旅の道連れが増えるかもしれない
79.離れないニワトリスたちと、道連れがいるのはいいなと思う俺
「えっ? 一緒に行くんですか?」
俺がこの町を出る時、シュワイさんも付いてくると聞いて驚いた。
確かシュワイさんて引きこもりじゃなかったっけ? 俺と会ってからはその青い長髪も隠さなくなったけど。女性が苦手ってところは変わってないみたいだけどな。リフさんが無意識で近寄ってもススス……と避けていたから。
「ああ、そのつもりだが
俺は居間のソファの側に寝そべっている羅羅に視線を向けた。チャムさんの家、北の山から帰ってきて夕飯の後である。
夕飯はセマカさんとリフさんも食べてから帰っていった。彼らは明日王都へ戻るそうだ。
それはともかく。
「羅羅?」
「ああ……そういえば、そんなことを言っていた、ような……?」
羅羅は俺から視線を逸らした。大方ブラッシングをされている最中に言われてよく聞いていなかったんだろう。
そこまではいい。
「それで? どう返事したの?」
「うん? かまわぬのではないかと……おそらくは……」
「羅羅?」
「主よ! すまなかった!」
羅羅は慌てて頭を前足で隠すような仕草をした。そういう恰好をするとでっかい猫みたいだなと思う。全体的に青いけど。
「もー、勝手なことしちゃだめだよ。そういうことはちゃんと僕に伝えてね」
嘆息してくっついているクロちゃんをもふもふする。この町に来てからは甘えっぷりが激しいのでかわいくてしかたない。はー、癒される。
「あっ」
シロちゃんがのののののと移動したかと思うと、羅羅を何度もつついた。教育的指導みたいだ。
「シロちゃん、別につつかなくてもいいよ……」
案の定羅羅は頭を両前足で抱えた姿のまま固まってしまった。
「オトカー!」
「次は気を付けてねって話だからいいんだよ。シロちゃん、ありがとな」
別に麻痺させるほどのことでもないと思ったので、立ち上がってすぐに羅羅に触れた。
「……主よ、助かった」
「報連相をしっかりしてくれればいいよ」
「ほうれんそう、とはなんじゃ?」
「あ……」
羅羅に聞かれて口を押さえる。いかんいかん。
「そういうことはちゃんと報告してくれればいいってこと」
「あいわかった」
危ない危ない。また子どもらしくないと言われるところだった。(すでに手遅れかもしれない)
ピーちゃんは我関せずで羅羅の背の上で毛づくろいしている。マイペースでいいよな。
そんなことよりシュワイさんが俺に同行して町を出て行くって件だ。
「僕、何も予定とか決めてないんで適当にどっか行きますし、この町に戻ってくる保証もありませんよ?」
シュワイさんは頷いた。
「私も別にこの町に未練はない。今まで引きこもっていた時間は、それはそれで有意義だった。これからは見聞を広めたい」
「はぁ……」
「だが私一人では不安だ。是非オトカたちに同行させてもらいたいが……だめだろうか?」
「うっ……」
そんなイイ顔でじっと見つめないでほしい。俺は男には全く興味はないが、綺麗とかかわいいものは好きなのだ。なんかそういうところがバレているようで癪だがしかたない。
まぁ、俺としてもいいかげん同行者がいる方がいいような気はするんだ。羅羅はそれなりに頼りになるけど、魔物だから人の気持ちとかはわからなかったりするし。これから先新しい町や村へ行った時、ニシ村とかこの町みたいに比較的すんなり受け入れられることはないかもしれない。
「……僕としてはシュワイさんが同行してくれるのは助かりますけど、お金とかは払えませんよ?」
そう言うとシュワイさんは笑った。
「はははっ! オトカは面白いことを言うな。私が勝手に付いていくのにオトカから金を取るはずがないだろう」
「あー……」
それもそうなんだけど、絶対シュワイさんが付いてきてくれた方が助かると思う。チャムさんははーっとため息を吐いた。
「私も……もっと若かったらオトカ君に付いていきたかったです……」
「ははは……」
魔物の肉の為に付いてくるってのもどうかと思う。でもそれを言ったらシュワイさんは羅羅目当てかもしれないな。それはそれでいい。羅羅はシュワイさんのブラッシングにメロメロ(死語)だろうし。
「チャムには私の家の管理を頼みたい。めぼしいものはマジックバッグに入れてあるが、家具などはそのままなのでな」
「……私には家の整理整頓とかは無理ですよ?」
「そんなことはわかっている。家の鍵ぐらいだ。あとは週一の換気だな」
チャムさんは自分のことがよくわかっているみたいだ。
「保障はできません」
「面倒なら売ってしまってもかまわん」
それを聞いて慌てた。
「……三年ぐらい帰ってこなければ売ってしまいましょう」
「さ、三年?」
三年後なんてとても想像もできない。そこで話は終わったのだった。
翌日はいつも通りギルドへ向かった。
今日はチャムさんも休みらしく一緒に同行した。
セマカさんとリフさんはすでに町を発ったらしい。王都への道程はそれなりに遠そうだ。途中森を突っ切って行くようで、そこは走っていくらしい。身体を多少鍛えたことで走るのも楽になるだろうと喜んでいた。やっぱ鍛えないとだめだよなと思った。
ギルドの裏の倉庫へ向えば、まだ解体は終わっていないという。
「えーと、他にも従魔たちが狩ったのがあるんですが……」
と解体専門のおじさんたちに聞いたら明日以降にしろと怒られた。やっぱり狩りもほどほどにしてほしいとしみじみ思ったのだった。
次の更新は4/4(木)です。よろしくー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます