100.獲物の処理をさせたいニワトリスたちと、やることを考える俺

 羅羅ルオルオはマタタビの葉を食べると、しばらくそこでゴロゴロしていた。

 俺たちが夕飯を食べ終えた頃に復帰したので、庭で肉を食べさせた。その際、すでに夕飯を食べ終えていたニワトリスたちにももっとよこせと肉を所望されたので、苦笑しながらまた少しあげた。ピーちゃんにも草をあげる。うちの子たちはどんだけ食いしん坊なんだろうか。かわいい。

 従魔たちに浄化魔法をかけて居間に戻ると、チャムさんとシュワイさんがまだマタタビについて話していた。

 これって、口止めした方がいいのかな。


「羅羅、マタタビの葉を浴びた際の感覚を聞きたい。例えば獲物が近くにいたとして、あの匂いを嗅いだとしたらそちらへ意識が向くほどだろうか?」

「ん? 獲物がいればそれほど気にはならぬじゃろうな」


 シュワイさんに聞かれて、羅羅はそう答えた。


「……となると興奮しているタイガーには効かないかもしれないのですね」


 チャムさんががっくりと首を垂れる。マタタビには猫科を酔わせるなにかがあるが、それを使って倒したり、生け捕りにできるほどのポテンシャルはないらしい。さっきのは家の中だったし羅羅が油断してたってのもあっただろうしな。


「……気を一瞬逸らすぐらいはできようが、あれで何かしようなぞ考えぬ方がいいぞ」


 羅羅に低い声で言われて、「そうします」とチャムさんは答えた。


「誰かが逃げる為には使えそうか?」


 シュワイさんが更に尋ねると、羅羅は少し考えるような顔をした。


「ふむ。本気で我が狩るつもりならば、あの程度では気休めにもなるまい」

「そうか。ありがとう」


 シュワイさんはそう言うと、ブラシを出した。途端に羅羅の目がキラキラする。うん、羅羅にとってはシュワイさんのブラッシングが一番の弱点かもしれない。

 シロちゃんとクロちゃんはソファに腰かけている俺にくっついている。このもふもふがめちゃんこかわいくてたまらない。つい顔がほころんでしまう。

 ピーちゃんはシュワイさんの肩で毛づくろいしていた。


「しかしマタタビ、というのですかその植物は。もしかしたら毛並みのいい猫を集める為にそれを使ったのかもしれませんね」


 チャムさんが考えるような顔をしながら呟いた。


「? なんのことですか?」

「いえ、オトカ君たちが動物や魔物が囚われていたところを見つけてくれたでしょう? あれから周辺を探しましたら、他にも似たような場所があったんですよ」

「ええええ」


 やっぱりあそこだけじゃなかったのか。動物(魔物含む)誘拐犯許すまじ。


「そちらの方は大きめの猫が多かったので不思議だったのですが、おそらくマタタビを使ったんでしょうね」

「……チャムさん、それで犯人たちは……?」

「だいたい捕まえたんですが、まだあと二人ぐらい逃げてるんですよ。おそらくもうこの町にはいないんですよねぇ」


 困った困ったと言いながらチャムさんはため息をついた。


「……そういう犯人が逃げるとしたらどこでしょう……」

「一番潜伏しやすいのは、どこかの町の貧民街でしょうね」

「なるほど」


 やはり早めに移動した方がよさそうだ。

 ちなみに、防衛隊とのモール駆除は明後日に正式に決定したらしい。よろしくお願いしますとチャムさんに頭を下げられてしまい、慌てた。

 翌朝、いつものメンバーでギルドへ向かった。


「キルー! キルー!」


 シロちゃんが尾をぶんぶん振りながら主張するので、先にギルドの倉庫に寄って昨日の獲物の解体を頼んだ。解体専門のおじさんたちの顔が引きつっている。


「すみません、今回もいっぱいで……」


 俺はそっと目を逸らした。


「……さすがに多すぎるから二回に分けてくんねえか?」

「はい。シロちゃん、半分しまってー」

「キルー!」

「今日は半分だけだって。感謝しないとね」

「アリガトー!」

「お、おう……かわいいな」


 シロちゃんが素直にお礼を言ったことで、おじさんたちの顔がほころんだ。うん、うちのニワトリスたちは最高にかわいい。尾をぶんぶん振ってるからちょっと怖いけど。


「オトカー」


 クロちゃんが俺にぴっとりとくっついてくる。


「んー? クロちゃんもかわいいなぁ」


 もふもふさせてもらいながらギルドの建物に戻った。(さすがに羅羅からは降りている)


「我に乗らぬのか」

「いいかげん恥ずかしいってば」

「そうか……」


 羅羅はしょんぼりしてしまった。移動の為に乗るのは百歩譲ってかまわないけど、それ以外で乗るのはなんかやなんだよ。

 ギルドのボードを確認する。モール駆除の依頼はなかったけど、薬草の依頼はあった。でも薬草だったら薬師ギルドに下ろした方が高く買い取ってくれるしな。

 ちなみに昨日採った薬草の一部はすでに薬師ギルドへ納め済みだ。これからもどうぞよろしくと揉み手されてしまったが、そろそろ別の町に移るかもということを伝えたらこの世の終わりのような顔をされてしまった。

 どんだけ薬草不足なんだっての。


「うーん、今日はどうするかなぁ……」

「本屋はどうだ?」

「あ、それもいいですね」


 どれだけ字がスムーズに読めるようになったのか、ちょっと興味がある。お金もあるし、いろいろ学ぶにはやはり本がいいと思ったのだった。



次の更新は、6/17(月)です。よろしくー

100話ー! ありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る