第46話 カクガリィダンの侵攻
〜〜
私の隊は魔公爵領へと到着した。
その行進は美しく、規則正しく整っている。ザッザッという足音は、全てが揃っている証拠だ。
兵士の種族はランドソルジャー。
土属性の人型魔族だ。
100体が列を組んで行進する。
実に美しい光景だ。
規律を正すのはいい。
ピシッと揃う。
私のもみあげのように、剃り込みは左右でピシッと揃っている。
そんな中、1体の兵士が脚の動きを間違えた。
「そこぉおおおおお!! 規律を乱すなぁあああッ!!」
「は! 申し訳ありませんでランド!」
「前に出ろぉおおおおお!! 貴様のせいで0.1秒、進行が遅れたぞぉぉおおおおお!! この責任をどう取るつもりだぁぁあああ!? 一体、どうやって責任を取るつもりなのだぁああああああああ!? 規律は正すことは絶対であり、私の命令は魔王さまの命令に等しいというのにぃいいいいい!! どう責任を取るつもりなのだぁああああああ!?」
「あわわわわわわッ! も、も、もうしわけありませんでランド!! 許して欲しいランド!!」
と必死に土下座をする。
ふむ。
「謝るのはいい心がけだな」
すると、その兵士はホッとした。
「よし。顔を上げろ」
「へへへ……。次から気をつけるランド」
私は槍を突いた。
その槍は兵士の顔を貫く。
「アギャアアアッ!!」
「貴様に次はない。死をもって償え」
辺り一面に紫色の血が飛び散った。
やれやれ。
謝って規律が正せると思ったら大間違いだ。
他のソルジャーは青ざめる。
ククク。恐怖によって規律を正すのも魔族の役目だな。
「空いた隙間を補充! 体勢を整えて全体前進!!」
ククク。
規則正しく美しく。
規律こそが我が正義!
魔王さまに逆らう魔公爵は、規律を乱す裏切り者だ。ククク。裏切り者は排除するのみ。
痛めに痛めて、生まれて来たことを後悔させてやるさ。
雑魚魔族が、上位魔族に反乱したことを後悔させてやる。
「まずは、国境を占拠する」
ここを起点に魔公爵城を攻めるか。
早く行動を起こした方がいいだろうな。そうしないとマジメットが率いる水組に先を越されてしまう。私の方がやつより優秀であることを魔王領内で広めなければならん。
それこそが、真の規律であろう。
私が魔王領の模範となって、全ての魔族を角刈りに変えてくれるわ。
ククク。
「よし。各自、テントを張れ! 規律正しくな!」
「そんなことはさせないゴブ」
ん?
ゴブリンだと?
「なんだ貴様は?」
「オイラはゴブ太郎。ザウスさまの命により、おまえを倒しに来たゴブ!」
「はぁ? 1匹でか?」
アホなのか??
「排除しろ」
「は!」
やれやれ。
「他の者は構わずテントを張れ」
ドンッ!!
ん?
なんか飛んでいったか?
それは1体のランドソルジャーだった。
「なに!?」
ドンッ! ドンッ!! ドンッ!!
次々とランドソルジャーがぶっ飛ばされる。
「な!? ど、どういうことだ!?」
すると、さきほどのゴブリンが私を見てニヤリと笑っていた。
「降参しろゴブ」
「…………」
コイツがやったのか?
そんな規律を乱した話があるのか??
コイツはゴブリンだぞ……。
ランドソルジャーの平均レベルは103だ。
対するゴブリンはリーダー種でもレベル50が精一杯の強さだろう。
格上であるランドソルジャーがゴブリン1匹に倒されるはずはないんだ。
「おまえらはオイラに勝てないゴブ」
このゴブリン……少し、背が高いか。
でも、リーダー種よりは明らかに小さい……。
1体のランドソルジャーが、ゴブリンに向かって槍を突いた。
すると、ゴブリンは半身を軽く逸らして交わし、瞬時に裏拳でソルジャーをぶっ飛ばした。
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
「何体で来ようが同じゴブ。おまえらはオイラに勝てないゴブ」
そ、そんなバカな。
こいつはゴブリンだぞ?
……一体、どれほどのレベルなのだ?
ステータスを見てやるか。
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!? なんだそのレベルはぁあああ!? き、き、規律違反だぁああああ!!」
「規律違反?? オイラはザウスさまの命令を守っているだけゴブよ。なにごともザウスさまが一番ゴブ。ザウスさまが命ゴブ。違反なんてしてないゴブよ」
バ、バカな。
見間違えか……。いや、間違いない。
このゴブリンのレベル──。
「280だとぉおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ステータスの誤表記か?
……いや、それは考えられない。
ステータスの表記は創造神の加護だ。誤表記などという乱れた規律は存在せんのだ。
な、ならば、やつのレベルは本当に280!?
「カ、カクガリィダン様。あのゴブリン、めっちゃ強いランド。ど、どうするランド!?」
「ぜ、全員でかかれ!」
わ、私ですらレベル210だというのに!?
わ、わ、私より上だと!?
ただのゴブリンがか??
あ、あ、あり得ない……。
ドンッ! ドンッ!! ドドンッ!!
気がつけば、全てのソルジャーは吹っ飛んでいた。
立っているのは私だけ。
「降参しろゴブ」
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
そ、そんなバカな。
規律が乱れすぎだろうがぁ。
し、信じられん。
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