第23話 勇者の旅立ち
〜〜勇者セア視点〜〜
僕は勇者に認定された。
武器は手にいれることはできなかったが、この肉体さえあれば問題はないだろう。
その強さは筋金入りだ。
躍動する上腕二頭筋。輝く胸鎖乳突筋。
僕の筋肉は芸術の域に達しているよ。
この筋肉さえあれば武器なんて必要ないさ。
もう最強といっても過言ではないだろう。
しかし、仲間は必要か。
冒険といったら、やっぱり仲間だよな。
1人目は決まっているんだ。
グフフ。
仲間は可愛い子限定なのさ。
勇者パーティーはハーレムなんだ。デュフフ。
僕は故郷であるハジメ村に戻った。
村のみんなは生気のない顔で手を叩く。
その言葉には一切の抑揚がない。
「わーー。セアさまが勇者になられたおめでとーー」
「勇者セアさまのご帰還だーー」
「セアさま、勇者認定、おめでとうございます」
うむ。
教育の成果だな。
時には暴力も振るったが、厳しい叱咤は彼らを従順な村人に変えてくれたようだ。
やはり、勇者は敬うのは雑魚としては当然の態度だろう。
「君たちの平和は僕が守ってあげるからね!」
さて、雑魚を安心させたところで仲間だよ。
グフフ。
僕は幼馴染の美少女ミシリィを探した。
彼女も僕と同じ15歳だ。
今や、おっぱいはずいぶんと大きくなって、童顔なのにエロい体をしている。
輝く真っ白い肌。唇が艶っぽくて妙に色気があるんだ。
回復魔法が使える僧侶なので、1人目の仲間は彼女と決めていたんだよな。
ハーレム1人目だよ。グフフ。
あ、ミシリィ……。
「ゲヘヘ。いいだろミシリィ。もういい年なんだからよ。一緒に酒を飲もうぜ」
「や、やめてよ! 離して!!」
やれやれ。
村の不良か。成人した彼女を酒に誘っているわけだな。
それにしても強引だな。
これは『悪』と認定してもいいだろう。
「おい。彼女は嫌がっているじゃないか」
「ゲ! セアじゃねーーか!」
「セアさま、だ。おまえみたいな雑魚が僕のことを呼び捨てにするんじゃない」
「チィッ!」
おっと、逃げるつもりか。
そうはいかない。
僕はやつの頬を殴りつけた。
「ゲフゥウウウウウウ!!」
すかさず馬乗り。
そして、何回も顔を殴りつける。
「悪いことをしたら謝罪が必要だよな。え? おら。なんとかいえよ。おら。謝罪だよ」
「あぐ! あぐぐ……」
不良の鼻はぐちゃぐちゃになって、鼻血が飛散する。
少々、汚いがこれも悪の教育。彼が更生するためには必須行事なんだ。
僕は思いやりの強い優しい人間だから、たとえ、自分の拳が汚い血で汚れてもやらざるを得ないんだよな。はぁ、勇者って大変だよ。
ミシリィは叫んだ。
「やめて! そこまでするなんて酷いわ」
やれやれ。
「君は黙っていろよ。僕が君のことを助けたんだからさ」
「で、でも、そこまでやる必要はないじゃない」
「おいおい。誰に意見をしているんだい? 僕は勇者だよ? 悪を退治するのは僕の使命なのさ」
「も、もう十分でしょ!」
はぁ……。
まだ、ちょっと殴り足りないが仕方ないか。
「おい。聞こえてるか? 謝罪しろ」
「しゅ、しゅみばしぇんでした……」
「ああ……。そんな寝ながらじゃあダメなんだ。土下座だよ。土下座」
「セア! 私はそんなの求めてないって!」
「うるさいな。君に対してじゃないさ」
「え?」
「土下座は僕に対してだよ。僕に迷惑をかけたんだからね。さぁ、やれ」
不良は額を地面につけた。
「す、すいませんでした」
「よし。じゃあ、村長のところに行こうか」
ミシリィは眉を寄せる。
「え!? な、なんでよ!? もう謝ったじゃない!」
「こういう不良を野放しにしているのは監督者の責任さ。村長にも謝ってもらう」
僕は不良の首根っこを鷲掴みにして、引きづりながらも村長の家に行った。
「おお、これはセアさまじゃないか。私の家になんの用事です? 壺の中のアイテムはありませんよ?」
僕は出迎えた村長をビンタした。
「ヘブゥウウウ!」
「あなたの教育が行き届いていないから。こういう不良が生まれるんです。そのビンタは管理不行き届きの代償だと思え」
「ひいぃいいいい!!」
村長にことの経緯を伝える。
「さぁ、土下座しろ。僕に迷惑をかけた償いをするんだ」
村長はしっかりと土下座した。
たしか、今年で72歳だったと思うが、そんなジジィでも教育は必要だろう。
彼は唇から血を流しながら謝罪した。
「も、申し訳ありませんでした」
「よし」
僕は村長と不良を並べて、2人の耳元で囁く。
「僕の女に手を出したら、ただじゃおかないからな。次はぶっ殺すぞ」
「「 ひぃいいい! す、すいませんでしたぁああ! 」」
よし。
教育終了だ。
「じゃあ、ミシリィ行こうか」
「う、うん……」
「あ、そうそう。僕は勇者になったんだよ」
「お、おめでとう」
「ふふふ。1人目の仲間はミシリィって決まっていたからね」
「う、うん……」
「約束覚えている?」
「……お、覚えているわ」
「そっか。約束は絶対だよ? 僕は約束を破る人間は『悪』と見なすからね」
「う、うん」
「悪になったら、たとえ、幼馴染でも優しくはないよ?」
「う、うん」
「約束だよ。ふふふ」
「う、うん……」
彼女との約束。
それは魔公爵ザウスを倒した暁には、彼女の処女をもらうというもの。
デュフフフゥ。
僕の童貞は君に捧げるよ。ありがたく思うんだね。
君の艶やかな唇も、サラサラな髪の毛も、輝く白い肌も、大きくスライムのようなおっぱいも。
全部、僕のものだからな。
グフフフフフゥ。
ジュルリ……。ぬはぁあああ!
涎が止まらんわ!
「ね、ねぇセア」
「なんだい?」
「本当に魔公爵ザウスは悪者なのかしら?」
「はぁ? なにいってんだよ?」
「だって……。彼が魔公爵になってからこの界隈は平和だわ。奴隷狩りもなくなったし」
「おいおい。悪の擁護かよ。ザウスは魔公爵ゴォザックの息子だよ。悪に決まっているじゃないか」
「そ、そうなのかなぁ……?」
「モンスターを従えてさ。奴隷をこき使って私腹を肥やしているんだよ」
「…………」
「現に奴隷は解放されていないだろ? ゴォザックが奪った奴隷たちは今も助けを求めているのさ」
「う、うん……」
「ザウスは悪の親玉さ。まぁ、僕にしてみれば雑魚だけどね。雑魚討伐が勇者の使命なのさ」
「…………」
「さぁ、行こう! 悪の巣窟、魔公爵城へ! 悪を倒して世界を平和にするんだよ!」
「う、うん」
「正義の名の下に、楽しい冒険の始まりだ!」
そして、ザウスを倒した暁には、君の体は僕の物だよ。
デュフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ!!
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