115.我慢していたニワトリスたちと、パーティ名が決まって頭を抱える俺

「すまない。彼はまだでの経験が少ないのでな」


 キタニシ町冒険者ギルドのギルド長であるイカワドルギさんがコホン、と咳ばらいをした。それにシュワイさんが腕組みをしたまま頷く。

 俺は促されて、シュワイさんと共にソファに腰かけた。ソファの後ろには羅羅とシロちゃん。ピーちゃんはシュワイさんの腕に。クロちゃんは俺の隣にもふっとくっついた。クロちゃんはソファの上である。ここのソファ大きくていいな。

 彼、というのはイカワさんの隣で立っている青年だ。イカワさんよりも若く見える。


「紹介しておこう。彼はネコノヤオという。ここの副ギルド長だ」


 へー、と思った。副ギルド長だという青年は目を逸らしている。


「経験が少ないのに副ギルド長が務まるのか?」


 シュワイさんが率直に聞いた。


「基本は書類仕事だからね」

「だが、ギルド長に何かあった時ギルドの差配もせねばならないだろう。彼にできるのか?」

「そうだねぇ。そうならないことを祈っているよ」


 イカワさんは食えない笑顔だ。


「さて、さっそくSランク冒険者に依頼が来ているんだが見てもらえるかな?」

「下らない依頼なら断るぞ」

「見るだけでも見てくれたまえ」


 そう言ってイカワさんは依頼書の入っているらしい封筒をシュワイさんに渡した。シュワイさんはその封筒を見て眉を寄せた。


「……領主の依頼は受けない。特に隣の領主のはな」

「な、何故ですか!?」


 問うたのは副ギルド長だというネコノさんだった。


「あ、すみません……」

「かまわない。領主の依頼というのは無茶なものが多い。それでいて依頼料も渋るのだ。そんな依頼を受けられるものか。それに、Sランク冒険者は自由に依頼を受けられるし断ってもいいことになっている」


 シュワイさんは機嫌悪そうだったけど、きちんと彼の問いに答えた。

 本人は面倒くさいから答えたとか言いそうだけど、なんだかんだいって面倒見がいいんだよなー。


「そう、ですね……」


 ネコノさんはいかにも不満そうに頷いた。


「内容も見ないで断るのかい?」

「隣の領主は評判がよくない。ろくな依頼ではないだろう」

「よ、読むだけでも……」


 食い下がったのはネコノさんだった。俺はクロちゃんをもふもふしながら会話を聞いているだけだ。


「……おい、ここは水の一杯も出ぬのか?」


 羅羅が唸るような声を出した。


「あ、申し訳ありません!」


 ネコノさんが慌てたように隣の部屋へ。そして洗面器のような器になみなみと入った水を持ってきた。


「我にだけではなく全員分よこせ」

「はははい!!」


 ネコノさんはよほど羅羅が怖かったのか、俺たちの前にも洗面器のような器をどんどんと置いた。

 うーん。

 あわてんぼうさんかな?


「……コップをくれないか?」


 さすがにシュワイさんが言う。


「あああああ! 申し訳ありません!!」


 洗面器の水はうちの従魔たちがとてもおいしくいただいた。一応俺も味見して毒がないことは確認した。魔物に毒は効かないけど、万が一ってことがあったら困るしね。警戒はしないよりした方がいいと思う。


「じゃあ依頼はなかったことにするよ。今日は到着報告だけかな?」

「それと、こちらのオトカとパーティー登録をしに来た」


 イカワさんは目を丸くした。


「まだパーティー登録をしていなかったのかい?」

「あまりにも自然に一緒にいすぎて忘れたんだ」


 シュワイさんがさらりと言う。俺は頭をかいた。


「いいけど……彼はまだDランクなんだよね」

「冒険者になったばかりだからな」

「でも強そうな従魔を沢山連れてるからいいか。で、パーティー名は?」


 シュワイさんと顔を見合わせた。実は全く考えていなかった。

 以前なんか考えたな。


「モフモッフーズ……」


 思い出して呟いた。


「モフモッフーズね。じゃあそれで登録しておくよ」

「え? ちょっと待ってください!」


 呟いただけだし! まだそれに決めるとか、そもそも相談すらしてないし!


「モフモッフーズ……いいじゃないか」

「シュワイさんも何言ってるんですか! 僕はネーミングセンスないんですよ!?」

「もふもふが多いからいいじゃないか。かわいいし」

「かわいい!? そりゃうちの従魔はとてもかわいいですけど!」

「オトカもかわいいだろう」

「そういうこと真顔で言わないでもらえますう!?」


 いくら十歳でも男のプライドってもんがああああ!


「オトカー、カワイイー」

「オトカー」

「ピーちゃんもクロちゃんも黙って!」


 するとそれまで羅羅の上でもふっとしていたシロちゃんが、


「キルー!」


 と叫び出した。


「あ、そういえば解体頼んでない!」

「キルー! オトカー、キルー!」

「わー、待って待って。もう少し待ってー!」

「ヤダー! キルー!」


 なんだこのカオス……。

 結局、羅羅も「いいではないか」とか言うから俺たちのパーティ名は「モフモッフーズ」になってしまった。ああ、俺があそこで呟かなければもう少しまともなパーティ名を考えられたのに。つっても本気でネーミングセンスないんだけどさ。

 つか、シュワイさんも同意すんなよ!


「かわいいパーティ名だな。すぐに覚えられていいんじゃないか?」


 イカワさんは自分に関係ないからって適当なことを言うし。

 もうなんつーか、どうとでもしてくれと思った。

 そしてギルドの裏の倉庫に連れて行ってもらい、羅羅とシロちゃんが狩った獲物の解体を頼んだのだった。



次の更新は8日(木)です。よろしくー

モフモッフーズ。カワ(・∀・)イイ!!


誤字脱字については、近況ノートをご確認ください

https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16818093081582887529

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