50.町の中を連れまわされるニワトリスたちと買い物等をしまくる俺

 この町にいる間の滞在先はチャムさんが引き受けてくれると言ってはいたが、これでほぼ決まりだろう。

 防具屋を出る。


「肉はそれなりにありますからいいですけど……町にいる間にギルドで依頼も受けたいんですよね。でも僕は文字が読めないから、いちいちギルドの人に読んでもらうのもアレなんですよ。早く文字を覚えたいです」

「ならばそれも私がサポートしよう。そろそろ私も依頼を受けようと思っていたところだ」

「シュワイさんも冒険者なんですか?」

「シュワイはSランクの冒険者ですよ。ソロですけどね」


 チャムさんが教えてくれた。

 Sランクとか……神かよ。

 そのSランクに文字を教えてくれと頼むとか、普通に依頼したらいくらかかるんだそれ。(そもそもSランクにそんな依頼できないだろう)俺は横にいてくれる羅羅ルオルオをそっと撫でた。

 羅羅、ありがとう。


「……気が付いたらランクが上がっていただけだ。ギルドに行ってみるか?」

「今日は依頼を受けるのは止めておきます。解体を頼んでいるので夕方にまた来ます」

「そうか……」


 シュワイさんがまたなんかしゅんとしている。背の高い青い髪のイケメンは目立つなー。すんごく周りから視線を感じて痛いぐらいだ。


「今日は町の案内をしていただきたいので!」

「そうですね。他に行きたいところはありますか?」

「雑貨屋に行きたいです。ピーちゃんのお皿とかも買いたいので」

「ピーチャン、ウレシー!」


 ピーちゃんが羅羅の頭の上で嬉しそうに身体を揺らした。途端にクロちゃんとシロちゃんがぎうぎう俺にくっついてくる。


「クロちゃんとシロちゃんのも、何かあったら買おうね」

「カウー」

「オトカー」


 かわいいかわいいと二羽を撫でる。もふもふサイコーだ。


「主よ……」

「羅羅のもあれば買うよ~」


 そうだよね。みんなの分買わないとだよなー。そういえば家を出てきてから雨には遭ってないけど、さすがにそろそろ雨避けの外套などを買った方がいいだろう。そういうのって雑貨屋でいいのかな。


「チャムさん、雨避けの外套も雑貨屋に売ってますか?」

「あると思いますよ。一番いいのはポイズンバットの羽を加工したものなんですが、あまり出回ってないんですよねえ」

「ポイズンバット?」


 初めて聞いた。雑貨屋へ向かいながら話を聞く。

 また羅羅に乗せられてしまって居心地は悪いのだが諦めた。クロちゃんとシロちゃんも乗ってるし、ピーちゃんも羅羅の頭に乗ってるからもういいや。羅羅ってすんごい心配性だよなー。町の中なら危険なんてないだろうに。

 俺はまだ捕まっていないという二人の存在をすっかり忘れ去っていた。


「ポイズンバットは洞窟にいるんですけど、この町から一番近い洞窟は北の山の近くなんですよ」

「じゃあ売ってないかもしれないですね」


 チャムさんに案内されて雑貨屋へ向かうと、本当にありとあらゆるものが売っていた。


「う、わぁ……」


 羅羅に下ろしてもらう。店に入ってすぐ横で待っててもらうことにした。シロちゃんとピーちゃんも羅羅の上で待つことにしたらしい。店内ではクロちゃんが俺にくっつく。歩きにくいけどそろそろ慣れた。


「古着もありますねー」


 服もちょっと買いたい。何かあった時用に。

 何せ俺の服は着古しのがたった二枚しかないのだ。浄化魔法がなければとうに詰んでいる。洗わなくていいからそれほど生地も傷んでいないが、森の中を歩いてきたのですその方にほつれがあったり小さな穴が空いたりしてしまっているのだ。

 毛布もほしいな。後ろがすけて見えるようなうっすいのじゃなくてさ。

 うわーうわーと言いながら、クロちゃんにくっつかれたままいろいろ買った。雑貨屋の店員の顔がひきつっていたがそれはもうしょうがないだろう。


「すみません。従魔なんです~」


 と言って会計してもらい、入る物は自分のカバンに、それ以上はクロちゃんのアイテムボックスに一旦しまってもらった。

 残念だったのは、外套にあまりいいものがなかったことだ。品物はチャムさんとシュワイさんも確認してくれて、この品質だったら買わない方がいいと教えてくれた。店員さんが恨めしそうな顔をしていたがそれはもうしょうがないだろう。

 一応なんでも買い取りをしてくれるみたいだ。まだ売るほど物もないので買い取りをしてくれるということだけ頭に入れておく。

 雑貨屋を出てから思い出した。


「あのー、薬草はギルドでも買い取りしてくれるみたいなんですけど、毒草とかってどうなんですかね?」


 試しに聞いてみたら、シュワイさんが手を出した。


「どういう毒草なんだ? 見せてくれ」

「こういうやつですね」


 カバンから(正確にはアイテムボックス)持っている物で一番毒性の低い毒草を出した。


「……ふむ。では薬師ギルドへ行ってみよう」


 シュワイさんの提案で、今度は薬師ギルドへ向かった。薬師ギルドは冒険者ギルドの通りを東に向かった先にあった。あちらこちらへ行くことになったけど、羅羅のおかげで移動時間の短縮ができて助かった。

 薬師ギルドでは、


「状態がいいですね。他の薬草はお持ちですか?」


 と聞かれて、登録もしつつ(薬師ギルドに登録もしないと売れないらしい)例の止血の薬草も出してみた。


「あ、これ! もっとあります?」


 試しに葉っぱを十枚出したら身を乗り出されてしまった。


「買い取り額によりますけど……」


 確か冒険者ギルドでは銅貨三枚だったよな?


「銅貨六枚でいかがでしょうか?」

「これ十枚で、ですか?」

「はい。多めに売っていただけるなら十枚ごとに銅貨七枚で買い取ります!」

「あ、はい……」


 冒険者ギルドの二倍以上だなんて。

 けっこう使うと思って摘んでいたので、都合三十枚卸した。


「ありがとうございます!」


 礼を言われてしまい、目を白黒させた。場所によって買い取り額が違うものらしい。最初に出した毒草も薬になるらしく、茎から一本丸ごとで銅貨八枚になった。これから薬草とかは薬師ギルドに卸すことにしようと思った。

 そんなことをやっている間に夕方になったので、今度は冒険者ギルドだ。羅羅は完全に俺の足代わりになってしまっている。


「羅羅、ごめん。あっちこっちに連れてってもらうことになってしまって……」

「かまわぬ。待っているのは苦手だが、目新しくて面白いぞ」

「羅羅、ありがとう!」


 本当に羅羅は気のいい青虎だと思う。気のいい青虎ってなんだろう。自分で考えてなんかおかしいなと思った。


「シュワイさんも付き合っていただいてしまってすみません」

「気にするな。私がオトカと一緒にいたくているだけだ」

「ありがとうございます……」


 と礼を言ってから、うん? と思った。言い方はアレだが、たぶん羅羅と一緒にいたいんだろうな。シュワイさんはとても機嫌がよさそうだ。

 そしてまた冒険者ギルドへ顔を出したら、職員に「また来た!」と言いたそうな顔をされた。

 明日も来るからそろそろ慣れてほしい。




誰が見ても最強の布陣なので、オトカにピンチは訪れません。安心してお読みください。

BL展開もないったらないよっ!(ぉぃ

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