第17話 想い
ジョゼが残念そうに、イアンが疲労困憊でテントへと帰ってきた。
「「おかえり」」
「お父様、駄目でしたわ……」
「はっはっはっ、そうだろうね」
ジョゼが報告してくるが、それを笑って受け流すタベル。いつものやり取りだ。婚期を焦る娘に宥める父親。仲が良い親子だが、父は娘の恋愛には口を挟まず見守っているようだ。
「治癒士様、お待たせして申し訳ございません」
「はっはっはっ、もう芝居はいいんだよイアン。タベルさんは古い知り合いだったんだ。信頼出来る。もう全部正直に話したよ。いつも通りの口調で頼むよ」
「えっ!マジかよ~」
「そうなんですの?」
謝るイアンに正直に話すアベル。怪しい商人は、蓋を開けてみれば、アベルを心配してイアンがどういう人間か警戒していたという。テントからは待っていた二人の笑い声と、帰ってきた二人の驚きの声が漏れた。
「しかし、盗賊刈りのイアン殿だったとは」
「お父様なんですか?盗賊刈りって?」
「彼の二つ名ですよジョゼさん」
「やめて下さいタバルさん。アベルもやめろ」
「「はっはっはっ」」
それからは、打ち解け合って気軽に話せる仲となった。今だイアンを見るジョゼの視線には熱が籠もるが、皆それをスルーし談笑した。
「遅くまでお邪魔してすいません。それじゃ俺達はこれで」
「二人共、護衛達にはアベルの名前は漏らさないようにお願いしますね」
「わかっておりますとも」
「はい、もちろんです」
テントを後にし、皆の場所に戻るという、
「モテモテだなイアン」
「うるさい、いい子だが余りグイグイこられてもな~」
「でも、断ったんだろ?」
「もちろん!俺は一途だからな」
「その割には進展してなさそうだが」
「そうなんだよなぁ~でも、もうそろそろケリをつけるつもりだ」
「そのセリフ、前にも聞いたぞ?」
「いやいや、思いを伝えようと休みを取ったらギルマスに呼び出されたんだよ」
「あっ!なんかすまん……」
「いいって、そういう意味じゃない。想いは伝えることが出来たが、時間をくれって言われたから。待つだけだ……」
「他の二人はなんて?」
「頑張れってさ」
「まぁ、我慢のしどころだな」
「だな。アベルはどうなんだ?」
「なっ、なにがだ?」
「フッ、いや、なんでもねえよ」
男女混合パーティーではよくある話だ。それを昔からイアンに事あるごとに聞かされていたアベル。最後にお前はとイアンに聞かれ焦ってしまう。それを鼻で笑いながらも問い詰めない。二人の距離感は心地良いものだった。
その時、頭に浮かんだ彼女の下に帰るのだから意識させないでほしいと思いながらも、アベルの帰る足取りが早くなった気がしたイアンだった。
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