86.我慢できないニワトリスたちとまたフラグを回収する俺

「ジャイアントモールがいたら僕に任せてほしい」


 と従魔たちにはお願いした。もちろん俺が危険そうだったら従魔たちが狩ってくれると助かるけど。

 つか、自分で狩れなかったらDランクとか上がっちゃだめだろ。

 つっても肉切り包丁と腰鉈でどうにかなるもんかな? 畑の脇に置かれている手頃な石を少し借りることにした。これでもコントロールはいいのだ。でも弓はてんでだめだったんだよな。間接的な道具を使うとダメとか意味がわからないけど、人間向き不向きはあるものだ。

 羅羅ルオルオとニワトリスたちは、畑の端からこちらへ追いやるようにしてモールに攻撃している。神経を研ぎ澄ませると、小さいのが土中でこっちに向かってくるのがわかった。


「そこっ!」


 肉切り包丁を突き立てる。そして抜いた。後で掘り返すのが手間だがそれぐらいはどうにかなる。

 思ったよりモールはいない。でも土の盛り上がり方がハンパない。


「オトカー!」


 クロちゃんの声がした。


「ありがとっ、とぅっ!」


 後ろから大きな気配が近づいてきていた。ガガガガガッと派手な音もしているからわかりやすい。石を瞬時にアイテムボックスから取り出して、向かってくる方向へ思い切り投げつけた。

 ガァアッ!

 でかいから進む時、どうしても土が派手に盛り上がるんだよなっ。

 でかい物は歩みを止めなかった。正面から受けるのはまずいので横に飛び退り、腰鉈を振り抜く。絶対に離さないようにして。

 ギィイイイッ!

 とりあえず当たった。そこへ従魔たちが突撃してきてとどめを刺してくれた。


「ふぅ……こっわ……」

「危ないではないか!」

「オトカー!」

「ダメー!」

「ありがとなー」


 従魔たちに怒られてしまった。もふもふが怒ってるの超かわいい。ついにまにましてしまう。


「はいはい、僕を怒るのはあと! モール退治しよー」


 とごまかして、大きいのを回収する。うん、本当にジャイアントモールだった。そんなフラグは立てなくてよかったんだけどなぁ。

 従魔たちは不満そうだったけど、しっかりモールを駆除してくれた。

 ピーちゃんはいつも通りシュワイさんの腕に留まってジタジタ踊ってくれた。狩ってると全然見られないんだけど、ちょっと手を止めた時に見られるのかわいいなー。

 シュワイさんもにこにこしている。シュワイさん、ホントもふもふ好きだよな。

 ってことで無事モール駆除完了です。全部で十五匹とジャイアントモールが一頭だった。やっぱ畑が荒れてた原因はジャイアントモールだったか。


「いやー、助かったよー」


 農家さんがため息をついた。


「モールは1m以上は潜らないんで、できれば畑を覆うように杭を打ち込んでおくといいと思いますけど……水はけも問題ですよね」

「ああ、全く困ったもんだ。ありがとうなー」


 農家さんは木札に依頼完了のサインをしてくれた。先ほどの畑としめて40匹分の依頼料ゲットである。(ジャイアントモールの分はこっちで回収するからいただかない)


「まだ困ってる農家さんがいたらギルドに依頼出すように伝えてくださいねー。あ、でももしかしたらそろそろ別の町に移動しちゃうかもしれないのでお早めに~」

「おー、ありがとなー。ホント、助かったよ」


 伝えるだけ伝えて、羅羅の背に乗せられた。そのままギルドへGOである。思ったより疲れたなー。

 ジャイアントモールはシロちゃんのアイテムボックスに入れてもらった。

 で、ギルドである。

 依頼完了の札を二枚受付に出し、依頼料をもらった。その際にジャイアントモールを一頭捕まえたことを伝えた。


「ではギルド長を呼んでくるのでお待ちください」


 一応話は通っているらしい。内心ほっとした。

 ドルギさんとルマンドさんがすぐに降りてきた。


「おお、早えな」

「そういえばモールばかり狩っていたな」


 二人に促されて裏の倉庫へ向かった。本当はギルドの奥の買い取りカウンターでもいいんだろうけど、俺が狩ってくると数が多かったりでかすぎたりが普通だからまんま倉庫へ案内されてしまう。

 解体を依頼した分も受け取りたいからいいんだけどさ。


「今度は何を狩ってきやがったんだ?」


 解体専門のおじさんにまで言われてしまった。


「ジャイアントモールを持ってきました」

「そんだけか?」

「それだけです」

「珍しいな。できてるぞ」

「ありがとうございます」


 解体は全て終わっているらしい。途端に羅羅とニワトリスたちの顔が満足そうなそれになった。言ってること正確に理解してるよなー、うちの子たちは。


「ジャイアントモールを出してくれ」


 ドルギさんに言われて、シロちゃんに出してもらった。


「おお……でけえな」

「エモノー!」


 シロちゃんが代わりに解体したものを出せと催促する。おじさんたちは苦笑して肉を積み上げてくれた。……うん、文字通り積み上げられたな。この量でどのぐらい持つかな……。

 それをシロちゃんがすぐにアイテムボックスにしまった。ふんすというかんじで。

 うん、とてもかわいい。


「ジャイアントモールはどうやって狩ったんだ?」

「石を投げて、あとは腰鉈で切りつけまして。とどめはうちの従魔たちがしてくれました」

「そうか。まぁいいだろう。Dランクに昇格だ」

「昇格おめでとう」


 ドルギさんとルマンドさんにあっさりそう言われて拍子抜けだった。まだ俺、ここに来て一月も経ってないんだけどいいのかな?


「ありがとうございます?」


 つい首を傾げてしまった。


「はっはっはっ! 自覚できねえってツラだな!」

「それはそうでしょう。ランクが上がるのが例外的に早いのですから。ですが、これだけ強い従魔を連れているのに低いランクでは示しがつきません」


 笑うドルギさんの横でルマンドさんが説明をしてくれた。


「オトカー! タベルー!」


 シロちゃんがそう言って俺の服の端を嘴に咥えた。


「えっ? 待って待って待って! お金受け取らないとだからぁっ!」

「ハヤクー!」

「待ってー!」


 肉は全部こっちで引き取りなんだけど、毛皮とか魔石とかは買い取ってもらうんだからさ。


「クロちゃん、シロちゃんを止めてー!」


 服破けるってば。


「シロ、ダメー」

「ゴハンー!」


 駄々をこねてるシロちゃんもかわいいんだけど、もう少し待ってほしいと思ったのだった。



次の更新は29日(月)です。よろしくー

シロちゃんかわいいよシロちゃん(笑)

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