第58話 ランドソルジャーの嫁【前編】
〜〜
魔公爵ザウス……。
な、なんて魔力ランドォ……。
「おっ母、俺怖ぇえええ!! うわぁああああああ!!」
「おっ母、
子供たちが泣き叫ぶのもわかる気がするランド。
向こうは、ただつっ立っているだけなのに、この圧力。
睨まれているだけで体の四肢が弾け飛びそうな勢いランド。
「長旅で体が汚れているな。水場に行って体を綺麗にしてこい」
え?
「ああ。勘違いするなよ。労いの言葉じゃないからな。不潔な体で城内を彷徨かれてはみんなに迷惑だからだ。別に気遣いじゃない」
うううう。
あ、
も、もしかして……。
あ、
あ、あり得るランド……。
絶対に気を許しちゃなんねぇランド。
「わぁーー! おっ母、見てくれよ。こげな綺麗な井戸水。俺、見たことねぇランド」
「
この子たちの笑顔……。久しぶりに見るだよ。
ううん!
騙されちゃダメランド!
こんなのは、なにかの罠の可能性があんだからよぉ!
「よし。じゃあ、食事を用意させたから食え」
え?
「だから、勘違いをするな。俺は魔公爵だぞ。たかがランドソルジャーの家族。おまえたちのことなんかどうでもいいんだ」
「そ、それが、あんたの本心ランド?」
「ああ、そうだ。ハッキリ言って、おまえたち家族のことなんぞどうでもいい。死のうが倒れようがどうでもいいのだ!」
「くぅううう!! この人でなしランド!!」
「はははは! あいにく、俺の辞書には情などいう言葉は存在せんのだよ」
「くぅうううう!! お、大方、食事には毒でも盛ってんだろう!」
「そんなことをするか。毒がもったいないだろう。空腹で倒れれば処置費用がかかる。勝手に死なれれば死体処理の手間がかかるだろうが!」
「そ、それはそうだけんど……」
「勘違いするな! なにごとも効率重視だ。おまえたちに食事を与えるのは、死体処理の手間を省いたこちら側の効率を重視してのことなのだ!」
うう……。
なんだかよくわからないランド。
「うわぁああ!! おっ母! 見てくれよ! 粘土肉の生姜焼きだぁあ!! 俺、こげな豪華な料理食べんの初めてだぁあああ!!」
「おっ母、うんめぇぞこれぇ!! 泥粘土しか食べたことがねぇもん!!
し、信じらんねぇ。
こげな豪華な食事……。
それに、ニンニクがたっぷり入って、めちゃくちゃ美味しい。
「ふふふ。流石はザウスさまだぁ。オラたちが疲れてんのを見越してよぉ。精力がつくようによぉ。ニンニクたっぷりの料理を出してくれてんだぁ」
け、計算なのけ?
いんや。そげなこと信じられん。
なにか裏が……。
精力がつく……。
はっ!
や、やっぱり
「あわわわわわわわわわ……」
「どしたぁ
うう。
あ、
あたしたちは夫婦になっただぁ。
夫婦の絆は絶対に壊れないランドォオオオオオオ!!
「あんたぁあああ!
「なんのことランド?」
そして、
ああ、こげな立派な洞穴で住めたらなぁ。
だけんど、どして、こげな場所に
「今日から、ここがオラたちの棲家だ」
「え!? こげな立派な洞穴に!?」
中は立派だったなやぁ〜〜。
ピカピカの台所。リビング。寝室、子供部屋まであるでねぇか。
「こ、こげな夢見てぇなことあんだかぁああ?? でんも、こげん立派な洞穴をどうやって??」
「へへへ。ザウスさまに与えてもらっただよ」
「え!? ザウスに!?」
「ここがオラたちのマイホームになるんだランド」
……な、なんの見返りもなしに、こげな素敵な棲家を?
あ、あり得ねぇ……。
や、やっぱり目的は
「城内の仕事はシフト制です。女には女の仕事が割り振られます。女子トイレの掃除とか、女子更衣室の管理とかですね」
うう……。
一見、まともな仕事内容だけんど……。
ど、どうしても知りてぇランド。
「せ、せ、性接待とかあるんだべか?」
「ええ……。まぁ、あるにはありますが」
やっぱりぃいいいいいいいいいいいい!!
今までのは好待遇は全てこれのためだったランドォオオオオオ!!
「添い寝ノートというのがありましてね。もう5巻にまで増えたのですが。ザウスさまと夜のお供を希望する女は記帳するシステムになっています」
「あわあわあわあわわわわ……。あ、あた、
あの人は裏切れねぇランド。で、でも……。
あげな好待遇は、
あの人の悲しむ顔は見たくねぇええええ!!
なんて卑劣なぁああああ!!
魔公爵ザウス。最低最悪の魔族ランドォオオオオオ!!
ああ! どうしたら良かんべかぁああああああ!!
「えーーと。
「んだ」
「じゃあ、残念ながら書けませんね」
「え?」
「このノートに名前を書けるのは未婚女性だけと厳格に決まっています。残念ながら
えええええええええええええええ!?
ほったら、なして好待遇なんだぁああ??
ザウスになんのメリットがあるだぁあああああ??
「さぁ。選択しろ。このまま死を選ぶか。それとも俺の奴隷になるかをだ。ククク」
「くぅ……。こ、子供たちだけは、奴隷になるのを勘弁してくれんじゃろか?」
「ダメだ。支配者として秩序が乱れる。部下モンスターは全て俺と主従契約を結ぶのだ。ククク」
「ううう……」
あんなに素敵な洞穴に住めるんなら……。
あ、悪魔に魂を売るだよ。
右手の甲に奴隷紋が浮かび上がる。
ああ……。もしも騙されていたら人生おしめぇだぁ……。
「ククク。これでおまえたちは俺の配下だ! 道具のようにこき使ってやる!! 馬車馬のように働け! 貴様らに自分の人生というものはない!! 全ては俺のため! おまえたちは、俺のために生きるのだぁあああああああああ!! アーーハッハッハッ!!」
「ああああああああああああ!!」
やっちまっただぁあああああ!!
欲望に目が眩んじまっただランドォオオオオオ!!
せ、せめてぇ。子供たちだけは楽をさせてやらねぇとなんねぇランドォオオオオ!!
「あ、
「うむ。じゃあ、なにをやってくれるんだ?」
「え?」
「
「バ、バトル!? いんやぁあ! ランドソルジャーの女は戦場に立ったりしねぇランド」
「そうなのか? 別に良いと思うが?」
「い、いや、だってよぉ。女が戦場に行くなんて恐れ多いだ。女は家事をするもんだランド」
「ああ。そういうのは個人の自由だぞ」
「へ?」
「別に戦いたいなら女でも戦場に立てば良いさ。逆に子育てをしたい男がいるなら男が家事をやればいいだろう」
「そ、そんなぁあ! そげなことぉおかしいだよぉ。魔王領では考えられんかったランドォ! 男は戦場に行き、女は家事をするもんだぁ!」
「そっちではそうかもしれんが、少なくとも、俺の領土では自由だからな」
「な、なしてそげなこと……?」
「そっちのが楽しいだろ?」
「た、楽しい??」
「夫婦でも楽しくなくちゃ、人生がつまらんと思うぞ。やりたい職につく。これは大事なことだ」
「は、はぁ……」
なんだやぁ……。
この人はなぁんか変わってる魔族だやぁ。
「ククク……。俺は子供でも容赦せんからな」
はっ! 目を離した隙にぃいいい!!
子供まで働かせるつもりなんかランドぉおおお!?
「
「ダメだ。俺が支配者なのだ。支配者の命令は絶対なのだ! おまえの意見なんぞ聞くつもりはない!!」
鬼畜ぅうううううううううううう!!
悪魔ランドォオオオオオオオオ!!
やっぱり信用できねぇランドォオオオオオオオ!!
ザウスは亜空間から何かを取り出した。
もしかして、農機具とかかや?
ま、まさか拷問器具?
鞭でビシバシと叩いくつもりかや!?
馬車馬のように働かせる気かランドォオオ!?
子供にそんな仕打ちはねぇえランドォオオオオ!!
鬼! 鬼畜!!
悪魔ランドォオオオオオオオオオオオ!!
一体、何を取り出すランド!?
────
みなさんのおかげで、今作が月間ランキングの1位を獲得できました。
2024年2月16日現在時点。
夢みたいです。そのお礼といってはなんですが、近況ノートに今作のハーレム編を執筆しました。しばらく一般公開いたします。ぜひ、この機会に読んでみてくださいね。しばらくするとサポーター限定になります。興味のある方はお早めに。日常回なので読まなくとも本編には差し支えありません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます