85.協力的なニワトリスたちと武器を慣らす為にがんばる俺

 今日の依頼の場所も町の外の畑だった。

 町の中の畑でもモールはかなり繁殖していたが、町の外の方がえぐい。

 いつも通り生きている苗を救出してから、腰鉈を構えた。


「ちょっと腰鉈に慣れたいから、五匹ぐらい狩らせてもらっていいかな?」


 従魔たちに頼んでみた。ピーちゃんはいつも通り応援団なので、シュワイさんの腕に留まっている。俺たちが狩りを始めたらまたシュワイさんの腕で踊るんだろうなー。


「よいぞ」

「イイヨー」

「イイヨー」


 羅羅ルオルオとニワトリスたちに了承してもらえたので、畑の隅に陣取った。羅羅に土魔法で、地面の下1mぐらいまで壁を作ってもらったので、こっちに逃げてきたモールは俺が駆除できるだろう。

 一部こっちに追いやってくれるみたいだった。


「じゃ、始めますか」


 軽くストレッチをしてから合図をすると、羅羅とニワトリスたちが容赦なく土を掘り返し始めた。俺は神経を研ぎ澄ませ、どこにモールがいるのか気配を探る。

 おそらく一匹が土中を掘りながらこちらへ向かってきている。その到達場所を予測して、腰鉈を勢いよく土の中に突き入れた。

 うーん、先が尖ってるわけじゃないからうまく刺さったかんじがしない。でも気絶ぐらいはしたはずだ。これだともしかしたら、スコップかなんかで攻撃した方がいいかもしれないな。

 そんなことを思いながら慌てて土の中から飛び出してきたモールに腰鉈を振り抜いた。

 結局肉切り包丁も使って都合五匹駆除した。


「うーん……」

「すごい活躍だったな。どうかしたのか?」


 駆除のしかたについて悩んでいたら、シュワイさんに声をかけられた。


「やっぱ武器っていくつか持ってた方がいいんですかねー」

「そうだな。獲物によって変えた方がいいだろうが……あとは荷物にならなければだろう」

「そうですよね」


 そういえば俺がアイテムボックス持ちなのはシュワイさんには知られてるんだよな。それならもう何種類か武器を購入してみてもいいのか。長い槍とかは自分が振り回されそうだから選択肢にはないけど短い槍はいいかもしれない。

 で、その畑では全部で二十五匹もモールを駆除できた。


「いやー、ホント助かるよ~。今年は多くてなー」


 農家のおじさんが苦笑していた。


「そうみたいですね」

「これからあっちの畑へ行くんだろ?」

「はい」

「あっちはもっとひどいらしいんだ。よろしく頼むな」


 なんて言われてしまった。農家同士助け合わないといけないしな。


「はい、お任せください」


 そこで少し場所を貸してもらい、昼食をいただいた。農家さんはほくほくしながらモールを全部回収していった。うまいとは言えないけど、重要なたんぱく源だし。そう考えると、俺ってかなり贅沢だよな。

 ボアの肉の塊を従魔たちに出した。ピーちゃんはそこらへんの雑草をつついてる。


「ピーちゃん、その草っておいしいの?」

「オイシー」


 ピーちゃんは肉を嫌がるが、植物性のものはなんでも食べるみたいだ。俺とシュワイさんはチャムさんの家で作ってきたサンドイッチを食べる。クロちゃんとシロちゃんの卵を目玉焼きにして挟んであるから超贅沢だ。


「……これが毎日食べられるのはすごいな」


 シュワイさんがしみじみ言う。


「しかし、私は何もしていないのだがいいのだろうか……」

「シュワイさん、いろいろサポートしてくれてるじゃないですか。僕の方こそSランク冒険者を付き合わせてしまって申し訳ないです」

「……オトカはどれだけ人間ができているんだ?」

「オトカー!」

「わわっ!」


 ボアの肉を食べ終えたクロちゃんにどーんとくっつかれた。慌ててクロちゃんの嘴を拭く。


「おなかいっぱいになった?」

「ンー?」


 クロちゃんはコキャッと首を傾げた。おかわりと言われないんだからまぁいいのかな。サンドイッチを食べ終えて、クロちゃんをもふもふしていたらシロちゃんにもどーんとくっつかれた。シロちゃんの嘴も拭いた。


「オトカー」

「はいはい」


 うちのニワトリスかわいい。超かわいい。

 二羽をなでなでもふもふして、次の畑へ向かった。


「うわぁ……」


 森に近いせいなのかなんなのか、畑の荒れっぷりがすごい。でもそれだけではないだろう。


「あのー、これって……」


 畑の持ち主は頭を掻いた。


「いやぁ……こんなにひどいのは初めてでよ。まぁ、ひょっとしたらひょっとするんじゃないか?」

「ですよねー……」


 とりあえず生きてる苗を探したら、手前の方にはいくつかあったので急いで回収した。農家さんは「これは生きてたのか。よかったー」と喜んでくれた。少ないけど、畑をキレイにしたらまたぐんぐん育ってくれるだろう。


「オトカ」

「いったい、なんなんでしょうね?」


 シュワイさんに声をかけられて笑った。シュワイさんは苦笑している。

 フラグを立てた覚えは欠片ほどもないのだが、どんどんフラグが立ちまくる。いなきゃいないでいいんだけど。とりあえず農家のおじさんに断りを入れる。


「あのー……モールは捕ったらお渡ししますけど、もしジャイアントモールが捕れたらこちらで回収してもいいですか?」

「ああ、かまわないよ」

「ありがとうございます! じゃあ、狩るよ!」


 ってことで、今度は最初から肉切り包丁も出してモール駆除を開始したのだった。



次の更新は、25日(木)です。よろしくー

引き続き超多忙ですー

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