131.活躍するニワトリスたちと、精神的に疲れた俺
やっと真ん中の畑でモールの駆除を開始する。
シュワイさんとピーちゃんには端で待っててもらう。モール程度ならシュワイさんに手伝ってもらう必要はないし。
むしろ最近俺が運動不足だから、これぐらいやらないとまずい。羅羅、シロちゃん、クロちゃんと区画を四か所に分けていざ!
神経を研ぎ澄ませたら、そこかしこにいるわいるわでため息をつきそうになった。
よくまぁこんなに増えたもんだっ、とっ!
ちょうど足の下、土の中を動いているのがわかったから包丁をズンッ! と突き入れる。体重を乗せて突き入れれば腰鉈でも倒せる。そうして粛々と作業を続けた。
「……うん?」
なんかでかい反応があるな? と思った時にはシロちゃんが駆けてきたから俺も誘導するように包丁を土に突き入れる。それでたまらんと思ったのか、土中からジャイアントモールが飛び出てきた。
こんなのがいたんじゃ増えるわけだよなー。(因果関係は知らない。あくまで俺のイメージだ)
シロちゃんが俺に当たらないように跳び蹴りを放つ。
バーンッ! と派手な音がして、ジャイアントモールはかなり飛んだ。それをシロちゃんが追いかけていってトドメを刺した。
クァアアアアーーーッッ!! と雄叫びを上げる。
うん、シロちゃんは強いよなー。
と、まぁジャイアントモールも一匹いたが無事真ん中の畑のモールは全て駆除できた。
しめて43匹。
……すごい数だな。
さすがにどケチおじさんとその息子さんは絶句していた。
でもどケチおじさんは早めに復活した。
「ジャ、ジャイアントモールでも一匹は一匹だからな!」
「えっと、ジャイアントモールはこちらで回収するのでジャイアントモールの分はいりませんよ」
普通のモールはいらないけどジャイアントモールはちょっとほしい。でもごねられたら回収しない。面倒くさいし。
「それなら、42匹分だな? それ以上は払わんぞ!」
どうやら銅貨一枚も惜しいみたいだ。ジャイアントモールおいしいのになぁ。言わないけど。(俺も大概性格が悪い)
「じゃあこれにサインをお願いします」
依頼完了の札にサインしてもらってほっとした。
「おい、このモールの山はどうするんだ?」
「それはそちらで食べるなりなんなりしてください。僕たちはいらないので」
土に埋めるなりして処理してほしい。うまくすれば小さい魔石が取れるんじゃないかなと思う。
「処理はせんのか?」
「ギルドで受けたのはモール駆除までですからね。処分はまた別途依頼してください。一匹辺りいくらで」
イカワさんはまだいたらしく、うさんくさい笑みを浮かべてそうどケチおじさんに伝えた。
「……金、金、金と……どこまでお前らはがめついんだ!」
その言葉そっくりおじさんに返したいかなー。
俺の側に戻ってきた羅羅、シロちゃん、クロちゃんに浄化魔法をかけてなでなでする。みんな相変わらずすごい勢いで狩るんだもんなー。とてもかなわないよ。
「……ですが、モールも魔物ですからね。うまくすれば魔石が取れる個体もいるかもしれませんよ?」
イカワさんがそう言うと、おじさんと息子さんは顔を見合わせた。
「まぁ、いないかもしれませんが……」
「ありがとうございました! 助かりました!」
息子さんがそう言って、俺たちに手を振った。これから急いでモールを解体するのだろう。
「オトカ、ギルドへ戻ろう」
シュワイさんに言われて頷いた。他の畑を見れば、まだみんな作業している。がんばってほしいと思った。
「では私も戻ろうかな」
イカワさんも戻るらしい。そういえばここに来たらすぐに戻るようなこと言ってたもんな。
ってことで周りの畑で作業している冒険者たちには一声かけて戻ることにした。羅羅の上に乗せられることは……もうそういうものだと割り切れ、俺。
で、無事ギルドについて依頼完了の札を出して受理してもらった。これであのどケチおじさんが何か言ってきたとしてもギルドで処理してもらえる。
思わずはーっとため息を吐いた。
ああいうの、割り切ったつもりだけど対応するのきっついな。
「オトカ、お疲れ様」
シュワイさんに声をかけられて、ちょっと恥ずかしくなった。中身は43歳+αのおっさんなのに情けない。
「……ありがとうございます」
いてくれるだけで助かるよな。
「キルー!」
シロちゃんが騒ぎ出した。そういえばジャイアントモールを回収してきていたんだった。
「あ、そうだよね。解体してもらおっか」
「モラウー!」
「はいはい」
「ジャイアントモールは食べたことがないんだが、うまいのかな?」
まだ二階に上がっていなかったイカワさんに聞かれた。ギルド長ってヒマじゃないはずだよね?
「ええまぁ。ディアーほどはおいしくないですけど、それなりですよ」
「……ほほう。少し買い取らせてもらうことはできないかな? 一人前ぐらい」
何故かガタタッと音がした。なんだろうとそちらを見れば、ギルド職員のみなさんにじーっと見られている。ちょっと怯んだ。
「……えっとー、うちの子たちに聞かないとそれは……」
「そうだね。私の分の肉を買い取らせてもらうことはできるかな? 一人前なんだけど」
イカワさんはシロちゃんに聞いた。
「ンー?」
シロちゃんがコキャッと首を傾げた。
「羅羅、シロちゃん、クロちゃん、少しだけイカワさんにジャイアントモールの肉を分けてもいい?」
具体的に言うと、
「かまわぬ」
「ンー、チョットー」
「オトカー」
シロちゃんの許可が下りたからいいんだろう。クロちゃんのそれは俺に決めて、かな? ジャイアントモールはなかなか獲れないから貴重ではあるけど、それより他の魔物の肉の方がうまいもんなあ。うちの子たち、普通にとんでもない魔物狩ってくるし。(だいぶ感覚がおかしくなっているのは自覚している)
「イカワさんの分ぐらいでしたらいいみたいです」
なんか周りの圧が強くなった気がするけど、何も言われてないから無視することにした。
で、裏の倉庫に向かいジャイアントモールを解体してもらった。イカワさん、うきうきである。
思ったより早く終わったので、俺たちは町の外に向かうことにしたのだった。
次の更新は、10/3(木)の予定です。
私生活の関係でもしかしたら一時的に更新が止まる可能性があります。その時はよろしくお願いします。
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