95.主張するニワトリスたちと薬草を卸す俺

 冒険者ギルドを出て、薬師ギルドへ向かった。

 あんまり薬草は摘んでいないが、止血の薬草は見かけると摘むようにしているので、アイテムボックスに葉が五十枚ぐらい溜まっていた。意外とそこらへんに生えてたりするんだけど、みんな雑草だと思って気づかないみたいだ。まぁ、見た目まんま雑草だし。

 俺も鑑定魔法があるから摘めるけど、そうでなかったらスルーしてしまうだろう。それぐらいけっこう身近に生えていたりする。

 実はチャムさんの庭の端っこにも適当に生えていた。チャムさんに薬草を植えているかどうか聞いたら、きょとんとした顔をされてしまった。これとこれ、これこれこういう薬草ですけどって説明したら何故か頭を撫でられた。


「オトカ君はいい子ですね~。私は雑草だと思っていましたよ」


 って。……やっぱ雑草の類かな。

 チャムさんが植えているものじゃないから好きにしていいと言われたので、ありがたく摘ませてもらった。それは自分たち用に。いつ怪我するかわからないしなー。

 それはともかく薬師ギルドに着いた。今回も羅羅ルオルオの背に乗って。いいかげん自分の足で走りたいんだけど、こっちの方が早いんだよなぁ、くそう。

 羅羅の背から降りて、建物の中に入った。


「こんにちは~」

「あ! タイガーに乗ってる子だ!」


 受付の人に指を差されてしまった。いやまぁ、そうなんだけど。

 気分的に大分複雑だった。

 クロちゃんが後ろからぎゅうぎゅうくっついてくる。


「ニワトリスー!」


 なんでそこで自己主張?


「あはは、一緒なのはタイガーだけじゃないよね。ごめんね、ニワトリスちゃん」


 受付の人があははと笑う。

 俺と一緒なのは羅羅だけじゃないってヤキモチ焼いたのか。なんだこのかわいいニワトリス。

 クロちゃんを軽く撫でた。クロちゃんはとても嬉しそうに身体を揺らす。うん、かわいい。


「オトカー」

「すみません、止血の薬草の買い取りってできますか? それから、依頼とかってここはあります?」

「止血の薬草、大歓迎ですよ。依頼はちょっと待ってくださいねー。新しいのがないか見てみます!」


 ちなみに、羅羅、シロちゃんはギルドの外に残った。薬師ギルドの建物は受付の部分が狭いのである。シュワイさんの腕にピーちゃんが留まり、マイペースに毛づくろいしている。でっかいけど、やっぱインコってかわいいよなー。

 カバンから出すフリをして、止血の薬草を十枚ずつまとめたものを三束出した。


「ありがとうございます。助かりますー。三束もいただいたので、十枚で銅貨7枚でー……えーと」


 七+七+七をやっているんだな。この世界って算術はどうなってるんだろう。たまたまこの人がこうなのかもしれないけど。


「大銅貨2枚と銅貨1枚ですねー、どうぞ。あと依頼はこちらですねー」


 お金を受け取ってから、紙に書かれたものを見る。……字が汚すぎて読めない。誰だこれ書いた奴。


「シュワイさん、すみません。読んでもらっていいですか?」

「ああ」


 声をかけるとシュワイさんは嬉しそうだった。


「字、読めないですー?」

「いや、この字が……」


 汚いとは言えないのであははと笑ってごまかした。


「解毒の薬草、胃腸に効く薬草、麻痺解除の薬草だな。期限は明後日となっているが」


 シュワイさんが読んでくれた。やっぱ普通に読めると走り書きみたいなのでも問題ないのかな。


「冒険者ギルドと教会から薬を卸せって依頼があるんですよねー。でもなかなか薬草を摘みに行く人がいないみたいで。こうやって卸してもらえると助かりますー。あ、胃腸に効く薬は医者からの依頼です」

「うーん、なんかあったかな」


 カバンの中を漁るフリをしてアイテムボックスの中を探る。解毒の薬草が少しあった。


「解毒の薬草なら、二本ありますよ」

「助かります! 一本で銅貨5枚です!」


 それが高いのか安いのかわからないが、それを使って薬を作るわけで。解毒の薬って買ったことないからいくらぐらいするもんなのか見当もつかない。

 ちら、とシュワイさんを見たら頷かれたから妥当な金額なんだろう。二本売った。

 しめて大銅貨3枚と銅貨1枚である。スムーズに採れればいいけど、薬草だけ採って暮らすのもたいへんそうだなと思った。


「薬草って冒険者ギルドでも買い取ってますよね。こちらに持ってくる人ってそんなにいないんですか?」

「知ってる人は持ち込んでくれるんですけど、冒険者ギルドから離れてますしねー。あっちで案内してくれるわけでもないので」


 受付の人はそう言って苦笑した。


「なるほど」


 わざわざ宣伝とかもしないだろうしな。冒険者ギルドでの買い取りだけど安いんだけど。


「また何か採ってこられたらお願いしますねー」

「はーい」


 返事をして薬師ギルドを出た。


「遅いぞ、オトカ。乗れ」

「もー……」


 乗れと言った時には長い尻尾がおなかに絡んで羅羅の背の上である。俺の後ろにシロちゃんが飛び乗り、クロちゃんは前へ。


「少しは俺も自分の足で走らないと鈍るんだけどー」

「時間の無駄だ。森へ行くのだろう」

「そうだけどさー」

「オトカ、諦めろ」


 シュワイさんにまで言われてしまい、俺はクロちゃんに抱き着いたまま少しふてたのだった。(ピーちゃんは羅羅の頭の上に移動した)



次の更新は30日(木)です。よろしくー

誤字脱字等は次の更新で修正します~。引き続き多忙ですー(汗

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