82.ニワトリスたちの肉の好みがわかりました

 冒険者ギルドで依頼完了の札を二枚出して報酬をもらった。

 受付のおじさんがギルド長を呼んだから待っていてくれとシュワイさんに言う。シュワイさんは途端に不機嫌そうな顔になった。

 美形の不機嫌顔って破壊力すげえなとか思った。

 北の山の件だったら呼ばれてもしょうがないか。


「オカイイさん、オトカさん、上がってくださいとのことです」


 職員が階段を降りてきて伝えた。


「……面倒だな」

「早く終わらせましょう」


 シュワイさんと、羅羅ルオルオに乗ったままの俺は二階のドルギさんの部屋に通された。副ギルド長のルマンドさんもいる。


「おう、ボウズも来たか」

「はい」


 ドルギさんが楽しそうに笑う。


「明日領主と面会する。その時にホワイトムースを持っていくことになった」

「そうか」


 シュワイさんがそっけなく相槌を打つ。


「でだな……領主がオカイイとオトカに会いてえって……」

「断る」

「嫌です」


 ドルギさんが言いにくそうに話し始めたが、シュワイさんと俺は即答した。領主に会うなんてとんでもないことだった。


「……だよなー。町の有事でもなきゃ、かり出されることはねえから安心してくれ。明日は俺が持ってく。それから……」

「私から伝えよう」


 ルマンドさんが引き取った。


「オトカは最近モール狩りを積極的にしてくれているな」

「ええ、まぁ……」


 モールを放置するのは農家にとって死活問題だし。モールの駆除は俺がやりたいからやっているだけだ。


「それで、そろそろDランクにという話があるんだが」

「えええええ」


 俺自身には大した能力はないんだが?


「一応条件があってな」

「はぁ」

「ジャイアントモールを一頭狩ってほしい」

「え?」


 今年ジャイアントモールは一頭だけ捕まえたけど、その後はまだ捕まえていない。それぐらいイレギュラーな存在だったりする。


「んな、狙って狩れるものじゃないですよ?」

「生死は問わないが、一頭を狩ってもらい、それをギルドで回収させてほしいのだ」

「ギルドで回収ですか……」


 俺はソファーのすぐ横にいるクロちゃんを見た。あ、また無意識でなでなでしてしまっている。(ドルギさんの部屋に入ってからは羅羅から降りてソファーに腰かけているのだ)羅羅とシロちゃんはソファーの後ろに、ピーちゃんは羅羅の頭の上にいる。


「ジャイアントモールの肉はうちの従魔たちも食べるんですよね……でもものすごくうまいってものでもないから……」


 ジャイアントモールの肉はおいしいと言われればおいしいが、グレートボアには劣ると俺は思っている。味覚については好みかなって思うけど、その希少性のワリにおいしくないという評価だ。


「えっ?」

「え?」


 ドルギさんとルマンドさんが意外そうな声を発した。


「……確かに、私もターキーの肉の方が好みだな」


 シュワイさんが呟く。やっぱ人の好みってあるよな。


「ボウズはどの肉がジャイアントモールよりうまいと思う?」

「僕はグレートボアの方が好きですね。普通のボアの肉よりはジャイアントモールの方がうまいですけど、そこまでってかんじではないですし」

「そうかそうか」

「オトカの従魔はどうなんだ?」


 ルマンドさんに聞かれて、そういえばうちの従魔たちの好みはどうなんだろうと思った。

 で、「ジャイアントモールと比べてどの魔物の肉が好みか」ということを聞いてみた。


「我はボイズンオオカミじゃな」

「ボアー」

「ボアー」

「オニクー、ヤダー」


 羅羅、シロちゃん、クロちゃん、ピーちゃんの順である。ピーちゃんに聞いた俺が悪かった。ピーちゃんは食べられないことはないけど、肉はそもそも好みじゃないんだよね。


「ボアの肉に味が劣るのか?」

「……好みだとは思いたいですね」

「ええ、まぁ……好みだと思いますよ」


 ドルギさんとルマンドさんが思案気な顔をした。食の好みなんて人それぞれだと思うんだよな。魔物の肉ってだけでうまいしさ。


「まぁいい。とにかくジャイアントモールを一頭ギルドに卸してくれりゃあDランクに上がるっつー話だ」

「……この町の畑に出るかどうかもわからないんですけど……それって他の町に移動しても有効ですか?」

「ああ、ギルド間の情報は共有されるからな。この町で捕まえられなくても別の場所で捕まえりゃあDランクに上がるぞ」

「それならよかったです」


 あまりランク上げにこだわってはいないんだが、ランクが上がると依頼の幅も増えるし、ギルドで受けられる特典みたいなものもあるそうだ。一か月に二回、飲み物無料とか。ポイントカードかよ、とか思ったのはないしょだ。

 でも一か月に二回飲み物無料ってなんか嬉しいかも。酒は飲めないけど(歳の関係で)、炭酸水とかあったよな。

 北の山で狩ってきた魔物の解体が済んでいるというので、ドルギさんたちと共に裏の倉庫へ向かった。

 ……またとんでもない額を受け取ることになってしまった。


「こ、こここんなにもらって手数料とか税金とかは……」

「ボウズは税金なんて言葉知ってんのか?」

「手数料は込みだが、税金のことを知っているなんて……」


 ドルギさんとルマンドさんにとても不思議そうな顔をされてしまった。


「う、うちの村にだって徴税官は来ましたよぅ……」


 ま、子どもが関わる人じゃないから普通は知らないだろうけどな。

 ごまかす為にクロちゃんをもふもふする。うん、このもふもふサイコー。


「……オトカはやはりあまり子どもらしくないな」

「そんな!」


 シュワイさんにまで言われてしまった。そりゃあ中身は元43歳のおっさんですけどね!

 肉はホワイトボアの物を抜かして全部回収させてもらった。もちろんポイズンボアの肉ももらっている。


「すみません、あのぅ……」

「……まだ解体するものがあるって話だろ? 明日持ってこい」

「はい、ありがとうございます……」


 解体専門のおじさんたちはしょうがねえなとため息をついた。

 で、ところで税金とかってどーなるわけ?(気になってしょうがない)



次の更新は、15日(月)です。超多忙の為、誤字脱字などの修正は次の更新時にします。よろしくー

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