第47話 ゴブ太郎 VS カクガリィダン

「た、たかがゴブリンにどうして、これほどまでの力が!?」


 私はゴブリンのステータスを探った。


 強さの秘密はなんだ!?


「しゅ、種族……。 究極アルティメットゴブリン。だとぉ?」


 ノーマルゴブリンじゃないのか。

 たしかに普通のやつより背が高い。


 そういえばレベル100を超える無限ダンジョンにそんな種族のゴブリンが生息していたな。地下に潜む 究極アルティメット種……。

 少なくとも、地上では見ないタイプのモンスターだ。


「へへへ。オイラはザウスさまに強くしてもらったんだ」


「なにぃい!?」


 ぐぬぬ……。

 つ、つまりはザウスはこのゴブリンより強いということか?


 し、信じられん。

 雑魚魔族が私よりレベルが上だと?


 そんな規律の乱れた話があるのか??


 ぐぬぬぬぬ。


「降参ゴブか?」


「こ、降参するわけがないだろうがぁあああ!! わ、私は魔王軍親衛隊 土組の隊長 カクガリィダンだぞぉおおお!!」


 ええい! 

 これでも喰らえぇええええええ!!


 規律正しい私の槍で貫いてくれるはぁああああああああ!!


「無駄ゴブよ」


ひょい。


 ぬぉおおお!

 簡単に躱したぁあああああああ!!


「ゴブ!」


 ゴブリンはパンチを放つ。その拳は私の頬に命中した。


「ぬごぉおおおおおおおおおお!!」


 痛ぁあああああああいッ!!

 こ、この威力。

 間違いない。

 こいつのレベルは280だ!


 レベル210の私では勝てん!


「もう降参するゴブ。オイラはあんたのステータスを見ることはできないゴブが、ザウスさまからは、レベルが210と聞いてるゴブよ。だから、レベル280のオイラには絶対に勝てないゴブ」


「ふ……ふふふ。土組の隊長を舐めるなよ」


「どういう意味ゴブ?」


「ハァアアアアアアアアアア……!! 大地の竜よ、我は求め賜う大地竜の牙……」


「え、詠唱が始まったゴブ? 一体、なにをしようとしてるゴブ?」


 ククク。

 私のとっておきを見せる時が来たのだよ。

 

 私の槍は強烈な光を発した。

 さぁ、この突きを躱せるかな?


「この一突きには地竜の加護が宿っている! その力はレベルを90プラスするのだぁああああ!!」


 つまり、私の攻撃力は実質──。


「レベル300の槍攻撃になるのだぁあああああああああああああああ!!」


 この一撃で死ねぇええええええええええええ!!



大地竜牙突だいちりゅうがとつッ!!」



 ギャハハハハッ!

 終わりだーーーーーーーーーーー!!


「ふぅん。レベル300ゴブか。なら……。オイラも本気ゴブ」


 え?

 今なんて?




筋肉覚醒マッスルウェイクゴブ!」




 な、なんだこの衝撃波は!?

 ゴブリンが金色のオーラに包まれたぞ!?

 き、筋肉が肥大してるだと!?


 ええい。

 なにかはわからんが、私の槍は無敵だぁあああ!!

 規律正しい必殺の一突きぃいいいいいいいいいいいい!!


ガシッ!!


 え?


 槍の切っ先を……。す、素手で……。

 つ、掴んでいる……だとぉおおおおお??

 私の大地竜牙突ぁあああああああああああああ!!


「どういうことだぁああああああああああああああああ!?」


筋肉覚醒マッスルウェイクは勇者セアが使っていた技なんだゴブ。ザウスさまとの修行で、見よう見真似でやってみたらできたゴブ」


 ゴブリンが勇者の技を真似るだとぉおおおおおお!?


「ふ、ふざけるなぁああ!! クソッ! ぬ、抜けん!! や、槍を離せ!!」


「まだ降参しないゴブか?」


「こ、こんなことはあり得ない!」


「やれやれゴブ。フン!」


 と、矛先を軽々と粉砕した。


「にゃにぃいいいいいいいいいい!?」


 クリスタル鋼でできた矛先を簡単に破壊するだとぉおおおおお!?

 こいつのレベルは280だろうがぁあああああ!?


「この 筋肉覚醒マッスルウェイクモードに入ると、通常レベルの2倍の攻撃力になるゴブよ」


「に、2倍だとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


「ザウスさまがいうには、オイラの通常レベルが280ゴブ。それの2倍だから……。つまり実質……。レベル560ゴブね」


「ご、ご、560ぅううううううううううううううううううううううう!?」


 そんなバカな! 

 魔王さまでさえレベル400なんだぞぉおおおおお!?


 そんなバカなぁああああああああああ!!


 しかし、ステータスを見ると、無常にも『レベル560』の数値を表示していた。


「ざ、雑魚ゴブリンのくせにぃいいいいいいいいいい!!」


「ムッ。オイラは雑魚じゃないゴブよ。じゃあ、ちょっとだけ本気ゴブ」


 ゴブリンは拳の連打を放って来た。


「ゴブゴブゴブゴブゴブゴブッ!!」


 は、速すぎて見えん!!

 と、とても防ぐのは──。


 私はそのパンチを全弾喰らった。


「ぼげらぁああああああああああああああああッ!!」


「ゴブゴブゴブゴブゴブゴブッ!!」


 ひぃいいいいいいいいいいいいいいい!!


 と、止めてぇええええええええええ!!

 規律正しく、今すぐ止めてくれぇえええええええええ!!

 

 なんて重い一撃だぁああ!!

 しょ、正真正銘レベル560だぁああああああ!!


「ゴブゴブゴブゴブゴブゴブッ!!」


 あぎゃああああああああああッ!!

 こ、このまま連打を喰らったら殺されるぅううう!!


 ぺ、ぺ、ぺ──。


「ペガサスの翼ぁああああああああああああああああああああ!!」


 これは、拠点にしていた場所に強制的に飛んで戻ることができるアイテム。


ギュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンッ!!


 私は光に包まれて、命からがら逃げたのだった。


 ヤ、ヤバかった。

 あと1秒遅れていたら確実に殺されていた……。



 カクガリィダンとゴブ太郎が戦っている2キロ離れた小高い丘にて。

 特殊な望遠鏡を覗き込むガイコツのモンスターがいた。

 その名をスパイ骸骨。


 この望遠鏡には魔法が付与されており、部下モンスターでも相手のステータスが確認できるのだった。


 スパイ骸骨はゴブ太郎のレベルを確認したようだ。

 前歯をガタガタとさせて痙攣する。


「ガ、ガガガガガ……。コツコツコツコツ……。し、信じられないコツ……」


 カクガリィダンがペガサスの翼を使ったのを見て後ずさった。


「マ、マ、マジメットさまに……。お、お、おつ、お伝えしなければいけないコツ」


 どうやら。

 このスパイ骸骨は水組の隊長 マジメットが送った尖兵らしい。

 

「あ、足が……。う、うご、動かないコツ」


 スパイ骸骨の震えは激しさを増していた。

 それもそのはず。ゴブ太郎のレベル560は魔王のレベルよりも上なのである。


 体の痙攣は各部の骨を分離させた。


バラバラバラバラーーーー!!


 スパイ骸骨はその場に崩れ落ち、骨の山となった。



────

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