第57話 土助の家族
〜〜ランドソルジャー
オラァ決心しただぁ。
魔王軍なんかより、ザウスさまん所の方が100億倍は環境がええだよ。
家族で暮らせりゃぁ、こげな幸せなことはねぇランド。
オラは気配を消しながら魔王領の我が家へと向かっただぁ。
ランドソルジャーは土属性の魔族だぁ。
主に、建築関係なんかが得意なんだけんどもよぉ。
土の中さ潜って、気配を消すのも得意なんだぁ。
「
この呪文は土の中に溶け込む隠蔽魔法ランド。
オラはなんとか隠れまくって、魔王領の我が家へと辿りついただぁ。
ここはランドソルジャーだけの『
そこは悪臭が漂う、湿地帯の洞穴だぁ。
カビと死肉の腐敗臭で臭ぇのなんのって。
今までは、これが普通だと思ってたんだけんど。ザウスさまんところに行っちまったらこげなところで住めねぇランド。
「あんれ? あんたエリート戦士の
「どもぉ。お久しぶりランド」
「あんた、ザウスに倒されて死んじまったって聞いたでよぉ。生きとったんかい?」
「ははは。まぁ、なんとか命を救われたでランド」
うう。
ザウスさまのことを伝えるべきかぁ……。
でんも、村人にしたらザウスさまは敵だでよぉ。
今は家族を優先ランドォ。
オラは村人の視線を掻い潜って、自分ん家の洞穴に到着したランド。
「あ! おっ父! お、おい、
「え? あ、本当だ! うわあああああ!! おっ父だぁあああ!!」
5歳の息子と4歳の娘だぁ。
オラを見るなり、飛びついて来ただよぉ。
「元気しとったかぁ!
「おっ父! 俺……。おっ父が死んだって聞いて……。うわぁあああああん!!」
「う、
「よしよし。泣かんでええランド。おっ父は生きとるでよぉ。こうやって帰って来たから。泣かんでええランド」
洞穴の奥では
「え……。ど、
「ああ。
「あんたぁあああああああああああああああああ!!」
「
オラたちは抱き合った。
ほんでキスをした。
ベチョベチョベチョベチョベチョ。
もう、これでもかというくらいに舌を絡めて……。
ベチョベチョベチョベチョベチョ。
「あんたぁ……。あふん。はふん」
「
ヌチョヌチョヌチョヌチョヌチョ。
「おっ父たち。長かぁ……。チューの時間、長かぁ……」
「お兄ちゃん……。手ェどけてぇランド。見えねぇランドォ。
「
「
もう、ご無沙汰だで、愛が溢れて爆発してもうたランド。
愛しとるぅう。好きじゃぁああ。
「あんたぁ。あかんよぉ。このままやったら3匹目ができちゃうランド」
「そうや! 作ったらええんランド!!」
「え? あかんよぉ。2匹の子供でも食事がままならんのにぃ。3匹目なんか作ったら家族が飢え死にしてしまうランドぉ」
「ふふふ。それができるんランドォオオ!! これからはキチンとした職があって、綺麗な洞穴で、食事も毎日3度も食べれる場所で住めるんランドォオオオオオ!!」
「なにいうてるランドォ。そげな夢みてぇな場所。あるわえけねぇランドォ」
「それがあるんランドォオオオオオオ!!」
オラはザウスさまのことを包み隠さずに伝えたランド。
「信じらんねぇ。明らかに騙されてるランド。変な壺とか買わされてねぇランド?」
「そげなことねぇって! ザウスさまは本物ランドォ! ほれ見てみぃ。この甲の奴隷紋。服従の証ランドォ!」
「呆れたぁ……。あんた敵に騙されてるんランド。ザウスは魔族の裏切り者ランド。信用するなんてあり得ないってばよぉ。お人好しもほどほどにせんとダメランド。いいように利用されて搾取されて終わりランド」
「そったらことねぇ! 来ればわかるってばよぉおお!!」
オラは訝しげな
「おんやぁあああ? これはこれはぁあ。エリート戦士の
「
随分と垢抜けたランドォ。
「ハハハーー! 元気そうでなによりぃいいいいいいランドォオオオオ!! エリート戦士さんよおおおおお!!」
こいつは、オラがカクガリィダンの親衛隊に入隊できたことを今でも妬んでいるランド。
「俺は入隊試験に落っこっちまったかんなぁあああ! 実力不足ですわぁああ!! ランドォオオ!!」
「うう。い、急ぐからどいてくれランド」
「おんやぁ? せっかく帰って来たのにさぁ。どこさ、行くランドォ? どうやって生き延びたか教えて欲しいランドォオオ」
「どうやってって……」
「どうせ、1匹だけで逃げて来たんだランドぉ? 仲間を見捨ててよぉおおおお!! この卑怯者がぁああああああ!!」
「違っ! そ、そんなことはしねぇランド!!」
「どうだかなぁあ〜〜? カクガリィダンさまは全滅したって言ってたランドォ〜〜。なのによぉ。おまえが1匹だけってのは、どう考えたっておかしいランドォオオオ」
「うう……」
……そ、そうだ。
よくよく考えたら、これはチャンスランド!
ザウスさまは部下モンスターを増やしたいと仰られていたランド。
何万匹いてもいい。とにかく大量に欲しい。と言われていたランド。
土村のランドソルジャーは5千匹以上はいるランド。
みんなを魔公爵領に連れていけば、いい戦力になるランド!
みんなもいい暮らしができて、みんながハッピーになれるランド!!
一石二鳥ランドォオオオオオオ!!
メリットしかねぇランドォオオ!!
「みんな聞いて欲しいランドォオオオオオオ!!」
オラはありったけの情熱をぶつけたランド。
ザウスさまの素晴らしい所。魔公爵領の素晴らしい恩恵。
「──ほんで、3食、休みつきなんだランドォオオオオ!! 有給休暇も有るんランドォオオオオオオオオ!! 子供の託児所だって用意してくれてよぉ。女も男も自由に働けるのが魔公爵城なんランドォオオオオオ!!」
これでみんながハッピーランド!
と、思うやいなや。
オラの顔には小石がぶつかった。
「痛でっ! な、なにするだぁ!?」
「嘘つくなーー!!」
「嘘でねぇええええ!! オラは実際に体感したランドぉおお!!」
「騙されてるに決まってるだろうがぁあああ!!
「騙されてなんかねぇだあああああ! ザウスさまは素晴らしい魔族だランドォオオ!!」
「素晴らしい魔族は魔王さまのことだーー!!」
「そうだそうだ! 魔王さまが素晴らしいんだぁあ!!」
「ザウスは敵だぁああああああ!!」
「悪いのはザウスだぁああああああああ!!」
んなーーーー!!
わかってもらえんランドォオオオオオ!!
「ケハハ! エリート戦士の
「うう……。オ、オラは気がついたんだランド。ほ、本当に素晴らしい支配者てぇのはよ。部下のことを大事にしてくれる存在なんだってばよぉ……」
「ギャハハハ! だったら人格者は魔王さまだろうがぁ! 最強の存在。最強のお力! 魔王さまは俺たちのために尽力してくれているんだランドォオオ!!」
ぬぐぐ……。
だんめだぁ。これ以上言ってもなぁんも伝わんね。
オラたち家族は走り出しただ。
「お! 逃げるぞ! 誰か捕まえろ!」
「
「魔王軍に連絡だ! 裏切り者が逃げたランドぉおお!!」
つ、捕まるもんかぁああああああ!!
オラたちはザウスさまの元で幸せに暮らすんランドぉおおおお!!
「
オラたちは土中に潜った。
「おっ父。戦ってくれよ!」
「
「逃げるのが先だランド」
「うう。おっ父の弱虫! 俺、見損なったランド!!」
「…………」
戦えってもええだ。
だども、村人のレベルは軒並み30以下と聞いているだよ。
そげな状態で戦ったら、レベル140のオラが圧勝しちまうだよ。
暴力ではなにも解決しねぇ。それは、ザウスさまから教えてもらっただよ。
みんなが怪我もせずに幸せに暮らす。それが最も、ハッピーに暮らせることランド。オラはザウスさまのお考えに惚れ込んじまっただ。だから、弱い者を攻撃したりはぜってぇにしねぇだよ。
そうして、なんとか必死に逃亡した末。
オラたち家族は無事に魔公爵城に到着したランド。
「ねぇ。あんたぁ……。本当にザウスは良い支配者なんだろうねぇ?」
「当たり前ランド! ザウスさまほどのお方はこの世にいねぇ!」
「うう……。とても信じられねぇランド……」
オラはザウスさまに家族を紹介した。
「うむ。よく来た」
しかし、ザウスさまの鋭い眼光によって、子供たちは泣き喚く。
「うわぁあああああああああ!! 怖ぇえええええええ!!」
「おっ母、
「おお、よしよし。おっ母がついてるから安心だぁ」
ザウスさまはお顔が怖えから初対面はビビるんランド。
「あんたぁ! ザウスなんて、やっぱり信用できねぇよ! 行こうランド!!」
「へへへ。まぁまぁ」
「あんたは騙されてんだよぉおおおおおおお!!」
あーー。
なんだか懐かしいランドォ。
オラも初めはそう思ったランド。
「こ、こ、子供たちに手ぇ出したらただじゃおかねぇランド!!」
「こ、これこれ! 失礼は言っちゃいかん!」
「あんたは黙ってぇランド。子供は
「
「ううううううううううう!!」
も、申し訳ねぇですだぁああああああああ!!
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