133.狩りをしないではいられないニワトリスたちと、もふもふを堪能しているのがバレる俺

 ……シロちゃんたちは、本当に夕方になるまで戻ってこなかった。

 ユーの実をクロちゃんに手伝ってもらっていっぱい採取できたからいいけどさぁ。他にもいろんなおいしい毒きのこだの薬草だのが採れたからいいけどさぁ……。


「すまない、オトカ。遅くなった」


 シュワイさんが申し訳なさそうに言う。シュワイさんは汚れてはいなかったが、いろいろ乱れてはいた。シロちゃんと羅羅ルオルオはどこに突っ込んでいったのか、羽や毛は乱れまくっていてもちろん汚れている。

 俺は黙って彼らに浄化魔法をかけた。


「オトカ、ありがとう」

「で? いったいどこまで行ってきたんですか? どんだけ狩ってきたの?」


 シュワイさん、羅羅、シロちゃんが俺からスーッと目を逸らす。俺から目を逸らさなきゃいけないほど狩ってきたのかよ。


「……さすがに狩りつくすのはどうかと思うんですけど?」

「……狩りつくしてはいないはずだ」


 それに近い量は狩ってきたってことだよな?

 はーっとため息をついた。


「シロちゃん、羅羅、シュワイさん」

「ナニー?」

「な、なんだ?」

「……はい」


 シュワイさんはさすがに悪いと思ったのか殊勝にしている。


「三日間依頼以外での狩りは禁止ね」

「ヤダー!」

「そ、そんな……」

「……しかたない、か」


 やっぱりシュワイさんも戦闘民族なんじゃないか。あんまり狩りすぎてもまずいんじゃないかと俺は思うんだよな。生態系が変わっちゃうだろうから、普段ならいないような魔物が流れてきちゃうかもしれないし。

 つってもわかんないだろうなぁ。


「シロちゃん、狩りすぎもだめなんだよー」

「ヤダー!」


 シロちゃんはいやいやをするように身体を振り、俺をつついた。


「こーら、つつかないの!」


 気に食わないからっていちいちつつくんじゃありませんっ。

 でもなー。もういちいち仕草がかわいいんだよなぁ。

 バッと抱きしめてこれ以上つつかせないようにする。


「オトカー」


 後ろからクロちゃんがくっついてきた。ううう、うちのもふもふ最高すぎっ。


「オトカー、ウレシー?」


 いつのまにかピーちゃんがシュワイさんの肩に移動していて、コキャッと首を傾げて俺たちの方を見ながら話しかけてきた。

 うっ、と詰まった。


「……くっつくのは嬉しいけど、僕は怒ってるんだよ」

「クライー」


 ピーちゃんが空を見上げて言った。確かに暗くなってきていた。


「教えてくれてありがと……ホテルに戻ろっか」


 叱るというか、話をするのは後にしてホテルへ戻ることにした。シロちゃんが「キルー!」とか懲りずに言ってたけど、「また明日!」と言ってそれ以上は許さなかった。かわいいけど、聞けることと聞けないことがあるのだ。

 これからギルドに獲物を持ってったら解体専門のおじさんたちが白目剥いちゃうでしょっ。

 で、ホテルに戻ったらイハウスさんが出迎えてくれた。帰りが遅いから心配かけてしまったらしい。悪いことをしたと反省した。


「あ、そうだ。ジャイアントモールを今日狩ってきたので、調理してもらうことって可能ですかね?」

「……ジャイアントモール、でございますか?」

「はい、今日町の畑でモール駆除をしてきたんですけど、その時にジャイアントモールが出たので」

「今料理長に確認して参ります。少々お待ちください」


 イハウスさんは俺たちにお茶とお茶菓子を出し、従魔たちに水を出すと部屋を出て行った。優雅な動きなんだけど、なんか慌ててるように見えた。なんでだろう? 首を傾げた。


「……オトカはジャイアントモールがどれだけ貴重かわかっていないとみえる」


 シュワイさんがククッと笑った。


「……まぁ、希少性は理解してますけど……めちゃくちゃうまいってほどじゃないでしょう?」

「確かに、間違いなくブラックディアーの方がうまいが……希少性に価値を見出す者はどこにでもいるからな」

「……めんどくさいですね」

「ああ、面倒くさい」


 ドタドタと走っているような足音が聞こえてきたと思ったら、俺たちの部屋に近づいてきた。


「困ります! お客様に直接など!」

「ジャイアントモールなんて聞いたら黙っていられないだろう!」


 慌てたようなイハウスさんと料理長の声が聞こえてきて、あちゃあと思った。でもなー、ここの料理長にジャイアントモールの肉、調理してほしいんだよなー。


「なんてことを!」

「……そなたらやかましい、入るがいい」


 ソファの後ろで寝そべっていた羅羅が聞き苦しいと思ったのか、のっそりと起き上がって部屋の扉を開けた。


「は、はい……申し訳ございません……」

「はいぃいっ!」


 料理長はイハウスさんと共にバッと部屋に入ると鯱張った。全く困ったものだと思う。


「料理長……誰にでも聞こえる場所で獲物を言うのはまずいのではないか?」


 シュワイさんが呆れたように言う。料理長はバッと土下座し、


「是非調理させてください!」


 と頼んできた。そんなたいそうなものじゃないんだけどなぁ。

 もう面倒なので、俺たちの分を調理したら残りは買い取りをしてもらうことにした。絶対他の魔物の肉の方がうまいしさ。これはうちの従魔たちがいろんな獲物を狩ってくるから、俺の舌が肥えてしまったのかもしれないけど。

 料理長にはものすごく感謝されてしまったから、まぁよかったのかな?


次の更新は、14日(月)です。よろしくー。

お休みいただきまして、ありがとうございました。更新再開します。


誤字脱字についてはこちらをご確認くださいませ

https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16818093081582887529

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