67.狩りをしまくりたいニワトリスたちとごはんを作る俺

 ホワイトムースはさすがに解体できないので、ギルドですでに解体してもらった肉を出す。

 森の中は食べられる草やキノコでいっぱいだ。羅羅は肉しか食べないけど、ニワトリスたちとピーちゃんはそこらへんの草やキノコもおいしそうにつついていた。


「ピーちゃん、そのキノコおいしい?」

「オイシー!」

「ちょっと見せてねー」


 ピーちゃんが機嫌よさそうにつついているものを鑑定してみると毒キノコだった。そう、魔物や俺にとっては毒キノコの方がうまかったりする。


「ごはん用に摘んでおこうか」

「ハーイ」


 ニワトリスたちとピーちゃんにおいしそうな毒草や毒キノコを探してもらい、クロちゃんのアイテムボックスにしまってもらう。あー、みんないいな。毒キノコ普通に食べてて。俺も食いたいけどこの面子じゃなぁ……。

 虹色の毒キノコを採ろうとしたらシュワイさんに止められた。


「オトカ! それに触れてはいけない!」

「えっ?」

「それは触れただけで皮膚がただれる毒キノコだ」

「あ、ええ……」


 そんなに強力な毒キノコだったのか。つーかただれるっつーかかぶれるのかな?

 でもこのキノコうまいんだよ……。


「見た目はキレイだが……」


 うん、どうせ俺が状態異常無効化するのはシュワイさんも知っているはずだ。バラしちゃおう!(食欲には勝てなかった


「シュワイさん、僕が状態異常を無効化するのは知っていますよね?」

「ああ、そうだったな」


 シュワイさんはそう応えてから、当たり前のように毒キノコを採取した俺をまじまじと見た。


「僕には毒は効きませんので、なんともありませんし、これもおいしく食べられます」

「そんなの聞いたことねえぞ!?」

「あらぁ、特殊体質なのねぇ」


 セマカさんは信じられないようだったが、リフさんは目を一瞬見開いたもののそれなりに落ち着いていた。


「それは、すごいな。ならば、ポイズンオオカミの肉も普通に焼いて食べていたのか?」

「そういうことです」


 だからポイズンオオカミの肉を焼くと毒が消えることも気づけたのだ。


「食べられる者でないとそこまでの検証はしないだろうな。体質のことは聞いていたが、まさか毒があるものをそのまま食べられるとは……」

「あ、さすがに焼きますけどね? 焼いた方がおいしいですから」


 確かにキノコも俺はそのまま食べられるかもしれないが、やっぱり火を入れた方がうまいし、それにキノコ=(イコール)生では食っちゃいけないっていうのが沁みついてるんだよ。元の世界では、国によってはキノコを生のままサラダに使うなんてとこもあるらしいけど、確かエノキかなんかを生で食ってリステリア菌(食中毒菌の一種)に感染して妊婦が流産したなんてこともあったはずだ。俺は女子じゃないけど、こわっと思ったのでその記事のことを覚えている。

 あ、それ以前に毒キノコや毒草は食べちゃいけないけどな。(俺はいったい誰に向かって言っているんだ

 そんな話をしながら食べられる草やキノコ、そして薬草なども採取して適当に昼飯を作る。

 セマカさんとリフさんはお昼ご飯を持参していなかったらしく、周囲を警戒しているようなフリをしていた。確かに手持無沙汰だよな。

 俺が調理しているのはみんなが食べられるものだ。さすがにみんながいるところで毒のある物は調理できないので。

 一応フライパンも毒を含む物を専用に調理する為に別に買ってある。

 羅羅が土魔法で竈を作ってくれ、シュワイさんは火魔法で調理を手伝ってくれた。普通は火魔法もこんなにうまく調整できないらしい。セマカさんとリフさんが感心していた。


「スープですけど、できましたよー。セマカさん、リフさんもどうぞ?」

「いいのか?」

「いいのぉ? オトカ君、ありがとぉ~」


 肉は別で焼き、そこらへんで採った草とキノコでスープを作った。シュワイさんの方が作るのは絶対にうまいだろうけど、周囲を警戒していてくれたから俺が作ることにしたのだ。

 さすがにセマカさん、リフさんも木のコップは持っていた。リフさんが浄化魔法をかけたものにスープを注ぐ。


「……森でも温かいスープなんて飲めるんだな」

「オトカ君が特別なんじゃなぁい?」

「ああ、オトカが特別だ。鑑定魔法をうまく使っているというのもあるが、食べられる草やキノコを見分ける目も持っている。とても真似はできん」


 シュワイさんが淡々と褒めてくれたけど、どういう顔をしたらいいのかわからなかった。


「キノコー?」

「オトカー」

「チョーダイ」


 シロちゃん、クロちゃん、ピーちゃんが寄ってきたので、先ほど採取したものを適当にあげた。ごはんは食べたはずなんだけど、俺たちが食べてるからまた食べたくなってしまったみたいだ。ホント、うちの従魔たちはとてもかわいい。みんな一撫でずつさせてもらった。嬉しい。

 食べ終えて片付けをし、これからどうするか考える。

 このまま森で散策を続けてもいいが、また北の山の魔物が降りてきたら困るというのもある。

 でもうちの従魔たちは獲物を狩る気満々だった。


「狩りをするのはいいけど、ほどほどにな……」

「シロ殿、参りましょう」

「カルー!」

「オトカー」

「イクー!」

「えええええ」


 クロちゃんは俺に付いていてくれるらしいが、羅羅とシロちゃんだけでなくピーちゃんも狩りに同行することにしたみたいだ。


「羅羅、シロちゃん、私も付いていっていいだろうか?」

「我はかまわぬが……」

「オトカー!」


 シロちゃんは叫ぶように言った。


「セマカとリフを残していくよ」

「ワカッター」

「えええええ」


 シロちゃん的には俺を守る要員が必要らしい。それがクロちゃんだけだと心もとないのかな。

 はっとする。

 つーか、なんで俺守られてんの?


「シロちゃんっ!」


 声をかけたけど、その時にはもうシロちゃんは羅羅と共にツッタカターと駆けて行ってしまった。ピーちゃん、シュワイさんも一緒に。

「全くもう……」

 はーっとため息をついてしまった俺だった。



今週からの更新は週二回になります。次の更新は22日(木)です。よろしくー

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