77.獲物をすぐに食べたいニワトリスたちと他人様のラブロマンスにによによする俺

 中身がおじさんのせいか、若いもんはいいなぁ~と思う。

 実際の俺は十歳なんだが。

 リフさんの白い肌が一気に赤くなった。おお、照れてるのがわかりやすい。また若いもんはいいなぁ~と。


「いてっ! なんで? なんでー? 痛いってばー!」


 何故かシロちゃんクロちゃんにつんつんつつかれた。俺はリフさんに懸想してるわけじゃないよー。誤解だってばー。

 そうして俺がつつかれている間に、二人はなんかいいかんじになったみたいだ。ちくしょう、見たかった。

 セマカさんも美男ってほどじゃないけど見た目イイ男だし、リフさんは美女だし。その二人のラブロマンスを至近距離で。うわ、めっちゃ見てえ。(映画を見るかんじ


「……戻るか」


 シュワイさんの言葉にみな頷いた。

 リフさんは念の為引き続き羅羅ルオルオの上に乗ってもらうことに。

 羅羅の上、頭の上にピーちゃん、一番前はクロちゃん、俺、シロちゃん、リフさんの順でどうにか座れた。


「い、いいの? 抱き着いても……」


 リフさんはシロちゃんに抱き着くことにちょっとキョドっていたけど、


「イイヨー」


 と言われてシロちゃんを抱きしめた。


「もふもふ……き、気持ちいい……」


 ええ、うちのニワトリスたちは最高に気持ちいいんです。その状態でキタキタ町に戻ったから、さすがに夜になってしまった。


「報告は明日だな」

「ああ」


 町に着いたらリフさんは羅羅の上から降りた。彼女の髪の色は黒のままだ。

 セマカさんがその手を取り、


「また明日、ギルドで」


 と言って俺たちは別れた。セマカさんとリフさんの後ろ姿を見て、本当に映画みたいだなって思った。


「帰るぞ」


 シュワイさんがそう言った途端、羅羅が走り出す。


「わわわっ!?」


 慌ててクロちゃんにぎゅっと抱き着く。もうセマカさんたちがいないからか、そのスピードはけっこう速かった。まぁ、俺の具合が悪くなるほどではなかったけど。

 チャムさんの家に着いてほっとした。


「解体はせぬのか?」

「オニクー」


 でも羅羅とシロちゃんは不満そうだった。


「もう暗いからまた明日ね」

「なんだと!?」

「エー」


 シュワイさんが笑顔でブラッシング用のブラシを出す。


「ま、まぁよいわ……明日には解体せよ」


 羅羅はすっかりシュワイさんのブラッシングに参ってしまっているらしい。


「シロちゃん、暗い中で解体したらギルドのおじさんたちが怪我をするかもしれない。おじさんたちが怪我したらもう解体してもらえなくなっちゃうよ?」

「ヤダー」

「うんうん、やだよね」


 シロちゃんがいやいやをするように身体を振る。尾が危ないけどその仕草がかわいすぎてツボった。


「……シロちゃんがかわいすぎる……」

「オトカー……」


 シロちゃんがそっと寄り添ってくれた。納得してくれたらしい。シロちゃんをぎゅっと抱きしめた。うん、うちの子たちはいい子だ。


「オトカー」


 後ろからぎゅむっとクロちゃんがくっついてくれた。ああもうなんですかこのもふもふ天国は……。


「ゴハンー?」


 ピーちゃんが羅羅の頭の上でコキャッと首を傾げた。ああそうだ。ごはんごはん……。

 ってことですでに解体してある肉を出し、またシュワイさんが夕飯を作ってくれた。


「……毎日魔物の肉が食べられるなんて、幸せですね……」


 チャムさんがジーンとしていた。


「普通は家畜の肉を食べるんでしたっけ?」

「ええ、そうですよ」


 うちの村ではそもそも育てることすら難しかったからなー。せいぜいガーコとゴートぐらいしかいなかった。まず家畜に食べさせるものがないんだから。ゴートも草が生えなくなる冬前に潰してってかんじだったし

 だから猟師さんが狩ってくる獲物が重要だったな。たまーにターキーの肉を一欠けらずつもらったりしてたっけ。ニワトリスたちが来る前は。


「オトカ君が食べているのは基本魔物の肉ですか」

「そうですね、森の側に住んでいたので」


 従魔たちにも肉を出し、ピーちゃんには野菜とか毒草を出す。毒草や毒キノコはニワトリスたちも食べるから、途中で採取できたら積極的に採取しているのだ。俺も食うし。


「一日で八頭も狩ってくるなんて前代未聞ですよ……」


 今日の狩りの話を聞いて、チャムさんは苦笑した。


「オトカの従魔たちもいたからな」


 シュワイさんはご機嫌だ。夕飯の後は羅羅のブラッシングをすることになっているみたいだ。俺もクロちゃんとシロちゃんをもふもふさせてもらおう。ピーちゃんも許してくれたら触らせてもらいたい。


「……これでセマカさんたちの依頼は終わりなんですよね?」

「ああ、おそらくな」

「そっかー」


 あの二人と離れるのは寂しいけどしょうがないな。


「元からそういう話だった」

「そうですよね。でもちょっと寂しいかも」


 ここ何日か、騒がしかったけど俺としては楽しかった。一緒にモールの駆除もできたし。まだ依頼があるようならモールの駆除はしにいかないとな。大事な作物が育たなくなってしまう。


「そうか」


 シュワイさんは寂しくないのかな?

 って俺が気にすることでもないか。

 北の山も行ったし、俺も少し落ち着いたらそろそろ移動も考えないとな。キタキタ町の西の門を出ていけばいいのか。隣の町とか村にはどれぐらいで着くのか明日以降聞いてみようと思った。



次の更新は、28日(木)です。よろしくー

中身43歳なんですよ、ええ。

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