仲間が増えて別の町へ

111.マイペースなニワトリスたちと次の町へ向かう俺

「……気を付けて行ってきてくださいね。またこの町にも顔を出してくれると嬉しいです」


 出立の日、チャムさんは遠い目をしながら西門で見送ってくれた。

 チャムさんの家を出る前に肉をできるだけ沢山置いていこうとしたのだけど、「私ではうまく調理できませんから」と断られてしまった。


「みんなで食べるのが楽しかったんですよ」


 チャムさんはそう言って笑った。


「チャム」


 シュワイさんが声をかけた。


「もし、だが……セマカとリフが来るようなことがあればギルドに伝言を残していると伝えてくれ」

「わかりました」


 本当にセマカドッグさんとリフナホアさんがこの町に来るかどうかは知らないが、王都の魔法師協会に報告を上げたらこちらに来るようなことを言っていたのだ。あの二人も一緒に旅に出られたらとても楽しいと思う。リフさんはバカっぽい物言いをしていたけど、わざとだったみたいだし。

 え? キレイなお姉さんが好きなだけじゃないかって?

 おう、キレイなお姉さんが嫌いな奴なんていんのか!(逆切れ

 シュワイさんはとんでもなく美人だけど男だしさぁ。花がほしいんだよ花がぁ。シロちゃんとクロちゃんも女の子だけどそういうんじゃないんだよなぁ(こんなこと考えてるってバレたらつつかれそう)。

 んで、俺は例のごとく羅羅ルオルオの背の上で、前にクロちゃん、後ろにシロちゃん、羅羅の頭の上にはピーちゃんというスタイルで次の町へ向かうことになった。


「キタニシ町って、普通に歩いたらどれぐらいかかります?」

「……普通に歩いたことがないからわからん」

「……そうですよね」


 シュワイさんに聞いた俺がバカだった。

 今はシュワイさんと話せるぐらいの速さで羅羅には走ってもらっている。キタニシ町に着く前に少し相談をしておかないといけないからだ。

 キタキタ町ではバラヌンフさんがいろいろ便宜を図ってくれたが、次の町の防衛隊の人たちがどう対応してくるかもわからない。

 一応シュワイさんは有名らしいが、あまり表に出ないので顔や姿を知らない人もいるそうだ。

 それを聞いて羅羅が、


「使えぬの」


 ひどいことを言った。途端にシュワイさんがひどくショックを受けたような顔をする。


「そ、そうだな……」

「せっかくのSランク冒険者だというのに、そんなことでは主の役に立たぬではないか」

「羅羅、言いすぎ!」

「ヤクタタズー」

「オトカー」

「ピーチャン、ヤクニタツー!」


 シュワイさんのキラキラ光る青髪がしおしおと色を失っていくようだった。


「シロちゃんもやめなさーい!」


 結局全然相談らしいこともできないまま、夕方にはキタニシ町の付近に着いたのだった。

 まだ町の姿は見えていないが、ここから近いらしい。


「どうしますかね?」

「このまま門番に声をかけに行ってもいいが、そろそろ門が閉まる時間だ。ちょうどいい林もあるし、野宿するか」

「そうですね」


 勤務時間ギリギリに驚かせることないよな。それを言ったらどんな時間でも羅羅の姿を見たら肝を潰すかもしれないけど。

 どうせ急ぐ旅でもないし。これはシュワイさんとも同意している。

 林に入り、適当な場所の草を刈る。そこをシュワイさんの火魔法で軽くいぶして、羅羅に土魔法で壁を作ってもらった。これでなんとなく簡易的な家のようなものができた。

 竈も作ってもらい、そこらへんで摘んだ草でスープを作る。全部毒なしの安全なものだ。フライパンで肉を焼けばごちそうである。

 従魔たちには肉の塊を出した。

 シロちゃんが林の中を見回して、


「カルー!」


 なんて尾をぶんぶん振りながら言い出した。


「もう暗いからだめだよー」

「エー」


 シロちゃんが不満そうに尾をぶんぶん振る。


「シロ殿、明日の朝共に狩りいきましょうぞ」


 羅羅が更にあほな提案をする。


「まてまてまてまて。明日はキタニシ町に入るんだってば。狩りは落ち着いてから!」

「主よ、よいではないか」

「エー」

「オトカー」

「イキヌキー、ダイジー」

「えええええ」


 うちの従魔たちが俺の言うことを全く聞いてくれない件について。


「だめっ! せめてキタニシ町でギルドに到着報告してからっ! そうしないと解体もしてもらえないだろ?」

「オトカー、キルー」


 シロちゃんがいやいやをするように身体を振る。かわいいなちくしょう。


「プロに解体してもらった方がいいじゃん……小さい個体なら俺でも解体するけどさ……」


 そんな話をしながら、羅羅に寄りかかり、シロちゃんとクロちゃんにぴっとりとくっついてもらって幸せに眠ったのだった。シュワイさんも羅羅に寄りかかって寝た。こんな幸せなことはないという表情で。やっぱもふもふは正義である(俺はいったい何を言ってるんだ)。

 ちなみに、なんでバラヌンフさん宅に町を離れる挨拶をしに行かなかったかというと、バラヌンフさんちの子どもたちが次はニワトリスに触らせてもらうと鼻息を荒くして言っていたらしいからだった。バラヌンフさんもニワトリスの危険性については口を酸っぱくして説明したらしいのだが、子どもたちは俺に懐いているニワトリスたちを見ていたせいか危険性が理解できなかったらしい。麻痺なんて感覚普通は知らないだろうしな。

 羅羅だけならともかくニワトリスは危険なんだよ、ホントに。



次の更新は、25日(木)です。よろしくー


誤字脱字については、近況ノートをご確認ください

https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16818093081582887529

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る