76.獲物をつつきまくるニワトリスたちと、付いていってるだけな俺

 俺がその腕に触れた途端、リフさんの金髪が真っ黒に変わった。

 リフさんはやっぱり自分に魔法をかけていたらしい。

 リフさんを羅羅ルオルオの背に乗せ、麓へ降りる。その間も魔物の襲撃は二回あった。

 グオオオオッッ!!


「ホワイトライオンかよっ!?」

「頭を狙え!」


 シュワイさんとセマカさん、そしてシロちゃんが攻撃する。シロちゃんは細切れに飛んではホワイトライオンをつついたりその尾を叩きつける。セマカさんは頭を狙って魔法を展開、シュワイさんは足に向かって氷魔法を使っていたみたいだった。どれが決め手になったのかはわからなかったが、そう時間もかからずにホワイトライオンが倒れる。

 ホワイトサーベルタイガーの次はホワイトライオンて、どうなってるんだろ。

 この山怖い。冷や汗が止まらない。

 シロちゃんがつついただけだと麻痺しただけで死なないから、アイテムボックスには収納できなかった。生きてると無理らしい。


「セマカ、氷魔法は使えるか」

「ああ、まぁ……」

「なら心臓に使え。火魔法は毛皮が取れなくなるからだめだ」

「わかった。あんまり得意じゃねえんだけどなー」


 そう言いながらもセマカさんは手に氷の槍のようなものを作り、ホワイトライオンの胸に勢いよく突き刺した。


「すごい……」


 俺もそういう属性魔法を使ってみたかったよ。

 ホワイトライオンが絶命すると、シロちゃんが当たり前のようにアイテムボックスにしまった。顔が得意げである。物によってはポイズンボアと交換だから着服はしないでほしい。

 リフさんは麓に降りる途中で目覚めた。


「ん……?」

「あ、リフさん起きました? 羅羅に乗ってるので動かないでくださいね」


 一応大きめの布でリフさんを羅羅に縛り付けているのだが、下手に動かれると解けてしまう危険性もある。大きめの布についてはシュワイさんが持参していた。誰かが倒れた時くるんだりするのにも役に立つからと。

 マジックバッグを持っているから、必要そうな物を全て準備しているみたいだ。元の世界でもこういうものがあったらよかっただろうなと思ってしまう。

 俺はニワトリスの加護でアイテムボックスを持っているけど、その時点でチートだ。


「え……」

「そろそろ麓に着きますから……」


 と言った時、また羅羅が立ち止まった。


「……三頭だ」


 シュワイさん、セマカさん、シロちゃんとクロちゃんがババッと前に出る。姿を現したのはホワイトジャイアントボアと、それに従うようにしているホワイトボアだった。


「オニクー!」

「タベルー!」


 シロちゃんとクロちゃんは嬉しそうに叫びながら突撃していった。


「えええ……」


 まぁ、ホワイトジャイアントボアはでかいから食べ応えはあるだろうな……。でもそうでなくてもアイテムボックスは解体したのとそうでない魔物でいっぱいだよね。

 ホント、うちのニワトリスたちが本気を出すと世界中の魔物を狩りつくしそうで怖い。

 依頼でもなければ食べる量だけ倒してもらいたいと切実に思った。

 そんなかんじで麓に着くまでに全部で八頭も倒してしまった。先に倒した三頭と、降りる時の五頭である。多い。

 ……倒しすぎじゃね?

 まぁこれだけ倒せば麓に降りてくることもないだろう。……と思いたい。

 でも降りてくる個体って降りてきたいから勝手に降りてくるのか? それとも北の山で魔物が飽和状態になったからとか? 難しいなと思った。

 とりあえず麓に降り、しばらく森の中を進んだ。


「羅羅、この辺りでいいだろう」

「……あいわかった」


 シュワイさんに言われて羅羅が足を止めた。羅羅も言われるがままではなく、周囲を警戒し大丈夫だと判断したみたいだ。俺も羅羅の上でクロちゃんにくっついたまま神経を研ぎ澄ませ、危険な物が近くにいないことを確認して息を吐いた。


「リフ、大丈夫か?」


 セマカさんが心配そうに声をかける。


「……大丈夫よ。迷惑をかけたわね」


 布を外し、セマカさんがリフさんを抱えて羅羅から下ろした。


「ああ……魔法をかけなおさないと。見苦しいものを見せたわ」


 リフさんは自分の髪の色を見ると、そんなことを言った。


「……え? キレイな色じゃないですか」


 クロちゃんよりも真っ黒な、カラスの濡れ羽色というのか、とても綺麗なストレートの黒い長髪である。


「ああ……ごめんなさいね。うちの家では忌避する色なのよ」

「そんな……」


 そんなに綺麗なのに何を忌避するというのだろう。家庭によっていろいろ事情はあるんだろうけど、それで子どもが自分の色を変えることを望むなんて俺はおかしいと思う。


「家では、ですよね。家を出ていたら関係ないんじゃないですか?」


 こんなこと、俺が言うことではないだろうけど無理に変装魔法を使い続けるのもどうかと思った。リフさんに金髪が似合わないわけではなかったけど、黒髪のリフさんの方が綺麗だし。(ただの俺の好みです)なんかシロちゃんとクロちゃんにじーっと見られている気がするけど、別に俺はリフさんを口説いてるわけじゃないからね。口説いたって口説かれてくれないと思うし。


「……私も、リフの髪は美しいと思っている」


 セマカさんがぼそっと呟いた。

 これはもしやラブの予感? と思ってしまった。



次の更新は25日(月)です。よろしくー

リフさんの口調が?

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