第18話 嫉妬


「ただいま」

「戻ったぞ。見張りはナタリーの番か」

「おかえり。もうみんな休んでいるよ」


 帰ってくると、既に仲間達は交代で休んでいた。そしてタイミング良く、イアンの想い人が見張りだった。偶然なのか、気を利かせたのか……


「ティアラはキーラといつも通りセットでね。でも、たまには私もティアラと一緒に寝た~い」

「ティアラに直接お願いしてみたらどうかな?」


 女性二人にモテモテのティアラ。方や先生、方やお姉ちゃん、どっちもメロメロだ。そんなに一緒に休みたいのであれば、直接聞けば良いのでは?とアベルはいうが、


「キーラが邪魔する~ナタリーお姉ちゃんもティアラを愛でたいのに~イアンからもリーダーとしてキーラに言ってよ」

「ははは、それは女性達で相談してくれ。俺の領分じゃないさ」


そこでナタリーの肩を持つのも違うだろうと思い、女性達に丸投げするイアン。合理的に考えれば、師弟が寝食を共にするのは理に適っているのだが、愛でたい気持ちが先走るナタリー。


「ブゥ~~~。所でアベル、イアンは大丈夫だった?」

「なんで俺だけなんだよ?ナタリー」

「まあ、大丈夫だったんじゃないかな?」


 少し考える素振りをして質問に答えるアベル。しかし、ここからが面倒臭かった……


「ふ~ん。なんかイアンは商隊のお嬢さんと話してたみたいじゃない?しかも二人きりで」

「そ、それはアベルとタベルさんが話すのに、席を外しただけだ。そ、それに女の子が夜に野外で一人っていうのも心配だからな。護衛についていただけだ。本当だ」

「ふ~~~ん」

「いや、だから、その……」

「邪魔者の俺は先に休ませてもらうな」


 邪魔にならないよう、二人だけの時間を取れるようにと、その場から離れたアベル。そう、イアンはナタリーに惚れている。それを昔から聞かされ知っていたアベルは気を利かせた。


「おい、アベル!」

「おやすみ~」

「二人共、余り騒ぐなよ」


 助けてくれと顔に書いてあるイアンを無視し、周りへの配慮を注意してからテントに入っる。


(フゥー、とりあえず色々ありすぎて疲れたな……)


 横になり毛布に包まって一息つくと、アベルは直ぐに眠りに落ちた。

 しかし外では二人の会話はヒートアップ。


「だから、言い寄ってきたけど断ったんだよ」

「どうだか?うちのリーダーは随分と、おモテになるんですね~」

「勘弁してくれよ。俺には心に決めた人がいるって、ちゃんと彼女にも伝えたんだからさ」

「…………」

「もちろん、ナタリーのことだぞ」

「し、仕事中は、そ、その話は無しって、や、約束なのに……ズルいよ……」

「ナタリーが言い出したことだろう?」

「フン、まぁいいわ、許して上げる」

「ありがとう?」

「なんで疑問形なのよ!」

――バチン

「いったぁ~~~本当に勘弁してくれよ」


 ナタリーもイアンが嫌いではないらしい。しかしいくら仕事中とはいえ、よく知らない女性と、深夜に二人きりで会うのを目撃してしまうと、色々と思うこともあるのだろう。

 仕事だから仕方がないはずなのに、以前は嫉妬心など無いにも等しかったはずなのに、と本人も戸惑いながらも不安を言わずにはいられない。

 

 この依頼を受ける前、イアンから告白されその場で返事を返せなかったナタリー。仲間として好きなライクなのか?男として好きなラブなのか?

 この言動からして後者なのは明らかだ。他から見れば言動が恋する乙女のそれなのだから。

 そんな恋人達のよくある試練を受け、言い争う二人。離れる人もいれば、絆が強くなる人もいるだろう。 

 負けるなイアン。頑張れイアン。その思いが叶うまで。


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