114.思ったよりおとなしくしててくれるニワトリスたちと、冒険者ギルドへ向かう俺

 キタニシ町に入り、横の詰所で冒険者証を出した。

 これを見せると町に入るお金がただになったり、少し安くなったりするらしい。俺の所属はキタキタ町なので、キタキタ町の出入りはただだ。

 こういうことも含めてバラヌンフさんが俺の保護者をかってでてくれたんだろうな。いろいろな人に助けられてるなとしみじみ思う。ホント、みなさんに迷惑をかけないようにしないといけないよな。


「オカイイ殿は無料だ。少年は、Dランクか。それと従魔が四体と。銀貨一枚だな」

「はい」


 わざわざ防衛隊の隊長のダバンラさんに計算していただいてしまった。シュワイさんは俺が金を取られるということに納得がいかなかったみたいで、不機嫌そうだった。


「私の連れなのだから無料でもいいだろう」

「パーティー登録はしていないようだが? それともまだ通知が来ていないだけかね?」


 シュワイさんは、あ、と今気づいたような顔をした。そういえばキタキタ町のギルドでパーティー登録するのを忘れていた。


「すまん、オトカ。パーティー登録をしよう」

「……前って確か、僕のランクが低いからしなかったんじゃなかったでしたっけ?」

「オトカはDランクに上がっているし、従魔も強いから大丈夫だろう」

「それならいいんですけど」


 せっかく町に入ったから歩きたかったのだが、また羅羅の上に乗せられてしまった。ピーちゃんも当たり前のように羅羅の頭の上にもふっと座っている。このスタイルで町の人に覚えてもらった方がいいと言われて。まぁね、ブルータイガーが怖いってのはわかるよ。でも行った先行った先で必ずこうというのがどうしても解せない。

 俺が自分の足で町を歩けるのはいつの日か。

 思わずため息をついてしまった。


「オトカ、まっすぐギルドへ向かう」

「わかりました」


 シュワイさんを先頭にして、馬車とかが走る道を羅羅も走っていく。歩道を進むのは危険だからだ。歩道から、「えっ?」とか「きゃあっ!?」とか驚きと悲鳴が上がる。もう町の人が慣れるまではしょうがないことだ。

 俺も申し訳ないと思いつつ無我の境地で目の前のクロちゃんに抱き着いていた。時々嬉しそうに「オトカー!」って言ってくれるのがかわいいんだよな。みんなに名前が知られてしまうってのが、ちょっと恥ずかしいんだけどさ。

 どう道を通ってきたのかはよくわからない。キタニシ町の門は北側にあり、町に入ってからは多分南の方向にまっすぐ進んできたのではないかと思う。


「ここだ」


 シュワイさんが足を止めた。

 町の中を知っている人がいるってホントありがたい。看板に剣と盾が交差した絵が書かれている。確かに冒険者ギルドのようだった。


「入るぞ」

「うむ」


 羅羅がシュワイさんの言に頷いて、一緒にギルドの中に入った。

 既視感、というかキタキタ町のギルドと造りはほぼ同じだった。


「えっ?」

「魔物かっ!?」


 背の高いテーブルにいた冒険者パーティーが反応し、椅子から降りて得物を構えた。


「従魔だ。武器を下ろせ」


 シュワイさんが鋭い声を発したことで、冒険者たちは身体から力を抜いた。


「従魔? こんなでかいの従えられるのか……?」

「すごいな……」


 恐れと感心の視線がなんつーかこうくすぐったい気がするけど、でも俺が羅羅に乗ってるから「何、あの子?」みたいな視線も浴びてて居心地が悪い。

 受付の青年の顔が引きつっている。

 人が並んでいないところにシュワイさんが向かい、


「Sランク冒険者のオカイイという」


 と言った途端に職員の人が、「ギルド長を呼んで参ります!」と叫ぶように言って階段を上って行ってしまった。


「……面倒な」


 シュワイさんがうんざりしたように呟く。Sランク冒険者だからしょうがないよな。

 職員が降りてきて、シュワイさんに二階に上がるよう促した。


「連れも一緒でいいか? そうでなければ行かない」

「確認して参ります!」


 上ったり下りたりご苦労なことだ。

 一緒に、ということなので、シュワイさんと俺たちも階段を上る。いつも通り俺は下ろしてもらえないので羅羅に乗って、だけど。

 俺一人で階段の上り下りができる日がくるといいなぁ。

 シュワイさんが手前の扉をノックすると、


「お入りください」


 と内側から声が届いた。

 シュワイさんが先に入り、その後羅羅が俺たちを乗せたまま入る。


「やあ、Sランク冒険……な、なんだっ!?」


 にこやかにこちらへ笑顔を向けていた青年の顔が驚愕に染まった。これ、何回やるのかなー。(遠い目)


「私の連れの、オトカの従魔たちだ。しばしこの町に滞在するからよろしく頼む」

「そ、そうか……オカイイの従魔ではないのか?」

「私のではない。ブルータイガーに乗っているオトカが主だ。オトカはまだDランクだが、これだけ従魔を従える凄腕だ。よろしく頼む」

「そ、そうなのか……まぁ冒険者というのは見かけによらないのが当然だからな……」


 青年は自分を納得させようとしたみたいだ。ホント、すみません。

 青年は執務机の後ろに腰かけていたことから、きっとギルド長なのだろうなと思う。


「コホン、失礼した。私がこのキタニシ町冒険者ギルドのギルド長であるイカワドルギだ」


 ……やっぱりドルギは付くんだなとへんに感心してしまう。


「主よ、前の町のギルド長の名前もドルギではなかったか?」


 羅羅がツッコむ。


「しゃべった……」


 イカワさんの隣に控えていた線の細い人が茫然としたように呟いた。魔物がしゃべるって、知らない人そんなに多いのかなとげんなりする。

 前から後ろから慰めるようにニワトリスたちにすりすりされて、幸せはここにあるなーとへんに和んだのだった。



次の更新は、8/5(月)です。よろしくー

いつのまにか200万PV突破、ありがとうございますー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る