84.獲物が解体されるのが楽しみなニワトリスたちと武器ゲットな俺

 魔物の肉って不思議なんだよなー。

 焼いても煮ても必要以上に硬くならないし。その魔物にもよるけど、強ければ強いほどうまいみたいだ。

 ポイズンボアの肉が食いたかったので、朝は自分で焼いて食べた。うん、この少し毒が残ってる状態の肉がうまい。(しっかり焼くと毒が消えてしまう)

 チャムさんとシュワイさんは、そんな俺を不思議そうに眺めていた。


「……オトカ、その肉に鑑定をかけてもいいか?」


 シュワイさんに聞かれて、いいですよと答えた。


「……やはり不思議だ」


 シュワイさんは首を傾げた。毒が残っている状態なのに平然と食べている俺がおかしく見えるんだろうな。


「そういう魔法? みたいなのを持って生まれたみたいですー。僕、生まれてから病気に一度もかかったことがないって母さんが言ってましたし」

「……病気も状態異常だということか。面白いな」


 この町を出る時もシュワイさんが同行するということで、ある程度俺の情報は開示することにした。シュワイさんは生涯で魔法を18も覚えることができると教えてくれた。俺が2つしか覚えられないのに18ってどゆこと? 勇者に迫るんじゃね?

 そして、現時点で使える魔法は12もあるらしい。不公平だ。ま、しょうがないけどさ。

 朝飯を食べ終えて、ギルドへ向かう。

 当然のように羅羅ルオルオの背に乗せられてしまうのはどうかと思うが、しょうがない。


「……身体強化魔法が使えればなぁ……」

「我らがいる故必要なかろうて」


 羅羅が走りながら言う。


「そういう問題じゃないんだよー」


 確かに俺が従魔たちと離れるシチュエーションなんて想定できないけど(夜もクロちゃんシロちゃんにくっつかれて寝てるし)、自分の身ぐらい自分で守れる方がいいと思うのだ。

 ギルドに着くと、ちょうどアイアンが出かけるところだった。


「お、戻ってきてたのか?」


 キュウさんに声をかけられた。


「あ、はい」

「明日の夜にでもメシを食いにいかないか? 従魔たちも入れるところに連れていくよ。あ、もちろんオカイイさんもよろしければ……」

「伺おう」


 シュワイさん、大丈夫かなと思ったけど、俺の保護者って意識があるみたいだから同行を頼むことにした。

 人嫌いなわけじゃないんだよな? 女性が苦手なだけ? もうよくわからない。


「じゃあ明日の夕方にここで」

「はーい」


 約束をしたキュウさんたちと別れてギルドに入る。掲示板を見れば、またモール駆除の依頼が二件あった。

 札を取って受付へ。


「モール駆除ですね。受け付けました。気を付けて」

「はーい」


 先に裏の倉庫へ行って、解体を頼む獲物を置いてきた。解体専門のおじさんたちが苦笑していた。


「すげえ量だな」

「よろしくお願いします」

「頼んだぞ」

「ヨロシクー」

「ヨロシクー」

「ヨロシクー?」


 羅羅、シロちゃん、クロちゃん、ピーちゃんも頼んでくれた。ピーちゃんは首をコキャッと傾げていたけれど。肉は食べないもんな。でも付き合ってくれるのが嬉しい。


「しょうがねえなぁ」


 おじさんたちはピーちゃんにデレデレである。ピーちゃんにはみんなを和ませる何かがあるのかもしれない。でっかいけど、インコだしな。

 モール駆除の前に、ギルドの側にある武器屋へ向かった。


「邪魔をする」


 シュワイさんオススメの武器屋に足を踏み入れた。


「ん? なんだそのでけえのは?」


 白いひげもじゃのおじさんがいぶかしげな顔をした。


「うちの従魔です……」

「とうとう町にまで魔物が現れたのかと思ったぞ。で、何がほしいんだ?」

「肉切り包丁型の武器はあるか?」


 シュワイさんが聞いてくれた。


「誰が使うんだ?」

「彼だ」


 俺は手を上げた。


「なら剣鉈か腰鉈だな。ロングブレードでもいいだろうが、重くて持てねえだろう」


 腰鉈? と思った。腰鉈は刃が尖っているのではなく、長方形のような形をしている。確かにこれなら間違って自分を刺した、なんてことにはならなさそうだ。


「持ってみろ」

「いいんですか? じゃあ……」


 剣鉈と腰鉈、両方持ってみた。


「うーん……」


 なんとなく腰鉈の方がいいような気がする。剣鉈だと鞘があってもなんか自分が怪我しそうで怖い。


「腰鉈をお願いします」

「大きさはそれでいいのか?」

「はい」


 ってことで銀貨二枚で腰鉈を手に入れた。高いか安いかはわからないが、モールの駆除でもきっと活躍してくれるだろう。


「使ったらちゃんと研げよ。できなければ持ってこい。大銅貨1枚でやってやる」

「わかりました」


 武器屋さんて研ぐのでも稼いでるんだなと思った。それで店を続けてくれるならいいよな。


「では、行くか」

「はい、行きましょう」


 また羅羅の背に乗せられてしまう。さすがに店に入る時降りたのに。しかも前後をクロちゃんとシロちゃんにサンドされてるし。もう少し自分の足で多少走らせてくれてもいいと思うんだけど。でも俺の足に合わせたらいつまで経っても着かないんだろうな。(さめざめ)

 クロちゃんとシロちゃんはウキウキしてるし、羅羅の頭の上でピーちゃんも機嫌よさそうに身体を揺らしているからまあいいかと諦める。

 依頼の場所はシュワイさんがチェックしてくれた。町の外ってことはわかるんだけど、どの辺りかってのは土地勘がないからわからないんだよな。Sランク冒険者を案内役にしてごめんなさいと思った。



次の更新は22日(月)です。よろしくー

引き続き超多忙中ですー

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