106.俺にくっついて落ち着くニワトリスたちと、断るところはしっかり断る俺
シロちゃんの言う追っかけっこに付き合わされて汗だくになったので浄化魔法をかけた。
すっきり。
うん、浄化魔法は万能だ。
元の世界でもこの魔法、ほしかったなとか思ってしまう。転生しているわけだし、元の世界に戻りたいなんて全く思わないんだけどさ。
防衛隊の隊員たちによるモール駆除が終わるまで、シロちゃんとクロちゃんをもふもふして過ごした。俺がくっついてると二羽はご機嫌だ。俺もうちのもふもふたちが大好きだ。
途中休憩したりして、結局畑のモールを駆除し終えるのは夕方までかかった。
「これで全部駆除できたと思いますが、オトカ君確認してもらってもいいですか?」
「はーい」
チャムさんに声をかけられて立ち上がる。
防衛隊の面々が畑を穴だらけにしてくれたのでちょっと危ない。その穴の一つに腕を突っ込み、畑全体に鑑定魔法を薄くかけた。畑が広いから四回に分けて。
「いない、と思います」
畑自体には
チャムさんともう一人鑑定魔法を使える人が俺を真似て確認した。
「ふむふむ、こうやるんですね。オトカ君は魔法センスがありますね~」
チャムさんは終えると感心したように言った。苦笑する。いくら魔法センスがあったって二つしか使えないんだよなぁ。
生涯に覚える魔法の数というのはけっこうデリケートなものだ。シュワイさんには文字だけでなく魔法の使い方なども教わっているので俺の魔法の数は知らせているが、チャムさんには知らせていない。二つだけしか使えないってけっこうなコンプレックスなんだよなー。それと、俺は生まれつき状態異常を全て無効化する能力があるけどそれも魔法と思われている節があるのでなんとなくそういうことにしている。
教会の人には浄化魔法と状態異常無効化で二つと思われていたっぽいよな。手の内を全て明かしてもいい相手と悪い相手ってのはいるから、これからも注意していきたい。(すでにいろいろやらかしている)
さて、やっとモールの駆除が終わってほっとした。
領主のキズノモ様はすぐにモール駆除への補助金を出すよう手配するらしい。
「そんなに早く出せるものですか?」
バラヌンフさんが聞いた。
「害獣駆除は本来国を挙げて行うべきだろう。それぐらいの予算はある。オトカ、君がいてくれてよかった。明日には是非領主館に来てくれ」
「えー……嫌です」
またシロちゃんとクロちゃんにくっつかれて蕩けていた俺だったが、それだけは遠慮させてもらいたい。
「ホワイトモールのお金を渡したいんだがな」
「……領主館に行かないと受け取れないなら辞退します」
確かにお金はものすごく大事なんだけど、領主館と聞いただけで厄介事の匂いしかしない。
「そんなに警戒することはないんだが……しょうがない。明日にでもドルギに渡すから受け取ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
どうせ明日は獲物の解体を頼みにギルドへ向かうつもりだからちょうどいい。
「オカイイは来てくれるだろう?」
「オトカが行かないというなら私も行かない」
「そんな~」
領主が情けない声を出した。
「私の分は防衛隊の予算に回してくれてもかまわない」
シュワイさんは数々の厄介な依頼をこなしていたり、魔法の研究をしているからお金には困っていない。
「……オトカ君への今日の依頼料も含めてドルギに渡しておくことにするよ……」
領主はがっくりと肩を落とした。
そうしてやっと俺たちはチャムさんの家に戻ったのだった。
チャムさんは仕事があるので、それが終わってから帰宅するらしい。
「待ち時間の方が長かったぞ」
羅羅が文句を言う。
「そうだな。すまなかった」
シュワイさんはそう言いながらブラシを出した。途端に羅羅の尾がぶんぶん振られる。羅羅は嬉しさを隠そうとしてか少し難しそうな顔をしていたが、シュワイさんに優しくブラッシングをされるとでろんと溶けた。
うんうん、お疲れ様だよな。
「ピーチャン、ガンバッター!」
「うんうん、ピーちゃんもありがとー」
ピーちゃんは防衛隊の人たちの手際があまりにも悪いと思ったのか、途中から探知魔法を使ってモールの位置を彼らに教えたりしていたのだ。実は一番役に立ったのはピーちゃんかもしれない。見た目によらず、それなりに長生きしてるんだよな。
一番、てのはちょっと違うか。羅羅も畑の周りに壁を作ったりしてくれたもんな。あれはモール避けで使えるということで、水を引く箇所だけ壁をなくしてそのまま使うと言っていた。壁と言っても土中に1mぐらいと、地面から出ている部分は20cmぐらいなのでかえって区画がはっきりしてよかったと言われた。それは他の畑でも同様だったので羅羅もお疲れさまである。
「ガンバッター」
「オトカー」
シロちゃんとクロちゃんにまたくっつかれて幸せを感じる。ピーちゃんをなでながら、「うんうん、シロちゃん、クロちゃんもありがとー」と礼を言った。
「オトカ」
羅羅のブラッシングを終えたシュワイさんに声をかけられた。
「あと数日でこの町を出るか?」
「そうですね。アイアンの皆さんには挨拶したいですけど……」
「明日ギルドで聞いてみよう」
「はい、ありがとうございます」
ここでの生活もそれなりに楽しかったけど、やっぱいろんなところへ行きたいって思ったのだった。
次の更新は、8日(月)です。よろしくー
誤字脱字などの修正は次の更新でしますー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます