89.とっても元気なニワトリスたちと依頼をがんばる俺
……モール駆除の依頼、ありました。
本日も二件。両方とも一匹辺り銅貨4枚って書いてあるから良心的な農家さんだな。ま、銅貨1枚でも俺は受けるけどさ。(他の人は知らん)
「依頼、あったな。では向かうか」
「領主サマは走れるのか? 自力で向かえないのなら置いていくぞ」
シュワイさんがさらりと言う。シュワイさんも領主のことは苦手なのかもしれない。
「馬に乗ってきたが……少年はブルータイガーに乗っていくのかな?」
「あ、はい……」
俺が自力で走ってもいいんだけど、遅いってすぐ
「となると、馬が怯えてしまうかもしれんな。わかった、自力で走ろう」
「えええええ」
この領主も身体強化魔法が使えるらしい。いいなああああ。
ということで、いつものスタイルで西の門まで駆けた。俺が羅羅に乗っててシュワイさんと領主が横を走る光景ってシュールだなと思った。身体強化魔法、使える人って意外と多いのかな? それとも偶然? ちょっと遠い目をしてしまった。
前後でクロちゃんシロちゃんに挟まれているせいか、それなりにスピードを出されても振り落とされたりはしない。クロちゃんは俺がクロちゃんに抱き着いてると嬉しいみたいで、機嫌よさそうに少し身体を揺らしている。ああもうかわいいなああああ。(現実逃避)
「りょ、領主様! 今日はどのような……」
防衛隊の門番が領主の姿を見てかちんこちんになった。
「今日はモール駆除の視察だ。オカイイとこの少年に付いてな」
「お疲れ様です! どうぞ、お通りください!」
「うむ、お勤めご苦労!」
お互いに敬礼。敬礼の仕方ってやっぱ手を顔の横で少し斜めにビシッとやる形なんだなーと、どうでもいいことで感心してしまった。
門番が領主の顔を知ってるってことは、フットワークが軽い人なんだなと思う。
門を出て、本日の依頼人の畑へ向かった。
畑では、困ったような顔をしたおじさんが鍬にもたれて畑を眺めていた。
「すみませーん、冒険者ギルドで依頼を受けてきましたー!」
声をかけるとおじさんは顔をこちらへ向け、
「おお、来たか……。えええええ!?」
と驚きの声を上げた。
「すまんな、モトノカウノ。今年はモールが増えていると聞いて視察に来たのだ。モール駆除の様子を見せてほしい」
「え、ええ……まぁそれはかまいませんけど……」
領主がおじさんにそう説明した。おじさんは戸惑っていたが了承する。
「えっと、僕たちがモール駆除する時の手順とかって他の農家さんに聞いてますか?」
「あ、ああ……鉢は用意してある」
「ありがとうございます。モール一匹につき銅貨4枚でお間違えないですか? ジャイアントモールが獲れた場合はこちらで回収しますのでそのお金はいただきません。それから、生きている苗がなくても苦情はなし。畑を思いきり掘り返してしまうような形になりますが、よろしいですか?」
「ああ、わかった。それで頼むよ」
「では始めますねー」
俺もいいかげんこのやりとりに慣れてきて、ルールをシュワイさんと考えたのだ。生きている苗があるかどうかは鑑定魔法をかけてみないとわからない。それに従魔たちが畑に入るから、終わった後はとんでもないことになるのだ。悪いけど整地までは俺たちの仕事じゃない。依頼として改めて頼まれればやるけど。農家の息子だし。
ピーちゃんはモール駆除はしないのでシュワイさんの腕に留まっている。シュワイさんの横で領主がにこにこしていた。
「先に苗がないかどうか調べますねー」
鑑定魔法を広い畑に薄く伸ばすイメージでかけていく。魔法って使うことによって熟練度が上がるんだけど、ある程度センスも必要だと最近は思う。シュワイさんは魔法の研究をしていただけあって、魔法のアレンジ方法をいろいろ知っていて教えてくれた。
そのうちの一つが、植物の生死に関するものである。一つ一つの植物に対して生死を表示するのではなく、色として現わすのだ。これは元の世界でRPGとかをしていた経験が生かせた。
そんなわけで生きた苗を見つけるのは格段に速くなった。
「これとこれと、あそこのも生きてます」
「そりゃよかった!」
ピーちゃんが飛び、指示したところに留まる。その苗を回収すればいいのだ。おじさんには畑の手前にあるものを回収してもらい、俺はちょっと奥まったところとかの苗を回収した。たった十個ではあったが回収できてよかった。
「オカイイよ、魔法であんなことができるものなのか?」
「オトカは魔法のセンスがいいので」
「やはりセンスか」
「ピーチャン、ガンバッター!」
「うんうん、ありがとなー」
得意気に俺の腕に留まったピーちゃんがかわいい。ピーちゃんは満足したようにシュワイさんの腕に戻った。
「シロちゃん、クロちゃん、羅羅、お待たせ。モール駆除始めるよー!」
「カルー!」
「オトカー!」
「狩るぞ」
ってことで手分けしてモール駆除に勤しんだ。
それなりに広い畑だったせいか、モールは三十匹もいた。俺が狩れたのは四匹である。やっぱ難しいなー。
畑の穴に手を入れて鑑定魔法をかけ、他にモールがいないかどうか調べればおしまいだ。さすがに畑の表層だけで調べてもわからないので、30cm以上の深さの場所で鑑定魔法をかけるのだ。使い方としてはサーチみたいなもんだな。自分の直感と鑑定魔法の合わせ技でやってるかんじだ。だから完璧ではないけど、シュワイさんが感知魔法で調べてくれた結果と一緒だった。なんか嬉しい。
「従魔の活躍が素晴らしいのは間違いないが、少年もすごいじゃないか」
領主が感心したように言う。さすがに照れてしまったのだった。
次の更新は、5/9(木)です。よろしくー
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