第26話 勇者は仲間を求める
〜〜ザウス視点〜〜
ついに勇者が魔公爵領に入った。
戦ったのはゴブ太郎だ。
「んーー。全然、強くなかったゴブ。もう少しのところでとどめを刺せたんゴブが、ペガサスの翼で逃げられちゃったゴブ」
「いや。それは考えにくい。おそらく、実際の力量差が出たんだろう」
「オイラたち下級モンスターはザウスさまみたいに相手のステータスを見れないゴブよ」
ゴブ太郎は最下級のゴブリン種からの進化だからな。レベルは340もあるが、相手のステータスを見ることはできないらしい。
つまり、勇者のレベルはそれ以下ということになるな。
もっと、勇者の実情を知れればいいんだが、スパイ役のスターサは体調不良が原因で仕事を辞めてしまったんだよな。
なので、勇者の内情を知ることができない。
ゴブ太郎の初戦を元に推測で語っていくしかないな。
「勇者は激弱ゴブ。ザウスさまが出る幕はないゴブよ」
「いや。念には念をだ。みんな、油断せずに戦ってくれ」
一度、王都に戻ったのなら、回復してから再び戻ってくるだろう。
その時には完全に決着をつけてやる。
通常のシナリオならば2人目の仲間をスカウトしているはずなんだ。
魔公爵ザウスは3人で構成される勇者パーティーに負けてしまうんだよな。
1人目の仲間は幼馴染のミシリィ。2人目の仲間は商人の美少女だ。
勇者の進撃は全力で阻止する。
勇者には主人公補正があるからな。
手は抜かない。侮ったりもしない。
石橋を叩くように、慎重に……。
☆
〜〜勇者セア視点〜〜
ゴブリンが強い……。
と、いうか、ゴブリンであのレベルなんで、他のモンスターも強い可能性がある。
ど、どうすればいいんだ?
僕のレベルは82。レベル99まではあと17だ。
最高値にすればあのゴブリンに勝てるかもしれない。
それに、やっぱり素手はまずいかもな。
強力な武器が欲しい。
しかし、
「か、金がない……」
『きわどい法衣』を買ってしまったから、所持金はゼロだ。これを売れば500コズンは手に入るだろうが、こんな金で買える剣が存在しない。
武器屋では手頃な武器が売り切れてしまっているんだ。
武器商人チンによって、竜砂鉄の剣も魔鋼の剣も買い占められているんだよな。
「クソが!」
魔鋼の剣よりも高い剣といえば退魔斬の剣になるが、これは5800コズンもするんだ。そんな大金を手にいれる術がない……。
「ううう……。金がなさすぎる」
「だったら商人を雇えばいいじゃないかしら?」
「商人?」
ターバンを頭に巻いたおっさんのイメージだな。
ああ、そんなむさいおっさんを雇う気力は僕にはないんだよ。
「宿屋の女将がいっていたんだけどね。今、この街に凄腕の商人たちが来てるんだって。なんでも商人ギルドから大勢の商人たちがメコンデルラに入ったそうよ」
「ははは……。凄腕ねぇ」
「中には戦闘力があって、金策ができる商人もいるって」
やれやれ。
「僕の勇者パーティーには、商人を仲間にするような余力はないんだよ」
「でも、お金が貯まれば強い武器が買えるわよ。それにペガサスの翼は使ってしまったから、また、買わないといけないしね。どちらにせよ、勇者パーティーにはお金が必要よ」
「うーーん。でもなぁ。余裕がないんだよね。仲間にするにしても給金すらも払えないじゃないか」
「きわどい法衣を売ればいいじゃない」
「そ、そ、そんなことができるもんか!」
こ、このエロい装備は魔公爵ザウスを倒してからのご褒美なんだからな。
清純な君には、このエロい装備を身につけてもらうよ。ゲヘヘヘ。
「と、とにかく、仲間は増やせないよ。僕のパーティーには余裕がないんだからね」
「そう……。それは残念ね。商人の中には可愛い女の子もいるって聞いているから、友達になりたかったんだけど」
「行こう!」
「え?」
「商人を仲間にするんだよ」
「……今さっき、余裕がないって?」
「バカだなぁ。余裕は作るものだよ!」
「い、今すぐ?」
「ああ、急ごう!」
「でも、無理はよくないんじゃないの? ゴブリンにやられた疲れが出てるかもだし」
「なにを呑気なことを! 君はバカなんだから、僕のいうとおりにしていればいいんだよ」
「……そう。じゃあ、セアを信じるね」
「うん! 頭のいい僕を信じてくれ!」
デヘヘヘェエエ。
美少女商人とか最高じゃないくぁああああああああああああああああああ!!
僕たちは商人ギルドに行った。
大きな建物の1階は酒場になっていて、自由に会話ができる。
みんなはそこで勧誘をしたり、商談をしたりするのだ。
「ほぉ。仲間を探しているでごんすか。その右手の甲にあるのは勇者の証でごんすな」
体長2メートルを超える巨漢が僕たちの会話に食いつく。
まるで戦士のような筋肉だ。
「では、おいどんが立候補するでごんすよ」
と、脇汗を拭いながら笑う。
いや、無理無理。
「悪いけど却下だな」
「え? なんで? この方は強そうよ? 大きな斧を使えるようだし」
やれやれ。
僕は彼女に耳打ちする。
「あのねぇ。あんなデカブツを仲間にしたら食費がバカにならないよ」
「じゃあ、食費がかからない感じがいいのね」
と、連れてきたのがヨボヨボのおじいさん。
「わしぃ〜〜。商人やって70年なんじゃ〜〜」
「却下だ」
たしかに、食費はかかりそうにないがな。
こんなジジィを仲間にして楽しい冒険ができるもんか。
そして、3人目にして現れたのが17歳の女の子だった。
それは褐色肌で銀髪。
大きなメガネをかけており、なかなかに特徴的だった。
特筆すべきはスレンダーな体にボヨヨンと付着された2つの爆乳であろうか。
「
喋り方も独特だな。
で、でもいいぞ!
笑顔がめちゃくちゃ可愛い!
なにより、おっぱいがボヨンボヨンと揺れているじゃないか!
たまらん! きわどい法衣を着てもらいたい!!
「君に決めた!」
「あーー。スカウトでっか? 悪いけどなぁ。
「なぜだ?」
「この界隈では凄腕の武器商人がおってなぁ。その人と組んでビジネスをすることになったんやわ」
武器商人?
「あーー、知りまへんか? チン・ピンインという商人なんやけどもなぁ」
チーーーーーーーーーーーン!
「羽振りがええ商人でなぁ。
「で、で、でも、あいつはモラルのモの字もないゲス野郎だよ!」
「そうなんでっか? そんな話は、商人界隈では聞いたことがありまへんけどな?」
「ぶ、武器を買い占めてやがるんだよぉおお!!」
「ははは。まぁ、その辺はビジネスやさかいな。武器屋の店主が許可を出しているんなら、それに従うしかありまへん」
クソがぁああああああああああああああ!!
「まぁまぁ、そう怒りなさんなって。どんな武器が欲しいんや?」
「剣だよ。竜砂鉄とか、魔鋼」
「ああ! それやったらチンさんから激安で譲り受けましたわ。良かったら
「なに!?」
怪我の功名か?
これはラッキーだ。
「竜砂鉄の剣はいくらなんだ!?」
「チンさんは優しい人でなぁ。激安で売ってくれるんやで」
「い、いくらなんだよ!?」
「んーー。そうやなぁ。
「おおおお! それはありがたい! で、いくらで売ってくれるんだ!?」
ロントメルダでは360コズンの剣だったからな。
格安なら最高だよ。
「3000コズンやな」
「ふざけんなぁああああああああああああああああああ!! どこが格安なんだよぉおおおお!?」
「
「ふざけんな! ロントメルダでは360コズンの剣だったんだぞ!」
「そりゃあ、在庫の状況にもよりますわ。品薄の人気商品は価格が跳ね上がりますんや。それに、運搬費用やらなんやらで、国をまたげば更に高騰するんは当たり前ですがな」
「そ、それにしても10倍は暴利だろうが!」
「
ううう。
クソがぁああああああ。
「ほんなら、魔鋼の剣はどうや? こっちは更に格安で売らしてもらうわ」
格安といってもな……。
竜砂鉄でこれじゃあ、とても聞けそうにない。
魔鋼の剣は、ロントメルダじゃ1000コズンの値段だったんだからな。
僕は聞くつもりはなかったが、このナンバという女は笑顔で値段を発表してきた。
「ジャーーーーン! 出血大サービスの3万コズンやーー!」
ふざけんなぁああああああああああああああああああ!!
とてもじゃないが、仲間は増やせない。
商人は諦めて次の行動に移ろうか。
「え!? 魔公爵領に行くの? 武器も仲間もないのに!?」
「戦いはしないさ。遠巻きに見るだけだよ。どうしても気になるからさ。偵察しようと思うんだ」
ゴブリンのステータスを確認しておきたい。
一体、なんレベルなんだろうか?
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