132.狩りがしたいニワトリスたちと、少しは自重してもらいたい俺

 羅羅ルオルオの背に乗っていけば、キタニシ町の外にもすぐに出られる。

 畑は町の南西にあったから、そっちには行かない方がいいだろう。(西側と南側にも外に出られる門はある)

 今日は昨日入ってきた北側の門から外へ出ることにした。シロちゃんもクロちゃんもうきうきである。羅羅の上で身体が揺れているからご機嫌だということがわかるのだ。

 町の外でごはんを食べるつもりなんだけどなぁ。絶対これ、狩りに行くつもりだよね。

 つっても羅羅の上に乗ったまま話すことは難しいからドナドナされるだけなんだけどさ。

 門を出る時に羅羅が足を止めたので、


「出たらまずはごはんにしよう!」


 と伝えることができた。狩りはー……もうその話は後だ、後!

 門番が苦笑しながら出してくれた。この町の人なら出入りに金はかからないけど、そうでないと普通は出入りに金がかかるのだが、冒険者は一度お金を払えば一定期間何度でも出入りは自由になる。

 俺は冒険者証の出身地がキタキタ町になっているからキタキタ町の出入りは自由だ。そして別の町へ移動してからの出入りについてどうやって門番が判別するのかといえば、冒険者証にお金を払ったかどうか記載されるからそれをチェックしてもらえばいい。とはいえ俺たちは一度見たら忘れらなかったらしく、顔パスで出してもらえた。まぁ普通青虎とニワトリスを連れてる奴はなかなかいないだろうな、うん。

 で、町を出て羅羅には少し走ってもらい森の中に入った。


「おなかすいたー。ごはんにしよ? 羅羅、竈作ってー」

「うむ」


 羅羅に土魔法で竈を作ってもらう。その間に従魔たちのごはんを用意した。

 今日のごはんはジャイアントモールの肉だ。せっかく解体してもらったんだから出さないとな。

 元の世界だと解体してから一日ないし二日は置いた方が肉の味が落ち着いておいしかったのだと思うが、こちらの世界の魔物は違う。解体してすぐに食べてもおいしい。俺はアイテムボックスに入れているから時間経過もないけど、普通においしい。


「オトカ、私が調理しよう」

「あ、じゃあお願いします」


 肉を渡してシュワイさんに焼いてもらうことにした。

 その間に取っておいてあるシロちゃんとクロちゃんの卵を目玉焼きにした。毒のある食材については別のフライパンで焼いた。ピーちゃんは火が通ってても好きみたいだ。ニワトリスたちは毒草も毒キノコも生が好きらしい。好みって面白いよな。

 そうして外で食べるとは思えないほど豪華な料理ができた。

 肉はシュワイさんが焼いてくれたジャイアントモールのステーキにシロちゃんクロちゃんの卵で焼いた目玉焼きを乗せ、他に野草でスープも作った。パンは前に買ったのがアイテムボックスに入っているのでそれを出して……。


「いただきます!」


 ジャイアントモールのステーキ、うまい。


「ホテルの料理長に焼いてもらった方がうまいかもしれないな」


 シュワイさんがぼそっと呟いた。


「すんごくおいしいですよ? 俺が焼いてもこんなにうまく焼けませんし」

「オトカはもう少し丁寧にした方がいい」

「ええー……面倒くさいですー」

「私と一緒にいるのだから私が調理すればいいだけだ」


 さらりとそんなことを言うシュワイさんて、ホント男前だなと思う。顔がいいだけではない。

 昼飯をしっかり食べ終えた羅羅とシロちゃんはそわそわしていた。……どんだけ狩りに行きたいんだよ?

 浄化魔法をかけて鍋や食器を片付けたらもうシロちゃんは黙っていなかった。


「カルー」

「……何をどう狩ってくるつもりなんだよ? いくらなんでも狩りつくしちゃだめだろ?」


 許可を出したらまた一日じゃ解体しきれないほどの獲物を狩ってきそうだから心配なのだ。


「私が共に行けばいいだろう?」

「……えー? シュワイさんも羅羅とシロちゃんに甘いからなー。って、いてっ!」


 シロちゃんにつんつんとつつかれてしまった。


「こーら、つついちゃだめだろっ!」


 間違ったことは言ってないし。バッと抱きしめてもふもふする。セクハラと言うなかれ。つつかれないように阻止しているだけである。うー、シロちゃんもふもふで気持ちいい!(←おまわりさんこっちです)


「カルー!」

「えーい、三頭まで!」

「ヤダー!」

「あんまり狩っても食べきれないでしょっ! ほどほどにしなさーい!」


 シロちゃんがいやいやをするように頭を振った。くそう、かわいい!


「……オトカ、数を決めないで時間で決めたらどうだろうか? 暗くなる前には戻ってくるから」


 シュワイさんに聞かれてため息をついた。


「その間に何頭狩ってくるつもりなんですか? すでに食べきれないぐらい魔物の肉を持ってるのに」

「うっ……だ、だが狩れない場所もあるだろう?」

「……そうかもしれませんけどー……」


 なんだかんだ言ってシュワイさんはうちの子たちに甘いのだ。


「……じゃあ、夕方までですよ? 俺はここで薬草とか採って待ってますから」

「カルー!」


 シロちゃんを放すとシロちゃんは俺から離れて尾をぶんぶん振った。気合十分である。つーか、気合入りすぎ。その尾っぽ、危ない。


「うむ、では参りましょうぞ」

「行ってくる」

「はーい」


 シロちゃん、羅羅、シュワイさんが森の奥へと駆けて行った。なんかすっごく楽しそうなんだよなぁ。

 クロちゃんは当たり前のように俺の側にいる。ピーちゃんは近くの木に停まって、毛づくろいしていた。相変わらずマイペースだ。


「クロちゃんは行かなくてよかったの?」

「オトカー!」

「ありがと」


 クロちゃんを抱きしめてもふもふさせてもらってから、クロちゃん、ピーちゃんに手伝ってもらい、食べられる草や毒草、きのこなどを採取したのだった。


次の更新は、7日(月)の予定です。

私生活の関係でもしかしたら一時的に更新が止まる可能性があります。その時はよろしくお願いします。


誤字脱字についてはこちらをご確認くださいませ

https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16818093081582887529

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