83.お肉をいっぱい食べるニワトリスたちと武器を考える俺

 税金についてはシュワイさんに教えてもらった。

 チャムさんの家に帰ってからのことである。

 税金の徴収は毎年六月に行われ、冒険者についてはその時のランクによって税金の額が変わるのだそうだ。


「……稼いだ額に税金がかかるんじゃないんですか?」

「? オトカはおかしなことを言うな。その者が純粋に稼いだ額などわかるはずがないだろう?」


 ……魔法はあるくせにそういうことはわからないのかと考えてしまう。でも、誰がいくら稼いだかわかるような魔法があったらとんでもないよな。


「ははは……そうですね。でもギルドでは依頼とか換金とかしてるから、そこから稼いだ額がわかるのかなって勝手に思ってました」

「……オトカは変わっているな」

「そんなこと、ないですよ?」


 てへっと笑ってごまかしてみる。……全然ごまかせている気はしないけど。

 つーかさ、シュワイさんてまだ十代なんだよね? 俺からしたら全然そんな風に見えないけど。背もすごく高いってのもあるんだけど、身体もけっこう鍛えられてるし何よりも言動が落ち着いている。

 あ、でもそうでもないか。けっこう強引なとこあるしな。

 みんな絶対あの美貌にごまかされてると思う。


「オトカー」


 側にいたクロちゃんがくっついてきたので、自分を落ち着かせる為にもふもふしてみた。はー、クロちゃんかわいい。超かわいい。



 今日もシュワイさんが夕飯を作ってくれた。

 俺は今日もらってきたポイズンボアの肉を切り分けて従魔たちに出した。ポイズン系の肉は、普通の人が触れると身体が痺れたりと毒状態になってしまう。肉そのものに毒があるとか意味わかんないよな。けっこううまいけど。

 俺もポイズンボアの肉は食べたいから少し取っといてある。今夜はシュワイさんがホワイトボアの肉を焼いてくれたからそっちを食べるけど。


「んんんん~~~っ! この柔らかさっ! 今度はなんの肉ですかっ!?」


 チャムさんが頬を押さえて至福の表情をする。


「今日はホワイトボアの肉だ」


 シュワイさんが冷静に答えた。


「というとアレですね? 北の山で狩ってきた魔物ですか! 魔物の肉は本当にたまりませんっ!」


 チャムさんが大興奮でうるさい。あ、従魔たちにも当然分けたよ。主に狩ってくれたのはうちの子たちだし。ピーちゃんには森で採ってきた毒キノコと毒草をあげた。それを見てピーちゃんは激しく踊っていた。足をちたちたさせるだけじゃなくて羽もバッサバッサしてたな。羽が飛ぶ飛ぶ。うん、まぁピーちゃんはなんでも踊るようにできているらしい。かわいいからいっか。

 チャムさんは上品にホワイトボアのステーキを食べ終えると、やっと落ち着いたみたいだった。魔物の肉がなくなると普通に会話ができる。って、なんか魔物の肉がやヴぁい物みたいで笑ってしまう。

 表からの、「オカワリー!」の声にも対応して戻ってきたら、チャムさんに手招きされた。


「オトカ君はDランクに上がりたいですか?」

「えっと……」


 俺は頬を掻いた。


「Dランクになりたいはなりたいですけど、まぁ無理してなるものでもないとは思っています」

「そうですか。それならば安心しました」

「?」


 何で安心したんだろう。


「シュワイは、オトカ君がDランクになるだけの実力を持っていると思いますか?」


 ああ、そういう……。

 俺としてはEでもDでもかまわないと言えばかまわない。Dランクの特典は気になるけどね。


「……防具については悪くないと思うが、Dランクになると考えると武器をもう少し考えた方がいいだろう」

「あー……」


 確かに俺、武器はろくなの持ってないもんな。石投げつけるか、解体用の包丁でモールも倒してるぐらいだし。あ、また研がないとなー。


「でも武器って使ったことないんですよねー……」

「オトカが何を使いたいかによるな」

「うーん、肉切り包丁みたいな武器がいいんですけど」


 笑われるかな? と思ったけど、二人は真面目に考え込んでしまった。


「うーん、肉切り包丁型だとロングブレードとかですかね。オトカ君が持てるなら武器屋で探してみてもいいかもしれません」

「そうだな。明日は武器屋へ見に行こうか」

「そ、そうですね……」


 あれ? これって俺がDランクになる流れになってる? でもジャイアントモールなんてそう簡単に狩れるもんじゃないんだけどな。


「オトカー」


 庭から呼ばれたので従魔たちのところへ。食べ終えたらしくみな満足そうな顔をしていた。


「食べ終わったんだね。じゃあ片付けちゃうから」


 皿を運ぶ前に従魔たちに浄化魔法をかけてキレイにした。当然ながら庭にも浄化魔法をかけて飛び散った血などが残らないようにする。

 そして家の中に戻る時みんな付いてきた。勝手口への扉を閉めて、洗い物を始める。


「まぁでも、ジャイアントモールを狩れってのはわかりますが、ギルドで回収したいなんて不思議ですね」

「おそらくギルドの者か、誰かが食べてみたいのだろう。あとはオトカ個人にそれだけの力量があるかどうか懐疑的な者がいるのかもしれないな」

「それはあるかもしれませんね」


 チャムさんとシュワイさんはそんな話をしていた。

 俺の功績の九割九分は従魔たちのおかげだからそれはしかたないと思う。

 明日はギルドに肉の解体を頼んでから武器屋へ向かうことに決まったのだった。



次の更新は4/18(木)です。よろしくー

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