第11話 人助け


 「うわ〜本当に色々とある〜♪なに作ろうかなぁ?あっ!この機材古いけどいつも使っていたやつより高級たぁ〜、えっ!マンドラゴラまで入ってる。これって中々手に入らないんだけど凄い、凄いわ!」


ティアラは魔法袋から出した機材や材料でテンション爆上がり中。最初は微笑ましく見ていたアベルも少し引いてしまう熱量になってきた。


「で、今日は調合するのか?」

「あっ!ごめんなさい。今日は取りあえず中身の確認だけになりそうです。こんなに多くの種類や数が入っているなんて思っても見なかったので……」


アベルの声に我に返ったティアラ。想像以上の量だったため、中身を把握することで手一杯らしい。


「アベルは凄いんですね!こんなにも冒険者の皆さんに慕われていて」

「慕われていたかは判らないけど、なんだかんだと仲良くはやっていたと思うよ」

「私は全く交流が持てなかったので羨ましいです……」

「これからじゃないか?もうキーラやナタリーとは繫がりが出来た訳だし仲良くなったんじゃないか?」

「そうですね、キーラ先生やナタリー姉には良くしてもらってますね」

「慣れたらそのうちイアンやジャックとも話せるといいな」

「そ、そうですね……頑張ります!」


言葉に詰まった後、両手でガッツポーズをとるティアラ。それを微笑ましくも無理はしないでほしいと心配するが口には出さないアベル。

男性二人とは、流石に段階を踏まないと無理なようだ。少しおちゃらけた感じのイアンと、寡黙で大柄なジャック。確かに女性は警戒するし恐れるだろう。

なら、なぜ俺とは?と疑問に思うが考えても仕方がないと流し、ティアラの手伝いを続けるアベル。結局その日は二人で遅くまで、アイテムの把握で終わり翌朝を迎えた。

 それから何事もなく二日が過ぎ三日目の朝。


「それにしても順調で嬉しい限りだ。天気も良いし、魔物や魔獣の群とも出くわさずここまでこれたのも珍しいな」

「イアン、普段から馬鹿だとは思ってたけどここまでとは……」

「なんだよ、ナタリー?失礼なやつだな!」

「本当に呆れる……」

「ジャックまで?どういうことだ?」

「はぁ〜〜〜」

「キーラさんはため息だけですか……」


随分と朝から騒がしい冒険者達。アベルは仲がいいなと眺め、ティアラは喧嘩?と少し焦ったようすだ。


「本当にわからないのなら教えてあげるわ。そういう事をいうと、逆に何かしら起こってしまうものなのよ。わかる?」

「あっ!なるほど。あの無事に街に帰ったら彼女と、ってやつだろ?知ってる知ってる」

「それで無事に帰れる人って少ないのよ」

「そんなのたまたまだろ?」

「「「はぁ〜〜〜」」」

「大丈夫だって!」


しかしイアンの大丈夫は案の定当てにならなかった。

小高い丘を超えた瞬間、街道で襲われている馬車と遭遇してしまう。盗賊のたぐいだろう。するとイアンは直ぐに指事を出した。


「お嬢さんはキーラと一緒にいろ。アベル、二人を頼めるか?」

「わかった、なるべく早く帰ってきてくれ」

「ジャック、ナタリー、助けに入るぞ」

「おう」

「はーい」


ジャックが先頭で縦にれつをつくり突っ込んていく三人。


「なんだ、なんだ?」

「獲物が増えたぞ」

「おい、冒険者達。無理に関わると後悔するぞ」

「俺達に触ると火傷するぜ、へっへっへっ」


 馬車の護衛達も必死に抵抗しているが、やられて怪我人が多く戦力が減っていく。大勢に無勢の中、余裕を見せる盗賊達。ジャックに軽口を叩く余裕まで見せる。しかし、


「キーラ、たのむ」

「ティアラ、私の魔力の流れを感じ取ってね」

「はい、キーラ先生」

(先生頑張っちゃう♪)

「ははは……」


丘の上でティアラ包むように抱きしめ、魔力を練るキーラ。イアンから声がかかっているのにも関わらず余裕の、いや、先生と言う言葉に酔っている。親切丁寧な指導はティアラの受けも良く、この機会に戦闘でも良いところを見せたいらしい。二人の前に剣を構え護衛につくアベルは、振り返りはしないが、会話を耳にし呆れていた。


「ウインドカッター」

――ザシュ、ザシュ、ザシュ

「うあっ!」

「いってぇ〜よ〜」

「くそっ、魔法使いか!」


羽根ペンのような短い杖を構え唱えると、軽口を叩いていた盗賊達の腕や足を切り刻んだ。


「助太刀するぜ」

「か、感謝する」


護衛に声をかけ疾走しながら、戦闘不能になるよう腕や足の筋を狙って切りつけていくイアンとナタリー

ジャックは馬車を背にして、護衛達と一緒に守りに徹する。中から叫び声がするということは、間に合ったらしい。


「アースフォール」

「キーラ、助かる」


キーラも馬車を土魔法で三方向囲い、ジャックを先頭に唯一の入口を壁を作る。


「おい、先ずはあの魔法使い達から片付けるぞ」

「「へい」」


未だ戦意が残っている盗賊達数人が、キーラ達を狙い丘を駆け上がってきた。


「格好の的ね。死になさい、ロックバレット」

「うぁ〜〜〜」

――パンッ

「……………」

高速で放たれた岩が回転しながら一人の頭に着弾すると、首から上が弾け飛ぶ。キーラは、しまった!やり過ぎた。と思い抱いているティアラを見下ろすと、


「先生どうなりました?」

「キーラ、やり過ぎ」

「ごめんね、えへ♪」


アベルが目隠しとなり、ティアラに見せないように立ち位置を変えていた。しかし人の頭をふっ飛ばして えへ♪ は無いと思うが悪いのは向こうなので自業自得だろう。


「く、くそっ……」

「足が止まってるぜ」

――ザシュ、ザシュ

「いつの間に!ぐぉ〜〜〜」


ロックバレットの威力に足が竦んだ所を、気配を消して近づいたレオン。背後から膝裏を筋を斬りつけると一人、また一人と、盗賊達はうめき声を上げながらその場に倒れ込む。


「もう大丈夫だな。アレン、怪我人の手当を頼めるか?」

「任せろ、そっちが本職だ」

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