんだよ」などのコメントが飛び交っていたっけか。

 しかし、そんなレベルカンスト値でもゲームバランスが絶妙だったからな。ブレクエ3は名作中の名作となったんだ。


 さて、問題はレベル上げだぞ……。

 レベル9999にするのだって随分と手間がかかったからな。

 これを地道に上げるとなると大変だよ。


 まぁ、レベル上げについてはあとで考えるとして、最後の魔法陣に入るとしようか。


 俺はもう1つの魔法陣へと足を踏み入れた。


 瞬間。

 7つの光りの玉が出現した。

 それは縦1列に並んでいる。


「なんだこれは?」


七段階強化チャクラ イヴォークじゃよ」


 聞いたことのない技名だな。

 どうやらブレクエのゲーム内では出なかったオリジナルの技のようだ。

 

 よく見ると1番上は強い光りを発していて、その下からは鎖が巻かれていた。

 この鎖……開放されてないということか?


「ふふふ。魔研究の成果じゃよ」


「ほぉ。この上の玉は開放されているようだな」


「うむ。 七段階強化チャクラ イヴォークは7段階まであるんじゃ。 レベル10倍強化ファーストバーストはレベルを10倍にする」


 なに!?


「レベル10倍だと!?」


「うむ。発動中はレベル10倍の恩恵を受けることができるのじゃ。攻撃力だけじゃないぞ。全てのステータスがレベル10倍の恩恵を受ける。体力も知力も防御力もな。全てのステータスがレベル10倍分の増加になるんじゃよ。まぁ、ザウスが所持しておる設置スキル『ステータス2倍強化』の強化版と考えてくれればいいじゃろうな」


「……7段階あるようだが?」


「うむ。1段階上がるごとに10倍加算される。つまり最終段階の レベル70倍強化セブンスバーストはレベルを70倍にする効果があるんじゃ」


 マジか!? 

 すごすぎるぞ。


「どうやって使うんだ?」


「簡単じゃな。その手前に出ている光玉をタッチするだけで発動する。じゃがその前に──」


 おおおお!

 さっさく試してみよう。


「こうだな。タッチと」


「いや! 話しを最後まで聞かんか!!」


 瞬間。

 俺の体にはとてつもない重力がのしかかった。


ズゥウウウウウウウウウウウウウウン!!


 な、なんだ!?

 重ッ!!


「ぬぐぅうううううう……!!」


 お、重すぎる!!

 潰れる……!!


「は、早く解除するのじゃ!! 念じるだけでできるから早くなのじゃ!! 早くせんと体が重力に押し潰れてしまうぞ!!」


 か、解除……。


シュゥウウウウウウウウン……。


「ふぅ……。か、軽くなった……」


「は、早まるでない。凄まじい恩恵にはリスクが伴うんじゃよ」


「うむ……。なんだかやけに疲れたな」


 うん?

 ステータスの数値が赤い……。

 MPがゼロになっているな。


七段階強化チャクラ イヴォークは魔力の消費が激しいのじゃ。熟練度を上げんと瞬く間に魔力がゼロになってしまうのじゃよ」


「ほぉ」


 熟練度か。

 どれ……。


 なるほど。

 ステータスに新しい項目が追加されているな。

  七段階強化チャクラ イヴォーク熟練度レベル1となっているな。


「これがそうか?」


「そうじゃ。その熟練度をレベル10にすることで初めてまともに使えるようになるんじゃ」


「熟練度のカンストは?」


「レベル99じゃな。レベル99になれば魔力の消費は最小限にできるのじゃ」


 ふむ。


「どうやって熟練度を上げるんだ?」


七段階強化チャクラ イヴォークを使いまくることじゃな。魔力の消費に合わせて熟練度が上がるのじゃ」


「なるほど。じゃあ、その都度、魔力の回復が必要になるのか」


「そういうことじゃな。ほれ、エリクサーをやろう。これで回復するのじゃ」


「ああ、ありがとう。助かる」


 それは魔法の液体だ。

 飲むだけで全ての状態を完全に回復してくれる。


 うむ。

 魔力が全快したぞ。


「しかし、困ったのぉ。エリクサーは貴重な回復薬じゃしぃ。そんなに数がないんじゃよ」


 なるほど。

 ようはその都度、魔力を回復できればいいわけだな。


「よし」


 と、俺は彼女を抱きかかえた。


「わわわわわわ! な、なんじゃザウス! 感極まったか!?」


「行こう。 加速アクセル!」


 それは高速移動の魔法。


 最大加速は音速だ。


ギュゥウウウウウウウウウウウウン!!


「はい。到着」


「ザウス! わ、わしの可愛さにたまらなくなったのじゃな? そうなのじゃな? わかるぞ! 男はそういう生き物なのじゃろ? わ、わしは……その……。は、初めてなのじゃあああ!!」


「おい」


「ザウスゥウウウ! わしはお主のことがぁああああ!」


「おいってば」


「え? あ、あれ? なんじゃここ?? 愛を育む場所にしてはやけに開けておるな??」


「しがみついてないで降りてくれ」


「え? あれ? 今から男と女の情事が始まるのではないのかえ?」


「なんでそうなるんだよ」


 そこは大きな樹の下だった。

 その幹からは綺麗な水が滝のように流れ出る。


「どこじゃここは?」


「ふふふ」


 ブレクエの経験値稼ぎスポット。

 全ユーザーが大好きな場所。

 ゴブ太郎と勇者セアが初めて戦った森の広場の近く。


「大樹の泉さ」


 この場所なら。


レベル10倍強化ファーストバースト!」


「ザ、ザウス!! 無茶するな! エリクサーはもう無いんじゃぞ!!」


「ぬぐぅううううううう……。か、解除だ」


「ほれぇえええ! 魔力がゼロになってしまったじゃろうがぁああああ!!」


 この泉の水を一口飲んで……。


「よし! 全快だ!!」


「おおおおおおおおお!! ゼロじゃった魔力が回復しておるぅうううう!!」


「これを繰り返せば熟練度を上げるのは簡単だな」


「流石はザウスじゃあああああああ!! ここならばアイテムの消費はない!! 無限に熟練度を上げることが可能じゃああああああ!!」


 レベルカンスト値99万。

 そして、 七段階強化チャクラ イヴォークか。

 悪くない強化だ。


レベル20倍強化セカンドバースト レベル10倍強化ファーストバーストの熟練度が10に到達した時点で開放されるのじゃ!」


 ほぉ。

 この鎖で巻かれているのはそういうことか。


「じゃあ、まずは レベル10倍強化ファーストバーストを自由に使えるようにするかな」


「ふほ! ザウスが益々強くなるのぉ。グフフ。未来の旦那さまが強くなるのは、わしにとっても至福なのじゃよ。これは応援せざるを得んて。頑張るのじゃザウス!!」


 1日もがんばれば熟練度はレベル10まで到達した。


 よし。これで レベル10倍強化ファーストバーストは自由に使えるようになった。更に強くなってやるぞ。

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