第41話 魔公爵の全力

 俺は亜空間からデーモンソードを取り出した。


 勇者は腹を抱えながらも目を見張る。


「ぬはぁ!! そ、そ、その剣は!? ま、ま、まさかぁ、デ、デーモンソード!?」


「なんだ、知ってるのか? 部下モンスターが拾って来てくれたんだ」


「なにぃいいい! そ、それは、僕が捨てた剣だぁあ!!」


「ああ、そうだったのか。そういえば拾ってくれたモンスターはゴブリンのゴブ太郎でな。おまえがボコボコに殴り倒したゴブリンだよ」


「あのゴブリンが……。で、でも、その剣は呪われているはず! 貴様の体力は必ず1になってしまうんだ。ハ、ハハハ! 墓穴を掘ったなぁ! クソ魔公爵がぁ! 所詮は雑魚魔族なんだぁ! 貴様は僕に殺されなければならないんだぁあ!!」


 墓穴?


「もしかして、呪いの効果か? 俺は設置スキルを2つ持っていてな。1つはおまえも知ってる『ステータス2倍強化』そして、2つ目が『呪い効果無効』なんだ」


「なにぃいい!?」


「だから、俺がこのデーモンソードを装備しても呪われることはない。この剣のデメリットである『装備するとHPが必ず1になる』は、俺のスキルによって無効化されるんだよ」


「なんだとぉおおおおお!?」


「それとな。このデーモンソードには設置スキルがあってな。それが『レベル2倍の攻撃力』というものなんだ。呪いの効果は俺のスキルで打ち消して、このメリットである『レベル2倍の攻撃力』の恩恵だけを受けることができるんだよ」


「はわわわわわわ……!」


「まぁ、つまり単純に、2倍レベルの攻撃力になるわけだな」


「あわわわわわわ……!」


 さぁて、


「計算してみようか。俺は現在レベル6000だ。自身の設置スキル『ステータス2倍強化』の効果で実質レベル1万2000にまで上昇している。そこにこのデーモンソードの『レベル2倍の攻撃力』の効果で更に倍の攻撃力になるわけだな」


「あ……ああああ……」


 つまり、俺の攻撃力のレベルは、




「実質。2万4000だ」




 勇者は奇声を上げた。


「アキャァアアーーーーーッ!!」


 対するセアのレベルは82か。

 うん、これなら負けることはないだろうな。

 あ、そうだ。


「いうのを忘れたがな。ダークスラッシュという俺の必殺技な。通常攻撃の10倍の威力なんだ」


 だから実質レベル……。




「24万だったな」




 うん。

 でも、


「安心しろ。俺は絶対に手を抜かないからさ。おまえのレベルが82だろうと、俺は1ミリも容赦はしない。気も抜かない。油断もしない。全身全霊をかけて、全力で挑むつもりだ」


「アピャピャ……。ホゲ……アガ……………」


 セアはパクパクと口を開閉させてから、白目を剥いて気絶した。


「え? おい! 戦いはこれからだぞ?」


 返事がない。

 ただの気絶した勇者のようだ。


 やれやれ。

 気絶中に攻撃を仕掛けるのはな。なんだか、気分がスッキリしないよ。


 などと思っていると、アルジェナがセアの襟首を持ち上げた。


「起きろぉお勇者ぁああッ!! 気絶してんじゃないわよぉおお!!」


 ふむ。

 彼女は相当にイライラしていたからな。ここは傍観しようか。


「よくもスターサに酷いことをしたわね! それに僧侶のミシリィにも最悪の対応だったわ!! 彼女はあんたの仲間でしょうがぁあッ!!」


「あ……。うう……」


 アルジェナはセアの顔面を連打した。


「気絶で許されると思ってんのぉ! オラオラオラァア!!」


「あべべべべッ!!」


あたしの怒りを思い知れぇええ!! オラオラオラァアッ!! 女の敵ぃいいいい!! オラオラオラァアアアアッ!!」


「アデデデデデデデデッ!!」


「これはスターサの分! オラオラオラァアッ!! 女の子に暴力を振るうなんて最低よぉおお!! オラオラオラオラァアアアアッ!!」


「ぬががががががががががががッ!!」


「今度はミシリィの分よぉ! オラオラオラァアッ!! こんなに優しい幼馴染を性欲処理係にしようとするなんて許せるもんかぁあああ!! オラオラオラァアアッ!!」


「ほげぇらぁあああああああああッ!!」


「そして、最後に──」


 と、自身の拳をセアの顎に向けて突き上げた。

 



あたしの怒りだぁぁぁぁああああああああああああああッ!!」




 なんかアルジェナの分が1回多かったような気がするが……。

 まぁ、気のせいだろう。


 セアは体を引きずり、俺の脚にしがみついた。


「た、た、助けてくれぇえ……」


「今更、命乞いなんて都合が良すぎないか? 俺に自殺を要求した時は、謝っても許さないといっていたのにさ」


「あうううう……。こ、こんな怪我人に追い討ちをかけるのか? ひ、卑怯者め。や、やはりおまえは魔族だな」


 ふむ。


「それは褒め言葉だよ。俺は正義ではない。悪の支配者だ」


 そういってセアの襟首を掴んで持ち上げた。


「ひぃいいいいいいいい!!」


「しかしな。傷だらけの貴様を倒してもなんだかスッキリしないんだ。 最上級エキストラ 回復ヒール


「へ?」


「だから、回復させてやった」


「おおおおおお! き、傷がなくなったぞぉおおおお!!」


 ふむ。

 んじゃあ、心置きなく。





「飛んでいきな」





 俺の拳はセアの頬にめり込んだ。

 顎の骨は砕け、鼻血が飛び散る。





「ぶぎゃらぁああああああああああああああああああああああああああッ!!」





 勇者は遠くに飛んでいった。


 アルジェナは目を瞬かす。


「もしかして殺さなかったの?」


「そんなことでやつの罪は消えん」


「え?」


「セアは、武器屋の店主をはじめ、様々な人間から恨みを買っていた。その罪滅ぼしが必要なんだよ」


 俺の右手は青白く輝いていた。


「それは……? もしかして、勇者から奪ったの?」


「ああ」


 レベル6000の俺は様々な魔法が使えるんだ。

 その1つに能力を奪う魔法がある。

 それを使って、やつから奪った。


「これは『勇者の証』」


「へぇ……。じゃあ、あいつは普通の人間に戻ったんだ」


「そういうことになるな」


「セアが飛んでった方向って……もしかして?」


「ロントメルダ領さ」


 実はな。

 俺の計画には、まだ続きがあったんだ。

 さぁ、地獄の始まりだぞ。



────

次回、1章の終わりです!

コンテスト用の作品なので、1章までで判断していただこうと思います。

本来ならば次回で最終回だったのですが、みなさんのおかげで人気が出ております。

なので、2章も執筆することが決定しました! これもみなさんのおかげです。本当にありがとうございます!! 


いつもコメント、星とハートの応援、素敵なレビューありがとうございます!

コメント、レビューは全部読んでいますからね。めちゃくちゃ嬉しいです。

みなさんから元気をいただいておりますよ。本当にありがとうございます!


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