第44話 ザウスと仲間たち
〜〜魔公爵ザウス視点〜〜
さて、魔王に反旗を翻す。
と宣言したものの。
部下モンスターを失うのは嫌だぞ。
勇者の襲来は、負傷者を多数出してしまった。まぁ、回復を徹底したから、死亡率はゼロ匹で抑えることができたがな。
戦いとなれば負傷者は免れない……。しかし、1匹たりとも殺させはせん。
これはモンスターのことを想ってなんかじゃないぞ。モンスターのことなんか、どうでもいいんだ。モンスターが死のうが消滅しようが、俺にとってはどうでもいいことだよ。問題は俺の手駒が減ることなんだ。自分の手駒を減らすことは絶対に避けたい。だから、死亡者はゼロ人!
今回もその目標は達成したい。
「さて」
と、俺は作戦机に地図を広げた。
「魔王領はここ。魔公爵領はここだ」
魔神狩りのアルジェナはその地図をまじまじと見つめた。
「ふーーん。ずいぶんと魔王領は広いのねぇ」
「世界の半分だからな」
「じゃあ、半分は人間なのね」
「んーー。正確にはそうでもないな。エルフやドワーフの亜人の国。人間が治める国。誰の領土にもなっていない土地。と様々だ」
「へぇ……。じゃあ魔公爵領はどこなの?」
魔王軍は、この未征服分である半分の領土を自分の領土にしようとしているんだ。
魔公爵領の広さはそれに比べたら相当に狭い。
この世界全体を地球と考えたとして、俺の領土……。日本でいうならそうだな……。
「淡路島くらいの大きさか」
「え? どこそこ?」
「なんじゃそこは?
「あ、いや……。忘れてくれ。とにかく、ここだ」
「へぇ……。やっぱり、魔王領に比べたらずいぶんと小さいのねぇ」
俺の前世は日本人。
すさまじい社畜で、最期は過労死したんだよな。
淡路島といえば、だいたい琵琶湖くらいの大きさで……。ははは。この世界の住民が、日本のことなんてわかるはずないか。
不思議なことに、ここは俺が前世でプレイしていたゲーム、ブレイブソードクエストの設定にそっくりの世界だった。
ブレイブソードクエスト。略してブレクエは俺が大好きなゲームだ。設定集を読み漁り、ポスターやフィギュアグッズを集めまくった。500時間以上はプレイしたかな。とにかく抜群に面白いゲームだったよ。
そんな俺は、序盤のチュートリアル(といっても20時間はプレイするが)それくらいで登場する中ボス、魔公爵のザウス・ジャーメルに転生していたんだ。
額の一本角をトレードマークに、青い肌はまんま魔族って感じだよ。
本当はレベル66の設定で、レベル40くらいの勇者に倒される運命だったんだがな。
それが、今や、俺はレベルの限界突破。そのレベルは6000まで到達した。
無事に勇者を撃退して、まったく違う運命を辿ることになった。
さて、勇者の次は魔王が敵になるわけだがな。
通常のストーリーなら、魔王のレベルは400だ。
今の俺なら、圧勝する可能性が高い。
しかし……。
勇者セアは未知の女戦士ゲバルゴンザの弟子になり
レベルだって82まで上昇していたからな。
明らかに、俺が知らない勇者だったよ。
しかも、人質までとって俺に戦いを挑んで来たんだ。
レベルが高いからといって、油断していると、とんでもない目に遭う可能性があるよな。
やはり、ここは慎重に進めるのが一番だろう。
そういえば、俺には頼もしい仲間たちがいる。
まず、筆頭に挙げられるのが、世話係のメエエルだ。
彼女は、俺より2歳年上の22歳。
お淑やかで優しい。頭がよくて、いつも俺の心配をしてくれるんだ。
本当は、俺が倒されたあとに勇者と恋仲になる筋書きだったんだがな……。
運命とはわからんもんだよ。
「ザウスさま……。どうされました? ふふふ。私の顔になにかついていますか?」
笑顔が可愛い……。
スタイル抜群だしな。透き通る白い肌。鉄壁の清潔感。彼女はいつもいい匂いがするんだ。清楚な女子アナって感じだよ。
「コホン……!」
と、咳をしながら、俺とメエエルの間に割り込んで来たのはアルジェナだった。
「ね、ねぇザウス! 魔王軍の侵攻に注意するなら川の深度は調べておくべきよ。橋がなくても浅瀬だったら簡単に渡れるんだからね!」
「あ、ああ……。そうだな」
彼女は魔神狩りのアルジェナ。
本来なら勇者セアの師匠になる女だ。現在は俺と同い歳の20歳。
俺が見つめていると、彼女は全身を真っ赤にした。
「な、な、なによぉおおお!? あ、あた、
「お、おう」
「ふん!」
なんかツンデレキャラだ。
ゲームの時は俯瞰で見れたんだがな。
いざ、こうやって対面すると、彼女の気持ちはよくわからない。
まぁ、そもそも、魔公爵じゃなくて勇者と恋仲になる女キャラだからな。
魔公爵である俺のことなんて恋愛の対象外だろう。
「では、国境を監視できるようにした方がよいのぉ。ふふふ。ジャアアアアン!! 監視クリスタルなのじゃあああ!!」
と、亜空間から取り出したのは大きな水晶だった。
「これは
「ほぉ。それは便利だ」
彼女は大賢者カフロディーテ。
齢1100歳の天才賢者だ。不老の秘術によって11歳の少女の見た目をしている。
喋り方は年老いているが、見た目は可愛い女の子。フワフワのミニスカートが大好きで、ベッドにはいつも熊のぬいぐるみが置いてあるんだ。
そして、
「使い方は簡単なのじゃ。このクリスタルを置いてな。こうやって魔力を注ぐだけで……ぬあっ!」
彼女はクリスタルに夢中でつまづいた。
スカートが捲れ上がり、熊ちゃんマークのパンツが見えてしまう。
そう、これ。このパンチライベントこそが彼女の真骨頂。ゲームの中でも、この熊ちゃんパンツを見せまくっていたな。
「はぅううううううう!」
やれやれ。
天才なのだが、少々おっちょこちょいなんだ。
「ザウスゥウウ! 見たのかぁ?
ポカポカポカポカ!!
「いや……。見たというか……。見えた」
「ぬはぁあああああああああ!! 責任を取れぇええ!! 今すぐ結婚じゃぁああああ!!」
「あのなぁ」
「んもぉおお!! ザウスったらああああ!!」
彼女はポカポカと叩いたあとに、ジッと俺の顔を見つめて、
「……で、どうじゃった?」
「は? なにがだ?」
「わ、
「なぜ、そんなことを聞くんだ?」
「せくしーじゃったか? のぉ? どうなんじゃ?」
「あのなぁ……」
「だって……。
返答に困るな。
こいつは見た目が11歳だしな。
「んもう! 黙っていてはわからんぞ! 恥ずかしいのか?
「今は魔王討伐の作戦会議です。挙式はザウスさまの指示でやりましょうね」
「わ、
「ふふふ。きっとお似合いですよ。では、お胸の大きさはしっかりと測りませんとね」
「はぅうう!
「ええ。大丈夫ですよ。でも、ズルっとずり落ちないようにした方がよいかと思うのです」
「んもぉ! メエエルったらぁああ!!」
ポカポカポカポカポカ……!!
やれやれ。
お母さんと子供みたいだな。
まぁでも、カフロディーテの魔研究は大いに助かっている。
俺や部下の強化をはじめ、魔公爵領の発展にはなくてはならない存在だ。
この監視クリスタルも相当に便利だぞ。いわば監視カメラみたいなもんだしな。
俺たちは地図を見ながら意見を出し合った。
そんな中、しょぼんと落ち込む女の子が1人。
彼女の名前はミシリィ。
勇者の幼馴染だった15歳の女の子だ。
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