93.いつも通りなニワトリスたちと、別パーティーの人たちとごはんを食べにいく俺

 夜は予定通りアイアンの面々とギルドで合流した。

 うちの従魔たち全員とシュワイさんも一緒である。

 昼間のこともあったので、「あのー、夕飯のお店ってうちの従魔たちも入れますか?」と聞いた。


「ああ……伝えておいたから大丈夫だ。オトカの従魔は有名なようだな。世話になったと言っていたぞ」

「? 世話、ですか?」


 マッスルさんに言われて首を傾げた。世話をした人なんていないと思うけど。むしろ俺が誰かの世話になりっぱなしだ。


「少し離れたところにあるから、そろそろ行こうか」


 キュウさんがそう言ったので、みな立ち上がって移動することにした。


「わわっ!?」


 歩いていくのかと思ったのに、また羅羅ルオルオの背に乗せられてしまった。


「羅羅~」


 俺の前にクロちゃん、そして後ろにシロちゃんが当然のように飛び乗る。羅羅の頭の上にはピーちゃん。いつもの位置だった。


「ちょうどいいな。走るけど、いいか?」


 キュウさんが楽しそうに聞く。シュワイさんがそれに頷いた。


「ええー? 走るのー?」


 嫌そうにソーサさんがぼやいた。


「魔法使えば走れるだろ?」

「もー、やだなー」


 そう言いながらもみな目的地まで走った。え? みんな身体強化魔法持ち? なんでだよー。

 目的地は、西の門の手前にある家だった。


「あれ? ここって……」


 側に畑がある。その畑には見覚えがあった。今はキレイにならされていて、芽も出ていた。


「モール駆除に来た畑だな」


 シュワイさんが呟く。

 マッスルさんが家の戸を叩くと、中からおっさんが出てきた。


「そんなに強く叩くんじゃねえ! 家の戸が外れちまうだろーが!」

「あ」

「やっぱお前さんか。今日はがっつり食べてってくれや」


 モール駆除の依頼を受け始めた頃に来た、カウノさんのお宅だった。カウノさんはニヤリとすると俺たちを家の中に招き入れた。

 どうやらカウノさんの息子さんが料理上手で、不定期で食堂をやっているらしい。


「おう、ボウズ。この間は世話になったな」

「いえ、依頼でしたから」

「おかげでモールが出なくなったんだ。感謝ぐらいさせろ」


 カウノさんはそう言ってニカッと笑う。役に立ててよかったなと思った。


「今日は開いていると聞いたからな。ここのメシはうまい」


 マッスルさんが言う。席についてからは自己紹介になった。

 アイアンは俺が思った通りマッスルさんがリーダーらしい。マッスルさん、弓使いのキュウさん、剣士のナイティー(女性)さんがBランクで、魔法師のソーサ(女性)さん、僧侶のプリーさんはCランクらしい。総勢五名がパーティーメンバーだった。


「魔法師の他に僧侶がいるとは心強いな」


 シュワイさんが感心したように言う。


「だろう。だいたい回復魔法持ちは教会にスカウトされてしまうからな」


 そう言うマッスルさんは得意げだ。シュワイさんがお酒をちびちび飲んでいるプリーさんに問う。


「何故冒険者を目指した?」

「……教会に行きたくなかっただけです。回復魔法持ちは大事にされると言っても、実質軟禁されるような生活を送ると聞いていましたから。親は私を教会に売るつもりでしたが、私は逃げてこちらの町へ来ました」


 想像以上に重い話だった。売るとか、こっわ。


「そうか。それはたいへんだったな」

「オトカに会えた記念だ。改めて乾杯しよーぜ!」


 キュウさんが気を取り直して仕切ってくれた。俺は酒が飲める年ではないから、ジュースだ。すっぱいオレンジジュースである。それでも多少甘味はあるから、酒が飲めない女性や子どもには定番としてこれが出てくる。砂糖がほしいとしみじみ思う。


「ほらよ、食え食えー!」


 おっさんが持ってきてくれた料理は野菜と肉がてんこ盛りだった。味が濃そうでおいしそうだ。

 畑の隅を貸してくれるというので、従魔たちにはそこで肉を出してあげた。ピーちゃんは肉を食べないので、俺のすぐ横にいる。野菜をいただいてご満悦だ。


「おいしそう」

「ああ、しっかり食えよ」


 呟いたらキュウさんにそう言われて、皿にどどんと盛られてしまった。この肉野菜炒めってのがフツーにうまいんだよな。

 ボアの肉も提供したので、でっかい肉の塊が焼かれて出てきた。なんとも豪快である。マッスルさんとナイティーさんが奪い合うようにして食べてくれた。すごいなぁと思った。


「そっか、オトカはそろそろこの町を出るのか」

「はい。モールの駆除がだいたい終わったら別の町へ向かう予定です」

「せっかく知り合ったのに寂しいな」


 キュウさんにそう言ってもらえて嬉しかった。

 従魔たちの様子を見に行き、食べ終えたことを確認し浄化魔法をかけて店内に入れる。クロちゃんが俺の背中にもふもふくっついてくるのがとてもかわいい。


「オトカー」

「うんうん」

「……こうして見るとニワトリスもかわいーねー」


 ソーサさんが呟いた。


「つつきさえなければなぁ……」


 キュウさんがため息をつく。結局はそこなのだ。でも俺はいくらつつかれても麻痺しないからうちのかわいいシロちゃんクロちゃんと一緒にいられる。あ、でもつつかれればそれなりに痛いけどなー。


「ねーねー、プリーは状態異常を解除する魔法って使えるわよねー?」


 プリーさんはどうやら使えるらしい。


「使えますけど、私が麻痺したら使えませんから……」

「そっかー、残念ー」


 やっぱりそういうものらしい。俺の体質ってやっぱ普通じゃないんだなと再認識した。


「そもそもニワトリスは生け捕りにする方が難しいよ。ヒナから一緒に暮らしてるんだっけ?」

「ええ、たまたまヘビからこの子たちを助けたんです。それでずっと一緒にいます」

「それはすごい縁だよなぁ」


 キュウさんは笑った。

 まだ何日かはキタキタ町にいるので、この町を出る前にもう一度ごはんを食べに行こうなんて話をして別れた。

 みんないい人たちだなとほっこりしたのだった。



次の更新は23日(木)です。よろしくー

誤字脱字等の修正は次の更新時にします

まだ忙しーい(汗

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