第59話 ランドソルジャーの嫁【後編】
「うわぁああああ!! 魔怪獣のフィギュアだぁああ!!」
「きゃああ!!
はい??
お、おもちゃ??
「ククク。おまえ達に命令する──」
ザウスはとてつもなく冷徹な表情を見せたランド。
それは無慈悲で、おおよそ、情のかけらも見当たんねぇ、
「──思う存分……遊べ」
えええええええええええええええええええええ!?
「子供は遊びが仕事だからな。馬車馬のように遊ぶんだ」
ど、ど、どゆことだべぇええええええええええええええ!?
「で、でもザウスさま。俺……。勉強してみてぇ」
「ほぉ。
「うん。俺、本を読んでみてぇランド」
ど、ど、
そげな要求が通るわけねぇ! 嫌々でも遊ばねど命令違反でぶっ殺されっぞ!!
絶対にそげな要求は飲んでくれるわけは……。
「なるほど。この魔公爵城には図書室があるんだ。おまえが自由に入れるように手配しておこう」
飲んだぁあああああああああ!!
要求したら聞いてくれただぁああああああああ!!
「あは! ありがとうごぜぇます!!」
「うむ。好きな本を読むことも遊びの一環だからな。ところで、文字は読めるのか?」
「ははは……。読めねぇかもランド」
「ふむ。今、学校を建設中なんだがな……。大賢者カフロディーテをたずねるがいい。彼女におまえが文字読みに興味があることを伝えといてやる。彼女ならなんでも教えてくれるさ」
「……で、でもええんだべか?」
「なにがだ?」
「ランドソルジャーの男は戦士にならないといけないって……。勉強は棒術の勉強しろって……。村じゃ常識なんだランド」
「ああ。そんなのは無視しろ。おまえは俺の部下だ。俺のルールに従ってもらう。おまえが勉強したいんならそうしろ。部下の邪魔をするやつは俺が許さん」
「お、俺……。子供なのに……。守ってくれるランド?」
「気にするな、部下を守るのは支配者の義務だ。おまえが働けるようになれば働いてもらう。支配者と部下は互いのメリットを共有する。ただ、それだけにすぎん」
「あ、ありがてぇ。へへへ。ザウスさまって優しいだなぁ」
「将来の希望職とかあるのか?」
「うん! 将来は魔法学者になりてぇランド」
「そか! じゃあ、そういう職につけ。そして、俺のために働け。期待してるぞ」
「うん! へへへ」
な、なんかまだ信じられねぇ……。
「ザウスさま〜〜。
「あーー。えーーと、おまえは……
「
「ほぉ。オシャレに興味があるのか?」
「うん」
あわわわわわ!
流石にそげな要求は通らねぇだ!
化粧なんて働くこととまったく関係ねぇもん!
今度こそぶっ殺されちまうだよぉおおお!!
絶対にそげな要求は通ったりは……。
「……オシャレか。ふむ。たしか、ゴブ子が得意だったな。彼女におまえの化粧を見てもらうようにいっておくよ」
通ったぁああああああああああああ!!
すんなり要求が通っただぁああああああああああああ!!
「……ゴ、ゴブリンの女の子?」
「ああ。他種族でも仲良くして欲しいんだ。できるか?」
「う、うん……
「そうか。偉いぞ」
「へへへ……。ザウスさまぁ。
「ほぉ。言ってみろ」
あわわわわわわ!
なにを言い出すんだランドォオオ!!
ここは将来の夢を叶える場所じゃねぇランドォオ!!
悪の巣窟、魔公爵城ランドォオオ!!
それ以上言わねぇでけろぉおおおおおおおおお!!
「だけんどもな。これを言ったら、みんな笑うランド」
「ふむ。では、笑わないと誓おう」
「本当?」
「ああ。魔公爵の爵位にかける」
「……ほったらなぁ。ほ、ほんまに笑わんでランド?」
「うむ。笑わないと約束する」
「
ああああああああ!!
そげな恥ずかしいことを言っちまっただぁあああ!!
親として小っ恥ずかしいぃいいい!!
こげなこと一蹴されて笑われて終わりだランドォオオオ!!
土村の村人にも笑いもんにされた話なのに、土外道のザウスがそげなこと聞くわけは……。
「ほぉ」
「ランドソルジャーのアイドルなんて聞いたことねぇじゃろ? モンスターアイドルといやぁ、ハーピーとかセイレーンじゃ。土色の肌の
「いや。おかしくはないな」
「本当?」
「ああ。誰もやってないことをやるなんて楽しいじゃないか」
「あは!」
「よし。じゃあ、
「うん!
聞いたぁああああああああああああああああ!!
誰よりも優しく聞き入れてくれただぁあああああああああ!!
一体、どういうことだってばよ。
「よぉし。将来に向けて頑張る2匹にはこれをやろう」
そういって、ザウスさまは亜空間から何かを取り出したランド。
「じゃーーん!」
「うわぁああああ!! 食べっこゴブリンマーチだぁああああああ!!」
「
あ、あのお菓子は魔王領でも大人気のクッキー!
外側はゴブリンの絵柄。中はトロッとしたチョコレートが入ってるランド。
んで、ゴブリンの絵柄にはレアな眉毛ゴブリンとかがあるって噂のやつじゃねぇかぁあああ!!
で、でも、ランドソルジャーでも、そげな高価なお菓子は食べたことがねぇええええ!!
「じゃあ、1箱やるから2匹で仲良く分けるんだぞ」
「「 はーーーーい!! 」」
1箱ぉおおおおおおおお!!
貴重なお菓子を1箱もぉおおおおおお!!
ゆ、夢みてぇなことの連続だや……。まぁだ、信じらんねぇランド。
「ザ、ザウスさまは……。どしてそげに
「はぁ? 優しくなんてした覚えは一度もないが?」
いや、今までの一連の流れ……。
明らかに全部、優しさだべぇ……。このお方は全部、優しさでできてるべよ。優しさのコンボで
「まぁ、強いていうなら……楽しいは正義。だからかな」
「た、楽しいは……正義?」
「そ。楽しいは正義。楽しくないと生きてる意味がわからんだろうが」
「そ、そりゃ……。まぁ、そうですが……。
「だったら俺は支配者だな。支配者が部下の面倒を見るのは当然の権利だ」
「は、はぁ……」
「俺が楽しめといったら人生を楽しむんだ! 貴様らに自由はない!! 俺が右を向けといえば右を向き。白を黒と言えば黒と言わなければならない!! 俺の命令は絶対なのだ!! だから、人生を楽しめ、と言えば楽しまなければならん! おまえたちは人生を謳歌せねばならんのだぁああああああ!! クハーーッハッハッハッ!!」
「くはぁ〜〜〜〜」
こ、このお方は……本物だべぇ。
底抜けだぁ……。
「じゃあ、
生理休暇まで……。
「職が決まり次第、しっかりと働いてもらう。馬車馬のようにな。覚悟はしておくんだな。ククク。俺は容赦はしない」
「…………」
「でも、体調を崩した時は、すぐに休暇をとるようにな。別におまえのことなんか心配していないぞ。病気がみんなに感染ったら大変だからな。伝染すれば領内の戦力低下につながるんだよ。ま、いわば効率重視ってやつだな」
そ、底抜けに優しいお方だぁ……。
いい男だべぇえええええ。
こげないい男には初めて会っただぁ………。
「あ、あんのぉ……」
「なんだ
「
「なんのことだ?」
「
「ああ、名前で呼んで欲しいのか?」
「……んだ」
「んーー。まぁ、おまえは
「…………」
だんめだぁ。
胸のドッキドキが止まんねぇランド。
こげな気持ちは
と、そこへ、
「ふふふ。言ったとおりだっぺよぉ。ザウスさまはすんごい魔族だランド」
「ねぇ……あんた」
「どげした?」
「抱いて」
「急に、どした
「メチャクチャにして欲しい気分なの」
「よしきたーーーー!! 3匹目の子作りといきますかぁああああああああ!!」
ああ、ザウスさま……。
「あんた……。強く……。強く抱いて欲しい」
あの人を忘れるくらいに……。
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