81.機嫌が悪いニワトリスたちと依頼をこなす俺
先ほどの農家のおじさんに、まだクロちゃんとシロちゃんがぷりぷり怒っていたのでぎうぎう抱きしめて宥める。
ほらほら短気は損気だよ~。かわいいなぁもう。
ギルドに戻って依頼完了の札を出した。
「30匹ですか……相変わらずすごいですね」
ギルドの受付のおじさんが感心したように呟いた。大銅貨六枚をもらって次の依頼へ。
あと二件についても同じ方向にある農家さんからの依頼だったけど、今回のはもしかしたら後から難癖を付けられる可能性があるからと先に手続きをしたのだ。その方がいいとシュワイさんが教えてくれたので。
ギルドに依頼達成の報告をした後は、よっぽどのことがない限り冒険者が関わることはないらしい。あの農家のおっさんがギルドにクレームを入れるとか、もしくは依頼料を払わないとごねたとしてもそこらへんの処理はギルドでやってくれるのだそうだ。逆に依頼達成報告をする前にクレームなどを入れられてしまうと、冒険者も関わらないといけなかったりすることもあるとか。そんなのやだ。
シュワイさんさまさまである。
冒険者のランクはSだけど、女性が苦手? なんだよな。
俺といたってメリットなんて全然ないと思うんだけど……って羅羅がいるか。羅羅の毛はシュワイさんの青い長髪と被るから、それで親近感を覚えているのかもしれない。
そんなことを考えている間に町の外へ向かう門に着いた。
「町の外での依頼です」
「お、おお、気を付けていってこいよー」
羅羅に乗ったまま冒険者ギルドのギルドカードを西側の門番の青年に見せた。ギルドカードがあると町の門の出入りが自由なのだ。(門が開いている時間に限る)そうでないと町の住人でもない限り町の出入りにいちいち金がかかる。
ギルドカードのおかげでそのお金がかからなくて済むんだから、ありがたいことだと思う。
門番の青年は少し腰が引けていたが、防衛隊で俺たちの話は回っているらしく、すんなり通してくれた。
「ここだな」
門の外に出てすぐに畑が広がっている。
残りの二件の依頼は場所が隣接しているから比較的楽だ。
羅羅が普通の速度で歩いていくと、
「おー、この間はありがとなー」
「また依頼かー?」
など畑の手入れをしていた農家さんに声をかけられた。ちょっと嬉しい。
「はーい、今日も依頼でーす」
羅羅の上から手を振って応えた。その横を歩いているシュワイさんは口元に笑みを浮かべていた。
少し歩いたところの広い畑の脇に小屋があった。ここの畑は町に住んでいる人が手入れしているので、畑に直接来ても人がいない場合もある。
「畑にはいないねー」
依頼のあった畑には、ところどころ土が盛り上がっている場所があった。罠なども設置しているが追い付かないみたいだった。やっぱ今年はモールの数が多そうだ。
「あれー? ブルータイガーに乗った少年て、うちらの依頼かー?」
隣の畑で作業をしていたおじさんが声をかけてくれた。
「おそらくそうだ」
場所を確認して、シュワイさんが返事をする。
おじさんから話を聞くと、親戚同士で隣接している畑らしく一応別々に依頼を出したのだそうだ。
「ちょっと呼んでくるわ」
「? すぐ近くにいるんですか?」
「いや、この時間は家だろ」
「ならば私が声をかけてこよう」
シュワイさんが家の住所を聞いて駆けていってくれた。なんか悪いことしたな。
気を取り直してモール駆除である。おじさんの畑の方から先に作業することにした。
「えっと、生きてる苗があったら先に取っておいた方がいいですよね?」
「そうだな。鉢を用意するからちょっと待ってな。いやー、助かるよー」
ってことで鑑定魔法を畑全体にうすーくかけて生きている苗を見つけ、それらをまず回収した。それが終わったら本格的にモールの駆除である。クロちゃんとシロちゃんは今にも飛び出していきそうだった。先ほどの農家の態度がすこぶる悪かったので、まだいらいらしているみたいだ。
駆除したモールは置いていくとして、一匹につき銅貨4枚と確認してから畑へ飛び込んだ。
「うわお」
羅羅、クロちゃん、シロちゃんの動きはすさまじかった。俺が一匹狩る間に五匹も狩ってしまう。モールセンサーみたいなものがついてるのかと思うような働きっぷりだった。
おかげですぐに終わった。泥だらけになっている従魔たちに浄化魔法をかける。
モールは三十匹ぐらいいた。先ほどの畑よりも規模が三倍ぐらいあるからしょうがないとはいえ、とんでもない数だ。
「おー、すげえな。ありがとよー」
農家のおじさんがにこにこしていると、シュワイさんが隣の畑の持ち主を背負って駆けてきた。
うん、確かにシュワイさんが連れてくる方が早いもんな。
「目、目が回る……」
「すみません、今日来てしまったもので……」
「ああ、いや、助かるよ……」
ってことで隣の畑のモール駆除もとっとと終えてしまった。一番時間がかかったのは生きている苗を移す作業である。
途中で従魔たちに餌をやったりして、終わったのは夕方前だった。
ふう、いい汗かいた。
ちなみにピーちゃんは、シュワイさんが戻ってくる前までは小屋の上に留まって機嫌よさそうに踊っていたりした。応援してくれるのが嬉しい。
シュワイさんが戻ってきてからは、シュワイさんの腕に乗って踊ってくれた。かわいい。
依頼完了の札も無事もらえてほっとした。
「林の方の奴がモールで困ってるみたいだ」
「依頼があれば伺うとお伝えしてください」
「ありがとな、助かったよ」
いっぱい感謝されて、またみんなでギルドへ戻ったのだった。
引き続き超多忙でございます。
次の更新は、4/11(木)です。よろしくー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます