第14話 2年が経過

〜〜セア視点〜〜


 師匠に鍛えてもらって2年が過ぎた。


 現在12歳。


 僕はずいぶんと強くなった。


 大剣使いの女、ゲバルゴンザさんのおかげだ。

 彼女は2メートルを超える女性で、全身が筋肉の塊だ。

 顔はゴリラに似ているが、それをいうと半殺しにされるので黙っている。

 僕はそんな彼女に鍛えられて、筋肉ムキムキになった。


 まぁ、はじめは嫌悪感があったけれど、このパワーなら悪くない。

 僕は最強の存在になっているかもしれない。


 レベルは50に到達した。


 この強さならば、無限ダンジョンレベル2を探索することができるだろう。


 レベル1の無限ダンジョンはアイテムが空っぽだったからな。


 レベル2のダンジョンに入って集めてやればいい。


「じゃあ、師匠行ってきます」


あたいも付いてってやろうか?」


「いえ。それじゃあ、修行になりませんよ。それに、この筋肉ですからね。モンスターは雑魚です」


「ふっ。サイドチェストのポーズが板についてるじゃないか」


「ははは。鍛えられましたからね」


 と、今度はダブルバイセップス。

 両腕を上げて曲げることで、上腕二頭筋がしっかりと強調される。


「やれやれ。まだまだ甘ちゃんの筋肉だけどねぇ」


 と、師匠はモスト・マスキュラー。

 すかさず僕はアドミナブル・アンド・サイで応えた。


 僕たちの筋肉は輝いている。

 無敵だ。


「では、行ってまいります」


 いい加減、装備品が欲しいんだ。

 筋肉だけじゃあ、立派な勇者になれないからな。


 この肉体に強力な装備が加われれば更に強さが増すだろう。

 格好良さもひとしおさ。


 僕は無限ダンジョンレベル2に入った。


 ここはモンスターが無限に湧き出るダンジョンになっている。


 数千年前に魔王が魔力で作った場所のようだ。


 そこには108個の宝物があって、中には貴重なアイテムが眠っている。


 潜入するなら推奨レベルは決まっていて、レベル1なら30未満。レベル2なら40未満だ。

 それだけダンジョンのレベルが上がれば中に強力なモンスターがいる証拠になる。


 入るやいなや、僕に向かってモンスターが襲ってきた。


「ふん! 雑魚が!!」


 と、腕力で一掃する。


 この鍛え上げられたボディにはレベル40未満のモンスターなんか雑魚だよ。」


 そして、1つ目の宝箱へと到達した。


「ふは! 見つけたぞ」


 僕はワクワクしながら宝箱の蓋を開けた。


 しかし、


「ない!! 空っぽだ!!」


 そんなバカな!?

 レベル1の無限ダンジョンに入った時と同じパターンだぞ。


 ……いや、待てよ。

 1個目は空で2個目からはあるというパターンも考えられるか。


 しかし、そんな期待も裏切られる。


「クソ! 2個目の宝箱も空だ!!」


 クソがぁあああ!!

 

 そのあとも同じだった。


 3個目、4個目、5個……10個。


「ぜ、全部空っぽだ……。どうなっているんだ!? ダンジョン内にアイテムが存在しないだとぉおお!?」


 クソがぁあああああああ!!

 どういうことなんだぁああああああああ!?


 先行者がいるのか!?

 いったい誰なんだぁあああああ!?



〜〜ザウス視点〜〜


 メエエルは賞状とトロフィーを持ってきた。


「今月はゴブ太郎がザウスポイントの最高獲得者です」


「うむ」


 無限ダンジョンはレベル3を攻略したところだ。

 次はレベル4に突入する。

 この調子でアイテムを奪えば、主人公にアイテムが渡ることはないだろう。


 加えて、スパイの活動も徹底させる。


「一般の民家から薬草を盗むのですか?」


 と、スターサは目を瞬かす。


「盗むというのは聞こえが悪い。こっそり買い付けることにしてくれ」


 そういって金貨を渡した。


 俺は村の地図を見せながら説明する。


「ここと、こことここ。ハジメ村には3つの薬草が民家の壺に入っている」


 はじめて獲ったアイテムの場所はよく覚えているよな。

 壺に向かってAボタンを押すだけ。それだけでアイテムがあれば獲ってくれるんだ。

 だから、民家に入っては壺に向かってAボタンを連打したっけ。


「民家の壺に薬草が入っているから、金貨を置いてその薬草をこっそり買ってきてくれ」


「薬草で金貨は高くないですか?」


「まぁ、こっそり買うからな。その辺はサービスしてやろう」


「えーーと……。その家主から直接買ってはいけないのですか?」


「それだと補充される可能性があるからな。壺を空にするのが目的なのさ。それも秘密裏にな」


「なるほどぉ……」


「こんなことはハジメ村に自由に入れるスターサにしか頼めないのだができそうか?」


「で、できます! こっそり薬草を買うくらい余裕です!」


「うむ。助かるよ」


「あはぁあ!! ザウスさまのためならなんだってやります!! なんでもおっしゃってください!」


「よし。薬草をとってきたら褒美をやろう。なにがいい?」


「え? あ、あのぉ……」


 と、体をくねらせた。

 この反応はモンスターと同じだな。


「頭をなでなでして欲しいのか?」


「は、はい……」


 そういって全身を熱らせた。


 やれやれ。

 こんなことが褒美になるんだから安いもんだ。


「わかった。必ずやってやる」


「あは! がんばりますね! 行ってまいります!!」


 よし。

 この調子でアイテムを没収するぞ。

 主人公の周囲からは一切アイテムが取得できないようにしてやるんだ。


 ハジメ村と王都の中にあるアイテムの場所はすべて把握しているからな。

 全部、買い取ってやる。

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