92.俺の心の動きに敏感なニワトリスたちとやっぱり抗えない俺

 お昼ご飯はとてもおいしかった。

 領主との食事である。当然ながら、ごはんだけでは済まなかった。


「オトカ、だったか。モール駆除の手際、見事だった」

「ありがとうございます」

「……しかし、あれだけ手慣れているオトカでもあの時間で狩れるのは五匹なのだな。一匹辺り銅貨四枚ではとても割りに合わんだろう」

「そう、ですかね?」


 五匹狩れれば大銅貨二枚にはなるけど。それに、ギルドでごはんを食べればパン一切れと野菜スープのセットが銅貨三枚で食べられる。あ、でも宿泊費を考えたら微妙か。それなら薬草を摘んだりした方が割りがいいのかな。

 ちょっと考えてしまった。


「えーと、僕はまだこの町の宿とかに泊まったことがないんですが……一泊ごはんなしで泊まるといくらぐらいかかるものなんですか?」

「オトカは宿に泊まったことがないのか」

「はい」

「そうか。オカイイは知っているか?」

「……私が知っている一番安い宿が、一泊大銅貨二枚だな」

「あー……」


 納得した。確かにそれだけかかるとなるとモールを五匹狩ったぐらいじゃ暮らしていけないかも。俺は浄化魔法があるから泥だらけになったところですぐにキレイになるからいいけど、着替えを用意したりってなるとモール駆除は一日がかりだ。それでうまく捕まえられなかったら損をするだけである。


「あ、でも……モール一匹につき銅貨四枚ってけっこう高い方なんですよ。銅貨二枚ってところもありましたし」

「それでも受けてくれたのか?」

「はい。モールを野放しにしたら別の畑にも被害が及ぶので。あと、うちの村では春になると村総出でモール駆除をしたんです。そういうことはこの町ではしないんですか?」

「……ふむ。それもいいかもしれんな。冒険者が依頼を受ける場合は補助金を出すことにして、防衛隊でも訓練と称してモール駆除を試しにやってみるか。そこでだ」


 領主がにっこりする。


「その際の指導をオトカに頼みたい」

「えええええ」


 勘弁してほしい。


「嫌です」


 即答した。俺の嫌ですに反応してか、クロちゃんがくっついてきた。なんでこのもふもふはこんなにかわいいのか。


「オトカはホワイトムースの代金を受け取ったら別の町へ移動すると聞いたが」

「? ええ、まぁその予定です」


 できればモール駆除を徹底的にやりたいけど、そんなことしてたらいつまで経っても移動できないしな。いいかげんうちの従魔たちも飽きてきただろうし。


「だがオトカはモールもできるだけ駆逐していきたいのではないかな?」

「う……まぁ、本当は……」


 そっと目を逸らす。

 できれば根絶したいというのが本音だ。とはいえ増えるのも速いし、森とかにも生息していたりするから無理なんだけど。


「そこでだ。防衛隊の訓練を兼ねて、町の畑一帯のモール駆除をするとしたらどうかな? オトカが協力してくれると助かるのだが……」


 やり口が汚い。これだから大人って嫌いだ。俺も中身は43歳+αなんだけどさ。


「……いくらくれます?」


 ボランティアはやらないぞ。


「そうだな。実現したら銀貨を五枚出そう」

「銀貨五枚!?」


 破格にもほどがある。だいたい日本円基準で五万円じゃないか。(あくまでの目安だ)


「オトカが参加してくれるとしたら従魔が付いてくるだろう? 従魔一匹についても銀貨一枚だとしたら、決して高くはないだろう?」

「ううう……」


 そんなことを言われたら参加せざるを得ないではないか。


「……領主サマ、私の分はないのか」

「どうせオカイイは見ているだけだろう。だが、インコの止まり木としての使命もあるのか。なら日当は大銅貨一枚でどうだ」

「いいだろう」

「えええええ」


 なんで大銅貨一枚でシュワイさんの引率が決まってるワケ? シュワイさんてSランクなのに!


「オトカー」


 クロちゃんが撫でろとばかりに更にぐいぐいくっついてくる。かわいすぎてなでなでしてしまう。うちの子は本当にかわいいなぁ。

 ってそうじゃなくて!


「シュワイさん、本当にそれでいいんですか!?」

「Sランクだからな。依頼は好きに受ける」

「報酬が……」

「金に困っていないのは知っているだろう?」

「それはそうですけど!」


 知ってるけど、シュワイさんをピーちゃんの止まり木代わりに一日拘束して大銅貨一枚とかおかしいと思う。

 ピーちゃんがバサバサと飛んで、シュワイさんの肩に止まりコキャッと首を傾げた。


「モール、タオスー?」

「ああ、それはオトカたちがやるだろう」

「ワカッター」


 なんかシュワイさんとピーちゃんが仲良くなっている気がする。シロちゃんも俺にくっついてきた。ああもうもふもふかわいいいいいい!(ごまかされすぎ)

 羅羅は呆れているようだったが、俺の決定には従ってくれるようだ。でもまたそろそろ森には行きたいよなー。

 そんなこんなで、防衛隊とモール駆除をすることを決められてしまった。

 これから防衛隊に話すのと、畑の持ち主たちに周知する必要があるということで、決行日は早くても三日後になるみたいだ。日程などが決まったらギルドか、またはチャムさんに知らせてくれるらしい。

 まぁうん、がんばろ。



次の更新は、20日(月)です。誤字脱字等の修正は次の更新でします。

引き続き多忙中ですのでよろしくですー

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