第9話 無限ダンジョン攻略
魔公爵ギルドの運営は順調だった。
ランキング形式でモンスターを競わせること、順位に応じて報酬を与えること。
それらは思いのほか功を奏したのだ。
モンスターたちの成長はすさまじい。
1週間で1つしか上がらなかったレベルが、たった1日で3つも上がってしまったのだ。
これはすごい成長度合いである。
メエエルは一覧表をくれた。
「ザウスさま。今月の順位が発表されました」
「おう。1位がトロフィーと賞状。2位が賞状だけ。3位が頭をなでなでだったな」
もちろん、1位と2位にもなでなではついている。
部下モンスターにとって、頭なでなでは最高のご褒美らしい。
「よくがんばった」
「へへへ。あ、ありがとうございますゴブゥ」
ゴブリンはみんなが羨望の眼差しで見つめる中、俺に頭をなでられて至福の状態だった。
周囲からは「いいなぁ」「羨ましい」「来月こそは3位に入るぞ!」と声が聞こえる。
なでなで効果はばつぐんだよ。
「ザウスさま。レベル1の無限ダンジョンから108個のアイテムが揃いました」
早いな。攻略情報がないのにもうコンプか。
やっぱりモンスターに競わせるとあっという間だ。
なにせ、みんなはゲーム感覚でダンジョンを探索するからな。楽しいは正義だよ。
しかし、揃ったアイテムはしょぼいな。
薬草に毒消し草。棍棒に革の盾か。
まだ序盤のダンジョンだからアイテムのレベルが低いんだ。
「これで、このダンジョンにはアイテムがない状態ですね。モンスターは無限に生成されますが、設置された宝箱は空です。探索の楽しみは減ってしまうかもしれませんね」
そうなると、部下に探索させるのは次のダンジョン……。レベル2か。
ここならアイテムのレベルも上がるし、育成にも最適。
たしか、推奨攻略レベルは20前後だったよな。
「一番、レベルの高いモンスターでどれくらいなんだ?」
「少々お待ちください」
といって、メエエルは名簿に目を通す。
「1位を獲得したゴブリンのゴブ丸がレベル32ですね。どうやら彼がトップのようです」
「全体の平均は?」
「20前後といったところでしょうか」
ふむ。
それならレベル2の無限ダンジョンにいけるか。
でも、
「ルールを設けようか。レベル2の無限ダンジョンに入るのはレベル30を超えた者だけだ」
念には念をだ。
「いいか。絶対に無理しちゃダメだぞ。大きな負傷は死につながる。俺は大きな事故だけは絶対に許さないからな」
モンスターたちは震えた。
「ふはぁああ……。ザウスさま優しいゴブゥウウ」
「オラたちのことを想ってくれてるブゥ」
「やっぱりザウスさまが大好きハピィ」
「ザウスさまラブスラァ」
やれやれ。
なにか勘違いをしているな。
おまえらのことなんかどうでもいいんだ。
おまえらは貴重な戦力。勇者討伐の要なんだよ。
そんな戦力を訓練で減らしては圧倒的に非効率なんだ。
なにごとも効率的なのが一番なのさ。
「死亡率ゼロ! これが魔公爵ギルドの目標だ! わかったか!?」
「一生ついていきますゴブ!」
「ザウスさまのためならどこまでも行くブゥ!」
「ザウスさま万歳!」
「ザウスさま、てぇてぇ。てぇてぇハピィ!」
でも、これで部下モンスターの育成は捗るな。
次は俺のステータスを上げるか。
「アルジェナ。部下モンスターはギルドに任せて俺たちは2人だけで訓練しよう」
「え? ふ、2人だけで!?」
「ああ。おまえの剣技をみっちり俺に教えてくれ」
ふふふ。
これで俺が強くなれば更に盤石だ。
「ふ、ふた……2人きり……。ふた、ふた、ふた……」
「なにを真っ赤にしてんだよ? 風邪か?」
「風邪じゃないわよ!」
俺の今のレベルは25だ。
これをもっと上げてやる。
「け、け、剣技の特訓なんだからね! そ、それ以外のことはないんだからね! 勘違いしないでよね!」
「はぁ?」
そうだ。
せっかくアルジェナが専属のコーチになるんだから、こういうのはどうだろうか?
「俺にブレイブスラッシュを教えてくれ」
「……ど、どうして、魔公爵のあんたが
「それだけおまえの腕が有名ってことだろう」
「……秘剣なんだけど?」
「まぁ、俺は魔公爵だからな。情報網はそれなりにあるのさ」
ふふふ。これはゲームで知った。
ブレイブスラッシュは中ボスを倒した勇者セアが師匠から譲り受ける剣技なんだ。
魔王討伐でも中心になる技。
それを中ボスである俺が習う。
習得できるかは謎だがな。やってみる価値はあるさ。
☆
〜〜勇者セア視点〜〜
強くなりたい。
そのためには師匠が必要だ。
僕に剣技を教えてくれる強い存在が。
しかし、魔神狩りのアルジェナには会えなかった。
こうなったら地力で強くなるしかない。
自分で育成メニューを作ってとことんまでやってやる。
僕はダンジョンの入り口に来ていた。
「ふふふ。レベル1の無限ダンジョン。ここなら僕でもなんとか探索できるはずだ」
モンスターを倒してレベルを上げる。
そして、アイテムをゲットして強化するんだ。
しかし、
「ない! 宝箱が空っぽだ!? なんで!? どうして!?」
どういうことだ??
このダンジョンには村人は近づかないはず。
ここは、モンスターが無限に湧き出る危険なダンジョンとして有名なんだ。
だから、絶対に誰かが入ったりすることはない。入るならば勇者になる予定のこの僕だけなんだ。
それなのにアイテムがないってどういうことだ!?
「そうか。ダミーだ!」
ダミーの宝箱。
そう考えるのが自然だ。
ふ。甘いな。
僕を騙そうったってそうはいかないぞ。
「あ、宝箱!」
ふふふ。今度こそ……。
「ない! ここも空っぽだ!! どうして!?」
それから宝箱を見つけるも、
「ない! ない!! 全部空だ!!」
どういうことだ!?
宝箱が全部、空だとぉおおおお!?
「クッソォオオオオ!! 誰が奪ったんだぁああああああああ!?」
ここのアイテムは僕が手にいれるはずだったのにぃいいいいいい!!
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